日々記 観劇別館

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『エリザベート』帝劇千穐楽感想(2012.6.27マチネ)

キャスト:
エリザベート瀬奈じゅん トート=山口祐一郎 フランツ・ヨーゼフ=石川禅 ゾフィー寿ひずる ルドルフ=古川雄大 少年ルドルフ=坂口湧久 マックス=今井清隆 ルドヴィカ=春風ひとみ

エリザベート』帝劇千穐楽を観てきました。
途中時々睡魔と戦いながらの観劇でしたので、例によって山口トート中心、それ以外はあまり細かい所はチェックできておりませんが、以下、感想です。

キャストの皆様、流石に東京楽だけあって、丁寧に熱く一体感を持ってそれぞれの役を演じられていたと思います。

山口トート、とにかく初っ端から妖艶でした。「私を燃やす愛」でゴンドラに乗って下りてきた瞬間から、もう本当「息を飲むような」という形容詞がぴったり当てはまる美しさでした。
今回の山口トートはまさに「歌う官能と誘惑」とでも言うべき存在感を示していました。もちろん1幕の「闇が広がる」やカフェの場面等では、今季の公演でずっと展開してきたクールな要素も健在なのですが、1幕では妖艶な色合いの方が濃かったように感じました。
特に「愛と死の輪舞」で、瀬奈シシィに初めて出逢った時の陶酔する表情や、彼女に命を返す時の笑顔の艶やかさと言ったら!
「最後のダンス」等で生命力に溢れた瀬奈シシィに迫る姿は、シシィを手に入れたいと言うよりは、純粋に究極の官能を追い求めて楽しんでいる雰囲気満々でした。誘惑という行為そのものを堪能するための誘惑とでも申しましょうか。
そして「エリザベート、泣かないで」では、シシィを究極の快楽=死の世界に引きずり込もうとするトートの歌声は、あたかもフランツに深い哀しみとともに最後通告を突き付けたシシィの心の合わせ鏡であるが如く、甘く凄絶でした。そのお誘いに負けず凛と押し返す瀬奈シシィもまた凄絶で、良い場面に仕上がっていたと思います。

トート以外の1幕の見どころと言えば、禅フランツ。何と自分は5月13日以来の彼との再会でした。
これはちょっと記憶に自信がないのですが、禅フランツ、執務場面で以前からあんなに嬉しそうに働いていたでしょうか?国璽を押しまくる時の顔が、心からの喜びと誇りに満たされていました。
政治犯の母親の直訴却下の時の立ち直りも早く、重臣や母上の言葉を、目を生き生き、キラキラと輝かせながら聞く禅フランツ。もしかして、「僕は皇帝になんてなりたくなかった」オーラ全開の岡田フランツと対照的になるよう、演技プランを組み立て直したのでは?と考えながら観ていました。そして、この禅フランツなら、バートイシュルでパンツ丸見えでトランクに腰掛けて足をぶらぶらさせているシシィ*1の生の輝きを、素直に愛するだろうな、とも思いながら。

2幕。「私が踊る時」での、トートとシシィの呼吸が絶妙だったと思います。瀬奈シシィは押し出しが強すぎない程度に勝ち誇り、山口トートがそれを余裕綽々で受け止めて投げ返す、気持ちの良いキャッチボール状態で。あぁ、「キャッチボール」と言うと、何故か先日の『サンセット大通り』での綜馬さんの嬉しそうなステップが脳裏に(^_^;)。

ちびルドとの「ママ、何処なの?」では、ちびルド湧久くんがピストルを撃った時、小旗が床に落ちてしまいました。瞬間、湧久くんの口元が軽くにやっとしたような気がしますが、あの表情が演技だったのか素だったのかは分かりません。山口トート、床に跪いて小旗を拾い、ちびルドの目の高さに顔を上げてアイコンタクトしていました。ここで色々と段取りを逸したのか、いつもは広げて紋章を見せる筈の小旗は広げ損ねてしまっていました。更にその後、いつもならトートがちびルドの背後に迫りピストルを突き付ける仕草をする時、いつもより若干立ち位置がちびルドに近づき過ぎたようで、ピストルは突き付けずただ構えるポーズをしたのみに留まっていました。

体操室では山口トート、前回(6月10日)に観た時はマントを遠くに投げてましたが、今回はまた足下に落としてました。「このー俺ーだーーー!」とトートが迫るや否や、間髪を入れず「違う!」と拒絶するのが瀬奈シシィなのです。今日は拒絶されて立ち去る途中にちらりと振り返った山口トートの口角は、軽くにやり、と上がっていたように思います。

