日々記 観劇別館

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『エリザベート』感想(2010.10.5ソワレ)

キャスト:
エリザベート瀬奈じゅん トート=山口祐一郎 ルイジ・ルキーニ=高嶋政宏 フランツ・ヨーゼフ=石川禅 ゾフィー杜けあき ルドルフ=浦井健治 ルドヴィカ=春風ひとみ マックス=村井国夫 少年ルドルフ=鈴木知憲

もう1日以上が立ってしまいましたが、10月5日、今期初の浦井ルドルフを観てまいりました。
山口さんの54歳の誕生日。あの方の性格からして舞台上でお祝い事はないでしょうけれど、客席からお祝いの気持ちを込めた拍手を送りたい。そんな思いから、頑張って仕事を早抜けして、友人が確保してくれたチケットを手に、夕方の帝劇に詣でました。

昨日ブログを書きかけたのですが操作ミスで文章を消してしまいました。今日は書くぞ!と思っていましたが、急な仕事が入り午前様に。実はさっき帰ってきた所なのです。
というわけで以下、あまりじっくりした感想になっていないかも知れませんがお許しください。

山口トート、3日連続登板ということで若干不安を覚えていたのが嘘のように絶好調でした。
パワフルな瀬奈シシィが相手ということもあると思いますが、「愛と死の輪舞」も「最後のダンス」も押せ押せな感じ。特に「最後のダンス」は瀬奈シシィの抵抗が激しいので、より一層押しにかかっていました。まさにガチンコ勝負。声も力強く響いて、客席の拍手も今回はお誕生日狙いの人が多いのかいつもの1.5倍は熱くて、軽くショーストップ状態に。
その一方で、やはりシシィと対峙する1幕の「闇が広がる」では、この人一歩間違えたら本当に泣いてしまうんじゃないか?と心配になるくらい切々と訴えかける歌声を聴かせてくれました。死を掌る存在でありながら、シシィの魂を得ようとすればするほどに新たな死が生まれることを憂いつつ、でも最後は吹っ切ったように強烈な眼光を放ち、孤独なシシィの鏡として同じように孤独に去っていくあの背中に、いつも釘付けになってしまいます。
背中と言えばもう一つ、「エリザベート泣かないで」のシシィにけんもほろろに拒絶されてもだえる後ろ姿。ぴったりした薄地の服に肩から肩胛骨にかけてのラインがくっきり浮き出ていて、妙にドキドキしてしまいました。
2幕最初のトートの出番、皇帝夫妻のブダペストでの馬車パレード。第一声から♪いっまっのぉ〜うちだっけっだぜ〜!♪とあまりにも元気に叫んでいたので、周囲をはばからずつい吹き出してしまいました。そして、「私が踊る時」の途中でシシィを見遣る目つきが一瞬かなり色っぽくて、あれ?こんなに色っぽかったっけ?と瞬間かなり動揺させられた自分なのです。
それと革命動乱のダンス。今回、S列下手ブロック席からほぼ真正面でじっくり観ることができましたが、ジャンプもターンもきびきび軽々と決まってました。このお席、本当に見やすい場所でした。唯一の死角はルドルフへの死のキス。ちょうど山口トートの後頭部に浦井ルドの顔がすっぽり隠れてしまうのですね(^_^;)。

と、ことほどさように山口トートも大変に素敵だったわけですが。
しかし、今回は何と言っても浦井ルドの歌声の持つ引力に圧倒されてしまいました。気付いたら彼の声に気持ちを持って行かれていた瞬間が何度もあり、自分でも驚いたくらいです。
山口トートとの「闇が広がる(リプライズ)」は、聴いていて、あ、化学反応起こしてる、と思いました。実は今回の音響、1幕で「瀬奈シシィ、調子悪い?」と首を傾げてしまったぐらい、あまり調整が上手くいっていない?と感じていたのですが、浦井くんの歌、そんな条件には関係なく、劇場内に凛と響き渡っていました。
浦井ルドはマイヤーリンクでトートからキスとともに渡された銃を構えた後、一瞬薄く微笑んでから引き金を引いていました。現と黄泉の間に魂が漂っているような、そんな微笑みだったと思います。
ちなみに浦井ルド、「悪夢」でも実にホットに舞い踊っていました。いつもここでは勝ち誇るトートを見ていることが多いのですが、あまりにルドの動きが熱く濃いのですっかり視線を彼にロックオンしてしまい、うっかりトートがルキーニにヤスリを渡す場面を見落としそうになったぐらいです。

そうそう、瀬奈シシィについても一言。。
彼女の演技は、観る度にどんどん雄々しさを増している気がいたします。
何せ新婚1日目からゾフィー様に全く負けておりません。皇后としてシゴキを受けようと、子供達の養育を奪われようと、見た目ほとんどへこたれず、堂々と自分を貫く男前なシシィなのです。
もう少しで良いから、歌声も雄々しく逞しくなってくれると嬉しく思います。贅沢を申せば、雄々しさの裏側で着実に死への憧憬を強めていく自身への「揺らぎ」みたいなのがにじみ出るシシィでもあって欲しいのですが。

そして何と言っても特筆すべきは、今回のカーテンコール。
キャスト全員でのお出まし数回の後、シシィ&トート2人でのお出ましが3回ほどありました。いつもは2人で出てきても2回程度なので、3回はいつもより多めです。
2回目のお出ましで、山口トートがにこやかにひざまずきながら客席に向けて伸ばした手の指が示していたのは、は左手が5、右手が4。つまり両手で「54」のサイン!更に3回目のお出ましでは大きく口パクで「ありがとう!」と言っていました。
あの茶目っ気たっぷりのボディランゲージを思い出すだけで、次の観劇まで気持ちを保たせることができそうです。もちろん、力一杯、おめでとうの拍手を送り続けたのは言うまでもありません。

というわけで、これから頑張って睡眠を稼ぎたいと思います。皆様おやすみなさい。