日々記 観劇別館

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『三銃士』帝劇千穐楽感想(2011.8.26マチネ)

(キャスト)
ダルタニャン=井上芳雄 アトス=橋本さとし アラミス=石井一孝 ポルトス=岸祐二 アンヌ王妃=シルビア・グラブ コンスタンス=和音美桜 ロシュフォール=吉野圭吾 バッキンガム公爵=伊藤明賢 ルイ13世今拓哉 進行役/ジェイムズ=坂元健児 ミレディ=瀬奈じゅん リシュリュー枢機卿山口祐一郎

というわけで『三銃士』帝劇公演の千穐楽を見届けてまいりました。
カーテンコールでの吉野さんご自身からの降板報告と、それにまつわる思いについては前の記事に述べたとおりです。思う所は色々ありますが、代役に抜擢された原さんの博多でのご活躍をお祈りするばかりです。
気を取り直して、本編の感想にまいります。
帝劇楽ということで、キャストの皆さん、かなり遊びを入れてきていました。
例えば1幕の三銃士とダルタニャンの決闘未遂場面。三銃士が決闘の順番は俺だ!と言い争い、ダルタニャンにヒソヒソ話大会でもしに来たのか?と咎められるのですが、ロシュフォール
「ヒソヒソ話でも聴こえてるぞ!」
と言いながら登場してました。もう一言何か言った気がしますが、客席が拍手と爆笑に包まれたため聴こえず。
その場面の後の銃士隊の国王謁見場面では、ポルトスが国王の足元にクロワッサンを転がしてしまう場面があります。ここは通常はアラミスが拾い、国王がそれを取り上げてポルトスに返す、という流れでしたが、今回は国王が直接床から拾ってポルトスに返していました。確か初日にもこのパターンだったように思います。
コンスタンスは酒場からバッキンガム公をお連れする場面で、あらぬ方に突進しようとする公に通常は「そちらは壁です!」と止めますが、今回は「そちらは池です!」と止めていました。ここ、確か「そちらは袖です!」バージョンも存在します。
また、多分、主君たるバッキンガム公辺りは知らされていたと思うのですが、オケピに一旦宝石箱が転落する程白熱した(ちょうど中央の舞台際に公達が追い詰められる場面で箱が落ちたのですぐオケピから手渡されていました(^_^))宝石箱争奪戦で暴走しまくったのは、意外にもジェイムズです。三銃士に助けられて「来るの遅いよっ!」と悪態をついた後、きっかけは忘れましたがアトスに対し、
「何よーっ!アタシをイヤらしい目で見ないでぇーっ!」
「アタシはアンタのクリスタルの天使じゃないのよっ!」
などと因縁を付けまくり、ついに主君に、
「黙れジェイムズ!」
と怒鳴り付けられていました(^_^;)。そして、三銃士に護衛されての去り際に、
「閣下はいつでも真剣でした。エリザベスの時も(略)の時も!(置いてきぼりにされたのに気づき)……『みんなは1人のために』じゃないノォーッ!」
と絶叫していました。……ど、どうしたの?ジェイムズ(^_^;)。
(2011.8.31追記
吉野ロシュ降板ショックで書き忘れていたので付け足しです。宝石箱争奪戦では、ロシュフォールもミレディに
♪おま〜えと〜、はじ〜めて〜、であ〜った〜のは〜、○○の〜○○の〜、やど〜や〜だ〜った〜♪(注:○○部分は伏字ではなくど忘れです(^_^;))
と語りかけるというアドリブをかまして、いつものようにバキッ!と裏拳を喰らって倒れていました(笑)。あの歌に元ネタがあるのかどうかが気になって仕方ありません。

そして、我らが猊下も負けじとお茶目ぶりを発揮。1幕の狩場ではミレディとロシュフォールの「バーカ!」「カーバ!」等大人気ない罵り合いに耐え切れず(?)、顔を伏せて床に中腰でしゃがみ込み、サイズ収縮。そしてゆっくりと立ち上がって満面の笑みで「や・か・ま・し・い」と2人を振り払っていました。
更に2幕でも、「こんな偽善者顔!」と仮面を突きつけられた際、絶対今日は何かやるに違いない、と注目していたら、何と、客席に大真面目な顔を向けながら、右手人差し指をほっぺたに突きつけ、小首を傾げてカワイコちゃんポーズを決める猊下(笑)。あのお茶目過ぎる表情の脳内スナップショットをおかずに、軽くごはんお茶碗3杯はいけそうです。更に狩場でロシュフォールにマントで扇いでもらう2ショットの思い出(帝劇限りとなりました(泣))でもう1杯。

何だかお笑いレポートになってしまいましたが、キャストの皆様、若干喉がお疲れ気味な方もいらしたとは言え、歌も演技もアクションも、楽日にふさわしく全力疾走の舞台を見せてくださっていました。客席もそれに応え、設定上も本当に全力疾走している、三銃士とダルタニャンが荷馬車でパリに戻る場面では、いつもはあまり起きたことのない手拍子が自然発生していました。
どうしても猊下の話になってしまうことをお許しください。2幕の2曲で、本当に力強く、それでいて官能的な渾身の歌声を披露されていて、それが強烈に心に焼き付いています。「我が心氷にあらず」は前楽の歌声も最高だったと思っているので、セットで焼き付け。そして「我を信じよ!」はロシュフォールのマントを派手に翻しての華やかな舞姿もセットです。「我を〜」では歌の後半、手拍子が起きていました。
2幕のクライマックスで連行される際の眼を瞑ったままでの静かな微笑みも忘れられません。これはロシュフォールに向けた寂しげな表情と、その後国王にお伴を命じられてわんこのように嬉しげに走り去るロシュフォールと3セットになっています。

カーテンコールでは、帝劇の11月、12月公演の主演である瀬奈さん、さとしさん、山口さんから宣伝も兼ねたご挨拶がありました。その後、前出の吉野さんご自身からの降板のご挨拶という流れでした。
この後は吉野さんへの思いで気持ちがぐるぐるして良く覚えておりませんが、最後にマイクを握った井上くんの涙声が耳から離れません。
ここで一旦キャストが退場した後も、追い出し音楽後に馬のジャガイモ号の登場と中の人のご披露も含め、何回かの舞台上への全キャスト、そしてオケの皆様のお出ましを経て、最後は何と吉野さん以外の全キャストの銀橋渡りご挨拶がありました。吉野さんも下手袖に立ちご挨拶されていました。銀橋に上がったキャストの退場は下手袖から。渋滞のため(?)、国王夫妻だけは下手花道からご退場。最後の最後には演出家山田さんも井上くんに無理やり引っ張り出されお辞儀されていました。

今回、帝劇楽は賑やかで華やかな思い出であると同時に、例の件に関する複雑な思いも引きずるものとなってしまいました。
どうか博多座公演で、代役や配役変更に当たった皆様、そしてもちろん他のキャストの皆様、どなたもお怪我などなく無事に大楽まで務め上げられますよう、遠くの空から祈っております。