日々記 観劇別館

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『エリザベート』山口トート初日感想(2012.5.12ソワレ)

キャスト:
エリザベート瀬奈じゅん トート=山口祐一郎 フランツ・ヨーゼフ=石川禅 ゾフィー杜けあき ルドルフ=大野拓朗 少年ルドルフ=加藤清史郎 マックス=今井清隆 ルドヴィカ=春風ひとみ

2ヶ月ぶりに舞台上の山口さんに再会してきました。

まずは何を置いてもトートについて語らせてください。多少、ネタバレありです。

山口トート、とにかくアイメイクがキメキメ、キラキラで美しかったです。お肌もシシィより白いんじゃないかと思える程に、顔もスリットの入った胸元も白く輝いていました(^_^)。
1幕の最後通牒の場面でつくづく見入ってしまったのですが、あんなに上半身スケスケの黒レース、しかも身体にぴったり仕様の衣装がしっくり似合う体型をしていて、加えて素直に「綺麗」と感じられる50代男性はかなり稀少な存在だと思います。
気がかりだった歌声は、かなり復調している感じでした。豊かな声量で劇場中に轟いていて、「ああ、良かった……」と心の中でこっそりほろり。
とは言え、「最後のダンス」で時折小さなブレス音が聞こえていたので、以前と全く同じというわけではないのかも知れません。もっとも半年の旅はまだ始まったばかり。どうぞこの調子が大楽まで保たれますように、山口さんがお元気でありますように、と願うばかりです。

トートの役作りは、前回公演よりもクールビューティーなトートに仕上げている印象でした。基本、何を考えているか表情から読み取れないのですが、その顔でぴったりシシィに執着し続けるのが不気味なのです(笑)。
そのトートが、マイヤーリンクでルドルフを追い詰め死に追いやる時には、うって変わって恐ろしい鬼神のような表情で迫っていました。あの顔で睨まれたらルドならずとも「ごめんなさい、言うこと聞いて死にますから許して!」と制圧されてしまいそうです。そしてその鬼神顔のままルドにほんの1、2秒間、死のキス。そ、そんなやっつけ仕事で、しかも怖い顔のままちゅーしなくても(^_^;)。
そんなトートが、エピローグでシシィが自ら望んで黄泉に下りてきた瞬間には、白い光を浴びて輝きながら感無量の表情でお出迎えするのが個人的にツボです。……もっとも、後ろ髪は革命の場面で踊った後でぼさぼさのままですけどね(^_^;)。

今回演出が大きく変わったのは、2幕の「ママ、何処なの?」です。前回までの、トートが剣の切っ先をちびルドの背に絶妙の距離で向ける演出が好きだったので、変更は少し残念。でも、トートがおもちゃの銃から出たハプスブルクの小旗を眺めながら、幼いルドルフの運命を見通し、撃つ気ゼロの手つきで銃の筒先を向ける表情がどこか寂しげなのは印象的でした。
それから、マイヤーリンクでピストルを取り出すタイミングも、ルドにキスするより前に変更されていました。前回まで、トートの長髪カツラの毛先にピストルが絡まったりして取り出すのが大変そうだったので、この変更は手先が器用でないトートには福音だと思われます。誰とは言いませんが。
また、これは演出変更かは不明ですが、革命の場面での煽りダンスでトートがジャンプしていなかったような気がします。ここ、自信がないので次回の再チェックポイントです。

トート関係の感想はこの辺にしまして、以下、トート以外について簡単に触れておきます。

まず、新マックス公爵の今井さん。自由人と言うよりはどうしてもバルジャンに由来する良いパパ度が強すぎて、シシィ少女時代の家庭教師とのラブシーンがあまりエロくなく色っぽくなく、若干段取り臭いのが惜しい所です。お歌は本当に安心。このあったかいパパだから、シシィは「パパのすること全部好き」だったんだろうな、と納得が行きました。

もう1人の新キャスト、ルドルフトリオのうちの1人、大野くん。顔立ちがくっきりしています。終始涙目、必死感満載なルドルフだったと思います。

噂には聞いてましたが今回の「ミルク」にはルドは登場しないようです。エーヤン、ハンガリー!の場面にいたかどうかは、確かめようとしましたが視力の限界で確認できませんでした。
歌声については、実は1幕プロローグでの第一声を聴いて椅子から落ちそうになったのですが、待て、2幕まで通しで聴くまで判断してはいけない、と評価を保留。
そして2幕の「闇が広がる(リプライズ)」。……声量はかなりあります。ただ、残念ながらあまりメロディアスではありません。

例えば、山口トートの歌声が、超ベテラン奏者が奏でる楽器から発せられる耳に心地良い「音楽」だとすれば、大野ルドの歌声は、やっとドレミが出せて音量のコントロールまでできるようになった初心者の楽器から出る「音」だと思います。音程があっていても、まだ「音楽」としては練られていない印象です。
でも、前出のとおり声量は相当ある役者さんですので、これから半年間場数を踏むことで、メロディアスな歌声さえ手に入れればもしかしたら化けるかも?とひっそり期待しています。

清史郎ちびルド。演技に全く危なげなし。高音をしっかり綺麗に安定して歌えていたと思います(^_^)。

瀬奈シシィ。少女時代の歌声が可愛いです(^_^)。音域はもう少し広い方が良いなあ、と思う時もありますが、この方の声質は嫌いではないです。あと楽曲の解釈が明解で、その解釈に対して素直に忠実であろうとする心掛けと努力が見えて好感が持てます。
基本、心の強いシシィであることは前回と変わりないのですが、精神病院の場面やルドの葬儀の場面で、以前よりも心の揺れが強烈に伝わってくる感じがしました。特に後者での壊れっぷりが半端無いです。

禅フランツ。青年期のつやピカ度が以前よりだいぶ押さえられているように感じられました。端正で全くぶれのない役作りが良いのです。

ゾフィー。以前よりお歌が安定されたように思います。男性顔負けの雄々しさよりも、男役のような凛々しさと聡明さで皇室を束ねているように見えました。

そして今回驚いたのは、高嶋ルキーニ。滑舌と声の通りが格段に良くなっていました。どこかの記事で、今回からボイストレーナーを替えた、という発言を見ましたが、そういうのが影響していたりするのでしょうか*1

ちなみに本日、山口トートと大野ルドの初日でしたので、カーテンコールで何かやってくれるかな?と期待していましたが、特にご挨拶等は何もありませんでした。
その代わり、止まらない拍手に応えてくれ、最後にシシィ&トート2人でのお出ましが3回ぐらいありました。満面の優しい笑顔で拍手に応える山口さん、とても、あの怖い顔でルドを追い詰めていた死神と同一人物とは思えませんでした。

――本日の感想は以上です。次回観劇は明日。春野シシィ、平方ルド、湧久ちびルドの初見となります。期待と不安とが相まって、今からどきどきしています。

*1:ちょっとだけ、改善できるならもっと早くやって欲しかった、と思いました(ぼそ)。