日々記 観劇別館

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『エリザベート』感想(2012.6.10マチネ)

キャスト:
エリザベート春野寿美礼 トート=山口祐一郎 フランツ・ヨーゼフ=岡田浩暉 ゾフィー寿ひずる ルドルフ=平方元基 少年ルドルフ=加藤清史郎 マックス=今井清隆 ルドヴィカ=春風ひとみ

一週間ぶりに『エリザベート』を観てまいりました。
少しタイトルロールな方に手厳しい感想が含まれていますので、ファンな方はここで引き返されることをお勧めいたします。

今回観たのは、2階席B列センターという、死角がほとんどない席でした。今季のエリザベートでは先週座ったH列下手ブロックが最前で、所謂かぶりつき席は取れていないので*1、今回の席がかなり最良に近かったです、はい。

まず、1幕ですが……すみません、眠たかったです(^_^;)。実は前日日帰り小旅行に出ていたので、その疲れが出たのかも?とは思いますが、いつもはプロローグが終わるとすんなり入り込めるエリザの世界に、今回はなかなか入り込むことができませんでした。
これはこちらの都合ではありますが、今回を入れて都合連続5回、岡田フランツ&寿ゾフィーの組み合わせで観ることになったという事情も影響しています。お二人に全く罪はないのですけれど、見慣れすぎてこちらの目が少々ダレてしまった点があるのは否定できません。
それから、春野シシィも若干ノリが良くないような気がしました。何となく、少女時代に元気がなかったです。「私だけに」も、元々そんなに声がどこまでも伸びる歌い方ではないとはいえ、ちょっと無理やり声を出している感じを強く覚えました。
山口トートについては、身体、初日より細くなったよなあ、としみじみ立ち姿を眺めておりました。本日はメイクののり具合も良く、動きはいつものように静かに滑るようになめらかで重厚、お歌も安定して好調だったと思います。
ただ、流石に今日は暑かったのか、1幕の間ずっと胸元が少し赤くなっていました。2幕では赤くなかったので、幕間に冷やしたか胸元にメイクしたと思われます(^_^)。

そして幕間にコーヒーをがぶ飲みして気持ちを切り替えた上で臨んだ2幕。
「私が踊る時」。しつこいようですが、この曲での山口トート&春野シシィのデュエットが未だに納得できずにいます。曲の一番盛り上がる、山口トートも思い切り歌い上げている部分で、何故急にシシィの声が聞こえなくなるのだろう?と(^_^;)。もちろん山口さんの声質があまりデュエット向きではなく、特に男女デュエットだと物凄く相手を選ぶ、意外に難しい声だという事情もありますが、きちんとハモっている部分もあるだけに、何でここだけー?(-_-#)ともやもやしてしまうのでした。
もっとも、春野シシィ、思い切り歌い上げずにしっとりとシシィの鬱な心理を表現する曲、例えば「パパみたいに(リプライズ)」や「夜のボート」では、割といい味を出していたと思いますので、もしかしたら単に高音で伸び伸びと高揚して歌うよりしっとりと歌う方が彼女の声の個性に合っているということかも知れません。
2幕と言えば平方ルド。彼はダンスではやや身体が固い気がしますが、「闇が広がる(リプライズ)」では不安と激しさを取り混ぜて高らかに、「僕はママの鏡だから」では切々と、それぞれにドラマチックにメリハリをつけて歌い上げていて良いです。山口トートと声質も合っているように思います。
あと、革命ダンスで「せや!」と掛け声を上げてから仲間を率いて踊り出す姿も微笑ましかったり(^_^)。仲間思いで真面目で、真っ直ぐ素直であるが故に悲劇へと突っ走るのが平方ルドなのです。

さて、山口トートについてです。今回は、実に表情豊かなトートでした。
2幕の「私が踊る時」まではクールなようでいて、どこかシシィに暖かく接しているトート。
驚いたのは体操室。フランツの裏切りを知っても必死でトートを拒み続ける(生きようとする)シシィを見つめる山口トートの横顔は泣きそうになっていました。1幕の「闇が広がる」でもシシィを憐れむかのようにどこか悲しげな表情を見せますが、それよりももっと「泣き顔」でした。
更に再び登場した「闇が広がる(リプライズ)」から革命ダンス、ルドルフ検挙に至るまで、トートはずっと泣きそうな表情のままでした。全ては彼の計画どおりであった筈なのに。ルドルフを殺すことで愛するシシィは死に心を傾ける筈なのに。何故今日のトートはあんなにも苦しげに死を執行していたのでしょうか。
しかし。次にマイヤーリンクで現れた時には、一転して氷のような眼差し。ピストルを手渡し、平方ルドの後ろ髪を掴んで引き寄せ、氷の眼を見開いたまま死のキス(書くだけでドキドキします(///))。ここで平方ルドは、幼き日の思い出とリンクしたのか、一瞬だけはっとしたかのような表情を見せ、それから両手でぎゅっとピストルを握りしめます。ピストルを構える動作はスローモーションですが、引き金を引く仕草には何のためらいもありませんでした。
……と、ここまでは沈鬱でしたが、「悪夢」では一転、フランツとシシィの一族の命を鼻息で吹き飛ばすかのように奪い、どや顔でフランツを嘲笑うトートさん(^_^;)。ヤスリを上着のどこにあるんだか分からないポケットから取り出した時の顔の、まあ嬉しそうなこと。それまでの沈鬱な表情と、この場面での晴れ晴れどや顔とのギャップが凄まじかったです。
そしてエピローグでシシィを迎える時の顔は感無量で爽やかに輝いていました。シシィとのキスはセンターからだとシシィの顔しか見えません。上手席なら見えると思いますが、もう上手席のチケットはないのでした。残念。

カーテンコールでは、全員でのお出ましが数回と、シシィ&トートでのお出ましが2回ありました。
全員でのお出ましの時、清史郎ルドが岸エルマーに駆けよってハイタッチしていたのに気づきました。岸エルマーはハイタッチじゃなく腰の辺りでのロータッチでしたが(笑)。真面目で優等生な清史郎ルドの「普通の男の子」の顔がちら見えた瞬間でした。
シシィ&トートのお出ましでは、どこか反応の鈍い春野シシィを、山口トートが優しくいたわっているように見えました。もしかして今日は春野さん、あまり調子が良くなくて、お芝居に乗れておらず、それを空気読みの達人山口さんが察して気遣っていたのでは?と想像しています。

というわけで、少々すっきりしない所もありましたが、私のエリザ観劇も残す所あと1回となってしまいました。次回は帝劇千穐楽。平日ですが何とか参加できるようあと半月頑張りたいと思います。

*1:そもそもエリザでそういう席をいただいた経験が皆無。M!では2回もいただいたのですが……。