日々記 観劇別館

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『エリザベート』山口トート楽感想(2010.10.19ソワレ)

キャスト:
エリザベート瀬奈じゅん トート=山口祐一郎 ルイジ・ルキーニ=高嶋政宏 フランツ・ヨーゼフ=石川禅 ゾフィー杜けあき ルドルフ=浦井健治 ルドヴィカ=春風ひとみ マックス=村井国夫 少年ルドルフ=菊池駿

エリザベート』2010年公演。10月19日、ついに山口トートの千穐楽(公演はまだ10月30日まで続きます)を迎えました。
というわけで、今回も色々とかなぐり捨てて、帝劇に詣でてまいりました。

本日の公演では、客席はもちろんのこと、キャストの皆様からも大変な熱気を感じ取りました。
「今日で私のエリザは終わってしまった……」という万感の思いが溢れるほどに、頭の中が真っ白になりそうです。
うまくまとまりがつかないかも知れませんが、ひとまず、山口トート中心に語らせていただきます。

プロローグでゴンドラに乗って降りてくる姿から、1階G列サブセンよりオペラグラスでガン見してましたが、目元の化粧に結構ラメが入っているらしく、かなりキラキラしていました(笑)。流石にご自身の楽ともなると通常よりは多少丁寧にメイクしてくれてるのかな?と想像して、そこはかとない微笑ましさを覚えてみたり。

M!のお稽古と本番を掛け持ちされている中、やはり喉の調子は万全ではなかったと思います。特にそれを感じたのは1幕「最後のダンス」。声量はしっかりたっぷり出ているものの、細切れにブレスしながら繋いでいる微妙な息遣いが素人の耳にもありありと分かりました。
しかし、ということは、山口トート、絶好調の時は細かい息継ぎを全く観客に気取らせることなく、あの激しい曲をドラマティックに歌いきっているわけで。……改めて、凄い人です。
もっとも、2幕ではかなり持ち直してくれたと感じました。「闇が広がる(リプライズ)」もじっくり聴かせてくれましたし、「悪夢」も大音量で「自由を!!」と絶叫していました。

山口トートの曲の終わりにいくつか、本人、マエストロ、舞台スタッフ全部のお仕事だとは思いますが、いつもよりも溜めるような「間」が作られていました。「愛と死の輪舞」の後なんて、シシィの魂をゆーっくり両手の中に溜める溜める。「最後のダンス」でもゆっくり階段を昇り、明かりも少し長めに点いていました。

瀬奈シシィと組む演技は、16日に観た対・朝海シシィのそれと比べると、やはり彼女が強ければ強いほどに反射するように全体に激しく力強かったです。
「最後のダンス」のダンスシーンで、両手で瀬奈シシィの手首を取りぐいと引き寄せて放そうとしない演技。
エリザベート泣かないで」でシシィとゾフィーの争いのどさくさに紛れて心の隙間に入り込もうと試みる誘惑(ロマンのない言い方ですみません)。
「私が踊る時」でシシィが人生の栄華を謳歌し突っ張る姿とその儚さを終始心底楽しんでいる表情。
体操室で一瞬死への色気を見せながらも踏みとどまり、はっきりと生きる意志を見せたシシィに対し、長椅子の上で身悶えしながらぎりぎりと歯噛みして、お前が愛するのはこの俺だ!と咆哮しながらシシィに襲いかかる姿。
そしてルドルフの棺の前でこれまでにない程のダメージを受けぐらつくシシィを、その死を欲する気持ちが「弱気」であるが故にぐっとこらえて突き飛ばす姿。
……と、ことほどさように、ここまでのトートの態度がひたすら強いが故に、ラストで胸に飛び込んでくるシシィを迎え入れる姿がとりわけ温かく見えたのでした。死神なのに。

瀬奈シシィについては、もう何度も観ているのにひたすら強いイメージしかなかったのですが、今回初めてコルフ島の場面が胸に迫りました。強すぎる程に強い瀬奈シシィの心にぽっかり開いた「長距離ランナーの孤独」みたいな物が見えた気がしました。もちろんこれは、村井パパの最愛の娘の苦悩を見ながら黄泉へ去らねばならないという虚無感溢れる歌声あってこその情景であったと思います。

浦井ルド。彼がその日のちびルドに合わせ演技プランを変えるという噂を聞きましたが、それは本当に違いないと今回確信しました。
今回のちびルド、駿くんが演じるルドは、おっとり優しくトロそうな雰囲気(と私は思った)でしたが、浦井ルドはまさに彼がそのまま大きくなったキャラクター。そういう子が国を憂いたが故にトートに付け込まれて煽られ、自分を無理に奮い立たせた結果ああいう末路を辿ったのだと感じられ、泣けました。
そして「闇が広がる(リプライズ)」は歌声でも演技でも、山口トートと見事に駆け引きし、ぶつかり合うことでまた化学反応が生まれていたと思います。大きな拍手を送らせていただきました。

何だかまだまだ書き足りませんが、カーテンコールの様子も記しておきます。
エリザカンパニーはいつも温かい雰囲気ですが、今回のカテコは特にそれを感じました。
まず、山口トートのお出ましの時に浦井ルドがぴょんぴょん飛び跳ねながら手拍子していました(可愛かったです(^_^))。
そして、瀬奈シシィの紹介により、山口トートからご挨拶。何故か禅フランツと村井パパが顔を見合わせ笑いを堪えてました*1
ご挨拶の内容は既に公式YouTube動画も上がっているので概略のみお伝えします。
まず、大きな身体をキャスト一同、オケピ、客席とあちこちの方向に向けながら、「ありがとうございます」と何度も細かくお辞儀する山口トート。そして、
「〇〇カード会員の皆様ありがとうございました!××カード会員の皆様(略)!☆☆カード会員の皆様(略)!そしてそれ以外の皆様、本当にありがとうございました!」
とご挨拶。この部分は流石に動画からは巧妙にカットされてました(^_^;)。
真面目なご挨拶としては(これは動画にも載っています)、とてもそうは見えないかも知れませんが、数日前からドキドキして、心臓が口から飛び出しそうになっています、と語られ、
「こうして皆様と楽しい時を過ごせてパパは幸せです」
と締めていました。あと確か、客席から聞こえた笑い声に「……アハハ?」と反応してました。
ご挨拶の後で瀬奈シシィが、
「これからM!のお稽古で同じ帝劇にいらっしゃるという安心感を覚えながら引き続き千穐楽まで務めたい」
と言っていたのが、ああ、頼りにされていたんだなあ、と印象に残りました。

瀬奈シシィと2人でのカテコは、4、5回あったように記憶します。動画にも載っていますが、山口トート、「あ・り・が・と・う」と2回位口パクで仰っていました。客席降りは、確か4回目位。まず上手最前列で握手し、一旦舞台に戻った後、今度は下手最前列に降りていました。私の席からは良く見えませんでしたがどうもお客さんをハグしてるらしい、というのは伝わってきました。後で2階席にいた友人に確認した所、やはりそうだったようです。襲われた方、羨ましすぎます。

まだ実感が湧きませんが、私の今年の『エリザベート』はこれで終了です。
自分的に10月の2/3以上は終わったようなものだとじわじわと感じていますが、今週土曜日にはTSミュージカルを、そして11月早々にはM!が始まるので腑抜けている間はなさそうです。さて、気持ちを切り替えて行かなければ……。

*1:見逃してましたが、村井パパが冗談で一歩進み出ようとしたらしいです(^_^;)。