そして「闇が広がる(リプライズ)」からマイヤーリンクに至るまでのルドルフとの絡みでは、ひたすら意志強くクールに振る舞う山口トートなのです。
今回のルドルフは、初見の古川くん。背が高く逞しい肩をしているのに、弱っちいオーラ満載のルドという印象でした。
常に憐れみを求め、ちょっと突くと粉々に割れてしまいそうな青年。山口トートに冷たく死を迫られると、ピストルを「ああ、そういうことだったのか、これが僕の定めか」という感じであっさり受け取り、あまりにも抵抗なく頭を撃ち抜いてしまったので、「おいおい、それでいいのか?」と逆に不安に駆られてしまいました。ちなみに山口トートの死のキスはいつものようにクールにあっさり決めていました。
古川ルドのお歌は、大野ルドのように怪しくは全くなく、かと言って平方ルドほど安定はしておらず時々弱々しさを覚えることはありましたが、音程は合っていたと思います。ただ、声を力一杯張り上げる時に一瞬ブタっ鼻になるのはちょっと違和感がありました(^_^;)。

山口トートの動きであれ?と思ったのは、ルドルフを馬車に乗せて自分も飛び乗る場面。飛び乗る時、踏み切るタイミングを間違えたのか、スムーズにまたいで乗れず、馬車の座席の手前で両足揃えた状態で、ほんの一瞬詰まってよろめいていました。馬車でコケる死神(^_^;)。そこからは何事もなかったように馬車を操縦していましたが。

ルドルフの葬儀では、何と申しますか、瀬奈シシィが投げやり感満載で、本気で自分に向かってこないシシィなんて俺のシシィじゃねえ!とトートに憤り悔しがられても仕方ないな、と思いました。

「悪夢」では山口トート、今回も実に嬉しそうに両手を振って指揮をし、禅フランツを絶妙の掛け合いで圧倒した後、「救うのは、これだ!」と満面の爽やかな笑みでヤスリを取り出していました。あのヤスリ、いつも手早くすんなりと取り出すのが謎です。更に殺しの凶器を渡すのにあの晴れ晴れとした爽やかさ……あれは人間ではありません。そして、トートが曲の最後に背を向けたまま両手を伸ばして扉に貼り付いているのを見て、いつも「裏ジーザス!」と思うのは自分だけでしょうか。

エピローグでは、下手ブロック席だったので、またまたシシィを迎え入れる時の表情が良く見えず(T_T)。やはり感無量の表情だったのかな?と想像しながら見ていました。

カーテンコールでは、高嶋ルキーニの司会で、古川ルド、寿ゾフィー、今井パパ、禅フランツ、山口トート、瀬奈シシィの順番にご挨拶がありました。
細かいご挨拶の内容は既に公式動画「『エリザベート』6/27帝劇千穐楽カーテンコール」が上がっているので、省略しますが、今井パパがご挨拶しようとした時に、高嶋ルキーニから順番が違う(禅さんが先)と突っ込まれるというハプニングが。しかし実は高嶋ルキーニの間違いで、順番はこれで正解。というわけで、何故か山口トートが前に出て客席にお詫びのお辞儀をしていました(^_^;)。このハプニングで恥ずかしがり屋さんな今井パパが壊れちゃったらどうしよう、と心配しましたが、今井パパ、めげずに普通に、ダンスのお稽古はダイエットになる、というお話をして笑いを取っていました。
その代わりに禅フランツがご挨拶で「客席に空席がない」と口走り、高嶋ルキーニに「あります」と突っ込まれてました。可哀想(^_^;)。今考えますと、いくら月末の平日昼間という、日本の商習慣上はかなりお客が集まりづらい日時とは言え、千穐楽で何故満員御礼にならなかったのか、謎です。

山口トートのご挨拶を、動画からそのまま再録しますと、
「いい仲間と、そして温かい皆様と、夢のようなひとときを過ごすことができて*2、本当にありがとうございました。僕は死神なんですけど、こうやって生きているのもいいなってつくづく思っています。ありがとうございました」
というものでした。普通で良かった(^_^;)。

その後、瀬奈シシィとの2人でのカテコが2、3回ありました。2回目の2人カテコで、上手、下手、センターといそいそと駆け回り瀬奈シシィをエスコートする山口トートが、大変に可愛らしゅうございました。

その後もう一度、キャスト全員+指揮者西野さん&オケの皆様も加わったカテコがあり、最後の最後にキャスト全員が記念撮影状態で舞台センターに集合してのお手振りで、カテコが終了しました。

これからまだ3ヶ月もの間、地方公演が続くこともあって、自分が全ての地方を追いかけられるわけでもないのに、ちっとも『エリザベート』が終わる気がいたしません。
次に私が『エリザベート』を観るのは、名古屋での山口トート初日兼1000回記念公演です。今の所は、これがマイエリザ楽になる予定となっております。本当に寂しくなるのはその時かも、と思っています。

*1:1階K列下手ブロックからは、一瞬ですがシシィのスカートの中身が見えてしまいます、実は(^_^;)。

*2:出た!いつものフレーズ!