日々記 観劇別館

観劇(主にミュージカル)の感想ブログです。はてなダイアリーから移行しました。

『DOWNTOWN FOLLIES DELUXE(ダウンタウン・フォーリーズ VOL.8)』感想(2012.5.26ソワレ)

キャスト:
島田歌穂 玉野和紀 吉野圭吾 北村岳子 平澤智 樹里咲穂

最近専ら帝劇に通う日々が続いていましたが、今週は初・DTFにチャレンジしました。
吉野圭吾さんの実力がいかんなく発揮される演目を観たかった、というのがこのチケットを確保した最大の動機でしたが、予想の何十倍もの収穫のある楽しいショーステージでした。

何せ、オリジナルメンバー4名にゲストメンバー2名(平澤さん、樹里さん)を加えたキャストの皆さん、いずれも実力者揃いです。
その実力派キャストが才能を惜しみなくかつ真剣に、大人のおふざけ、大人のショータイムに注ぎ込んでいるのが、このショーステージの楽しさの最大の秘密だと思います。
とてもわずか2時間25分(うち休憩15分)の上演時間とは思えない密度の高さ、そして鑑賞後の満足感を十二分に堪能することができました。

ショーの内容に少しだけ触れます。
DTFは初見でしたが、ここまで幅広いジャンルをカバーしているとは思いもよりませんでした。もちろんキャストの本来の専門分野であるミュージカルやバレエが基調とはなっていますが、映画、モンティ・パイソンはともかくとして、ちょっと歌舞伎調が入った口上や、宝塚風レビュー、歌謡漫談、モノマネ芸まで取りそろえられていて、実にカラフルです。
バレエやミュージカルの元ネタがもう少し分かっていれば、もっともっと楽しむことができたかも?と自分の無知が口惜しいところではありますが、分からなくても存分に楽しめました。

しかもキャストの皆さん、オリジナル・ゲストの方とも、歌はもちろん、ダンスも極めて美しいのです。そして台詞も皆さん明晰で聴き取りやすい!これ、本当は「やれて当たり前」のことなのかも知れませんが、できていない役者さんもいます(うわ、上から目線)。
きちんとオールマイティーにやるべきことができている人達が、全力でおバカに取り組んでくれるのが素敵ですし、また、各コーナーも、きちんとできる人がプレイしないと笑えない仕組みになっています。
これ、このキャストならできるという前提の下に内容のハードルが高くなっているけど、キャストの皆さんがそのハードルを越えるための力を保ち続けるには相応のエネルギーがいるだろうし、事前のリハーサルも綿密に重ねないとできないだろうな、と考えると、また違う感動が生まれるというものです。

個人的には、吉野さんによる可愛すぎる女装コスプレ、そして某二重人格ソング(笑)の替え歌パロディがツボにはまりました。今でも思い出すとじわじわと笑いが込み上げてきます(^_^;)。
替え歌は、パンフによると元々は市村正親さんのために書かれたそうです。吉野さんは市村さんとはまた個性が異なり、より舞台向けに特化された役者さんだと思うので、実のところ市村さんと同じ、舞台とテレビへの思いに引き裂かれる葛藤、というこの歌のテーマを演じるのはあまり説得力がないように感じました。でも、可笑しいのです。ごく最近パロディ元の舞台を観た者としては、パロディの再現度の高さも相まって爆笑せずにはいられませんでした。
そして、吉野さん、四肢の関節が本当に柔らかい!ジャズ、タップ、バレエ、どんなダンスを踊っていても、この人の関節の可動範囲はどうなってるんだと不思議になるくらい、自在に柔軟にしなやかに動いていて、しかも長い手足の先まで仕草が行き届いていました。東宝さん、もっとこの人に無茶させないで大事にしてあげてください(ぼそ)。

また、歌穂さんの、とにかく全てに鳥肌が立ちました。お笑いにも歌にもダンスにもいかんなく発揮されて、それでいて決して鼻につくことのない実力。上品と下品ギリギリラインの下ネタを演じても全くイヤらしくないのが格好いいのです。

もう1つ、役者さん以外の要素についても、「その衣装、そこまできちんと作っておいて、まさかその一瞬しか使わないの?」というのがいくつもあって驚かされました。いえ、普通のミュージカルでも、ある場面でしか着ない衣装というのは山ほどありますが、この演目だと無駄遣い感がより高いと申しますか(^_^;;)。……でも、こういう無駄遣いは大好きです(^_^)。

オリジナルメンバーの皆さんそれぞれ引く手あまたの実力者であるが故に、今回、オリジナルメンバーがフルで揃うのが数年ぶりだったようで、次もこのフルメンバーでの公演が観られるかどうかは定かではありませんが、時間とチケットさえ確保できれば、是非次回のDTFも観に行きたい、と思います。