日々記 観劇別館

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『BEST MUSICAL〜THE BEST〜』CD試聴感想

昨日の赤坂での観劇後、少し銀座の山野楽器まで足を伸ばして、『BEST MUSICAL~THE BEST~』を買ってきました。

井上くんの3曲以外は過去に出た『BEST MUSICAL』のCDからの再録のようですが(井上くんのも別のCDからの再録かも知れません)、とにかく、収録されている歌い手の皆さん、それぞれに良い声のカラーをお持ちで、聴いていて胸が熱くなってきます。
中でも、一孝さんと禅さんの歌声がとてつもないです。広い音域と自在に色を変えられる素敵な声万歳!と思いながら聴いていました。
特に一孝さんの「サンセット・ブールバード」は、ちょうど昨日万里生くんのを聴いてきた所なのでじっくり聴きましたが、若者の先走り感たっぷりの万里生くんとはまた異なり、人生に軽く挫折気味の大人の歌に仕上がっていました。……と思ったら、訳詞は上演中の舞台とは全く別バージョンで、一孝さんと松谷彼哉さんという方との共作だったようです。

それから、井上くん。「僕こそ音楽」「トライ・トゥ・リメンバー」「明日への階段」の3曲を歌ってますが、いつもの硬く貫くような歌声でありながら、役が入っていない状態のためか、耳に柔らかく染みてきてくれました。特に『ルドルフ』の「明日への階段」が良いです。

浦井くん&たまきちゃんの「オール・アイ・アスク・オブ・ユー」。浦井くん、ちょっと社交に慣れていなさそうなラウルですが(^_^)、クリスティーヌ(と聴衆)の心をどんどん解きほぐしまくって攻めてくる、癒し系ラウルに仕上がっていました。たまきちゃんのクリスティーヌは上手いのですが、声色や声の出し方がやや独特なので、好き嫌いが分かれるかも知れません。

戸井さん&シルビアさんの「夜のボート」は、すみません、この2人がフランツ&シシィを演じている所があまりリアルに想像付きません(^_^;)。あくまで役とは離れた「ミュージカルナンバー」の1つとして誠実に曲と向き合って歌っている感じがしました。

先週手元に届いたウィーンミュージカルコンサートのDVDを観た時もしみじみ考えたのですが、ただミュージカルナンバーを歌うのと、役として舞台で演技しながら歌うのとではそれぞれに違う難しさがあると思っています。
余談ですが、『エリザベート』のフランツで出られている岡田さん。彼が昨夏(2011年8月)のミュージカルライブで「カフェ・ソング」を歌い出した瞬間、ぱっとステージの空気を19世紀のパリのカフェに一変させたのを観ている者としては、そういう空気を作り出す力を十分お持ちの方だとは思うのです。しかしそんな彼がフランツ役では「役と格闘している」のがステージ上から伝わってくるのを何度も目の当たりにして、「役に成る」というのは相当に大変なことなのだなあ、と考えずにはいられません。

CDに話を戻しますと、他にも、吉野さん、そうそう、こういう好青年の役もしっかり歌いこなすんだよね、とか、さとしさん、それ違う歌に聞こえる(笑)、とか、岡さんのザザがはまりすぎ、とか、すっかりじっくり楽しみました。

最後に蛇足ながら、こういうCDを聴くと、やっぱり日本のミュージカル界って、男性役者に比べると女性役者の層が薄いんかなあ、と思ってしまう自分なのです。
宝塚、四季、東宝ミュージカルアカデミーなど、育成機関はいくつかありますが、華と実力とを両方兼ね備えた女性役者というのはそんなに多くないと思います。男性役者は各年齢層で結構層が厚い印象があるのに、不思議です。
このことはあまり書くと個人や特定の団体攻撃に堕してしまいそうなので、この辺で止めておきます。