レイディ・ベス=小南満佑子 ロビン・ブレイク=手島章斗 メアリー・チューダー=丸山礼 フェリペ=松島勇之介 シモン・ルナール=高橋健介 スティーブン・ガーディナー=津田英佑 キャット・アシュリー=吉沢梨絵 アン・ブーリン=凪七瑠海 ロジャー・アスカム=山口祐一郎 リトル・ベス=横溝陽音 リトル・メアリー=馬場音羽
今季3回目の『レイディ・ベス』を観てまいりました。
今回はJR有楽町駅で下車して徒歩で日生劇場に向かったところ、晴海通りが東京マラソンのコースにつき交通規制されていたため横断できず、地下鉄出入口から一旦地下に階段で降りて移動しました。終演後の16時過ぎなら規制解除されているかも? と期待しましたが、規制は続いており、帰路も地下通路をぐるりと巡って駅に抜けました。どうも規制は18時頃まで続いていたようで、今日ばかりはJRを使わずに地下鉄で往復すべきだったと後悔しました。ただ、地下鉄もそれなりに混んでいたとは思われますが。
『レイディ・ベス』の話に戻しますと、この演目は題材が地味な上に、メインキャストの人選が若手や実力派中心で比較的地味。加えて東宝ミュージカルなので正価のチケ代は抜きん出てお高め。これらの三すくみのためか、はたまた東京マラソンと同日で宿が取りづらかったのかは分かりませんが、日生の1階席はそこそこ埋まっていたものの(但し満席ではない)、日曜の公演にも関わらず、GC席や2階席にはちらほらと空席が目立ちました。仕方ないとは思いますが、今回、初演・再演時よりも明らかにブラッシュアップされて良い舞台になっているので、迷っている方には、ぜひ等価以下譲渡サイトや得チケ等を探してでも観ていただきたい、と思っています。
前置きが長くなりました。本編の感想にまいります。
ベスは今回も小南さんでした。一時期喉が不調と聞いていたので心配でしたが、終始見事な歌を聴かせてくれました。やはり、「生まれながらのお姫様」の雰囲気が色濃くて良いですね。1幕の「秘めた想い」の魂の自由は誰にも奪わせぬ、と敢然と立ち向かい、2幕序盤の獄中で死の恐怖と向き合いつつ真実を悟る痛ましい姿、そして終盤の「傷ついた翼」の、引き裂かれそうな心と必死に戦って人生の重大な決断をする歌声が出色です。
今回はロビンとフェリペのキャストが初見でした。
手島ロビンは有澤ロビンよりも若干やんちゃで粗野な雰囲気で、これはこれで終始凛とした振る舞いが際立つ小南ベスと好対照で合っていたように思いました。序盤に登場するロビンたちの「自由気ままに生きる」という歌声は、物語のラストを知っていると、誰かの魂の自由は他の誰かの魂の自由と互いに尊重されてこそ成り立つのだ、という思いが新たになり、より深いものとして聞こえてきます。序盤のエピソードで手島ロビンががむしゃらに自由と正義を求める分、終盤の全てを心にしまい込み、ただ一つ手元に残ったイモーテル=永遠の愛を尊ぶ彼の心の変化と成長が、より強烈に伝わってきたように感じられました。
松島フェリペは、登場した瞬間からいきなり艶めかしい表情で色気満載で驚かされました。佇まいがどこかお若い頃の吉野圭吾さんを彷彿とさせるイメージです。
ちなみにフェリペとメアリーの婚礼の時、確か内海フェリペは極めて儀礼的ではあるものの、メアリーを言いなりにさせた後は一応微笑みかけていたような気がしますが、松島フェリペは露ほども笑いません。クールヘッドと言うよりブリザードヘッドだわこれは、と思いながら観ていました。
こちらを書きつつXのタイムラインを見ていて、そう言えば初演時は終盤の姉妹対面の後に、去りゆくフェリペとベスの対話場面があったと記憶が呼び起こされました。フェリペがあの色気で臨んで袖にされる所、観てみたかった気もします。
今回特に印象に残ったのは丸山メアリーです。メアリーはWキャストの有沙さんと丸山さんのお二人とも、懸命に孤独に耐えながら冷徹に振る舞っているのですが、特に丸山メアリーは「必死で虚勢を張って生来とは違う自分を演じようとしている」印象が強いように感じられます。そして終盤に、虚勢も虚飾もあらかた削ぎ落とされた生身の弱さを妹の前に全てさらけ出す姉。そんな姉から無茶ぶりされたら、大抵の妹は情にほだされて受け入れてしまうと思いますが、それでも徹頭徹尾妥協しないベスの強さは半端ないですね。
そして我らが祐一郎アスカム先生は、しつこいようですが今季はやはり、様々な心がせめぎ合っているように見えます。初演時から一貫して、
「星の運命も、学者としての知見も、ベス様こそが女王と言っている」
という構えではありましたが、今季はそれと同時に、
「ベス様に女王になってもらいたいが、なれないならそれでも良いから生きていて欲しい」
という、師弟愛と父性愛が入り混じったような心情が描かれており、より人間味が深いという印象を強く覚えています。「晴れやかな日」で瞳を潤ませて教え子を見つめる感無量な表情が実にたまらないのです。
ところでラストとカーテンコールで2回歌われる「晴れやかな日」で、2回ともアスカム先生の歌声の響きが識別できた! と思った瞬間があったのですが、気のせいでしょうか? たとえそれが贔屓の引き倒しだとしても、耳福として大事にしておきます。
最後に、カーテンコールの小南ベスのご挨拶は、
「本日開催の東京マラソンのランナーへの応援の声が聞こえてきて、もちろん自分にかけられたものではないとわかっていますが、それでも嬉しいです」
ということを仰っていました。可愛い☺️
というわけで、この演目の手持ちチケットは残り1枚となりました。次回は奥田ベス・手島ロビンの予定。大切に見届けたいと思います。