日々記 観劇別館

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『エリザベート』感想(2010.9.25ソワレ)

キャスト:
エリザベート朝海ひかる トート=城田優 ルイジ・ルキーニ=高嶋政宏 フランツ・ヨーゼフ=石川禅 ゾフィー杜けあき ルドルフ=伊礼彼方 少年ルドルフ=坂口湧久

エリザベート』9月25日ソワレ。ほぼ1ヶ月ぶりに城田トートを再見してきました。

25日はマチネは山口トートの出演回。朝ぎりぎりまで、マチネのチケットがどこかに落ちていないものかと網を張り探していましたが、願いは叶いませんでした。
開演1時間前の16:30過ぎから帝劇地下でお茶をして開演までの時間を潰しつつ、ああ、つい数十分前までこのビルに山口さんがいらしたのね、等と思いを馳せたりしていました。

さて、城田トートです。1ヶ月ぶりに観ましたが、8月に観た時に比べて、だいぶ感情が豊かになったような気がします。前に観た時は「このトートって本当にシシィを好き?」と突っ込みたくなる場面が多々ありましたが、現在の城田トートは「愛と死の輪舞」でシシィにロックオンして以降、終盤までしっかりと彼女に執着し続けており、少なくとも感情薄っ!とは思わなくなりました。

朝海シシィについては、やはり女性の心身の生理に根ざした、言わば「女力」の強さを感じました。ポジティブ、ネガティブ両方の意味で、女性としてのどうしようもなさを抱えている感じ。前回観たのが心身共に逞しく男前な瀬奈シシィだったので、余計にそう感じたのかも知れません。
特に面白いと思ったのは、朝海シシィと城田トートの、特に2人が出会ってから「最後のダンス」に至る頃までの関係です。お互いそれまで経験したことのない未知のものの存在に戸惑い、どう対峙したら良いか分からない、という感情が渦巻きまくっていました。
その後の2人の関係は、「自分の分身の誘惑に抵抗しつつも、存在自体はごく普通に受け入れるシシィ」vs「何とか相手の隙に付け入り連れ去ろうとするが、何故か上手くいかないことをもどかしく思いつつ、あまり感情は表に出さず引き際は良いトート」と言った所かと思います。

今回の観劇に当たっては自分でとあるテーマを設けていました。
どんなテーマだったかは秘密ですが、そのテーマに従い、城田トートに愛のムチ(笑)をいくつか。

まず、数日前に彼のトートを観た友人から言われて気づいたのですが、最後通告やちびルドとの場面での腰かけ方が、開いた両股の間に伸ばした両手を入れていて、あまり死神らしくない、と言うかヤンキー臭いです(^_^;)。
あの座り方が、特に最後通告の演技を気怠そうに見せるのに拍車を掛けていると思われます。体操室のベッドで、夫に見切りを付けるシシィを眺めながら仰向けに寝そべる演技もかなり気怠そうですが。
あと、背筋はもう少しピンと伸ばしてくれる方が、動きが綺麗に見えると思います。
かつて山口さんや石丸さんが、劇団時代に背中に長い物差しを突っ込まれる等の厳しい姿勢矯正訓練を施されたという話を目にしたことがあり、かの劇団の教育のスパルタぶりにおののいたものですが、あれは効果絶大だったんだなあ、と実感しました。
今期エリザでは、お2人の他、田村ジュラも背中がピンとしていて姿勢が綺麗ですね。

歌声については、私の評価はかなり甘いです。自分の中では山口トートが不変の絶対評価最高位に立ってしまっていまして、今の所城田トートはその地位を脅かすほどではないのですが、でも歌としてちゃんと聴かせてくれているので。
一つだけ欲を言えば、もっと「最後のダンス」にカタルシス感が欲しいかな。だいぶシシィを求める気持ちは伝わるようになってきたと思うのですが、トートがシシィに自分の存在を刻み付ける大事な場面なので、切迫感や恐怖感、威圧感だけでなく、陶酔感もしっかり出してくれると嬉しいです。

伊礼ルドルフとの共演シーンは流石にビジュアルが美しかったです。
トークショーで城田トートが伊礼ルドルフをお姫様抱っこして登場してみたり、別の日の瀬奈シシィ&フランツとの3人トークショーで伊礼くんが、
「城田くんとのキスシーンでは思わず目を瞑る」
等と言ってみたりしているので、そっち系(どっち系?)の客層は多少意識してるのでは?と思います。
ただ、綺麗どころの2人を観ていると、余計な妄想や煩悩が生まれまくりで、本来のトート&ルドの関係性(シシィを追い込むために不幸を仕掛ける死神と、そのために幼児期から目を付けてきた大事な手駒)が頭のどこかに置き去りになってしまうのは困りものでした(笑)。
それに時々トート&ルドが対等に見えていた気がします。ルドに対峙している間のトートはルドの鏡でもあるわけで、まあ対等でもまるきり間違いではないんですが、この2人の力関係ってトートの方が上だよね?あれ?と思う瞬間があったのは本当です。

トートについてはこの辺にしておいて、朝海シシィについてもう少しだけ。
今回、先程書いた女力の強さに力点を置いて観たので、歌声は、全く不満がないわけではありませんが、それほど気になりませんでした。特に1幕最後のソロから三重唱にかけての歌など、これまで自分が観た中では最高にビシッと決めていらしたと思います。
前に観た時の感想にも書いた気がしますが、朝海シシィはずっと心が一人ぼっちで、人生のピークに置いても常に自分の内面と葛藤し続けていて、時々現れるトートとの対話でのみ本音を見せています。観ていて、孤独感と窒息感が伝播してくる、そんなシシィだと、今回もまた感じました。
また、今回、実はシシィとゾフィーの個性も意外に大事な要素なのでは?と初めてそんなことを思いました。上手く言えませんが、ゾフィーの追い詰め心理(本人は決して追い詰めたくてやっているわけではありませんが)と、シシィの追い詰められる心理との衝突は、全く2つの心理が噛み合わないよりもどこかに同質のものがある方が、より強烈に見えると申しましょうか。
これはあくまで私見ですが、シシィとゾフィーの組み合わせは、女っぷりの強さで朝海シシィ&杜ゾフィー、雄々しい男前ぶりで瀬奈シシィ&寿ゾフィーが合っている、と考えています。どのシシィもゾフィーも、各人物の考えや行動は一応一緒なんですが(脚本は同じだし)、アプローチの仕方が異なるという意味です。

長くなりましたので、そろそろカーテンコールのお話を。
カーテンコールでは、何故か城田トートに対して客席から笑いが起きていました。残念ながら瞬間を見逃してしまいましたが、多分、シシィのドレスの裾を踏んづけたものと思われます。
全員カテコの後、通常はシシィ&トート2人のお出ましで追い出しとなりますが、今回はちびルドの湧久くんを真ん中にして3人手を取り合って登場していました。大変に可愛かったです(^_^)。

そして観劇後、山口トートがやはり早く観たくなり困っています(^_^;)。城田トートと同じ金髪ビジュアル系だからか、どうしても離れられないのですね、うぅむ。次回は山口さんのお誕生日に観劇の予定ですので、頑張って耐えます。