日々記 観劇別館

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THE ハプスブルク

今年9月25日の開催初日直前にチラシを見て開催を知って以来、ずっと気になっていましたが、ようやく日曜日に観に行ってきました(公式サイト)。

入場者には有料(500円)でイヤホンガイドが貸してもらえるのですが、そのナレーターがルキーニこと高嶋政宏さん。借りて聞けばネタになるかも?と思いつつ、美術展でこの手の物を利用する習慣がないため結局スルーしてしまいました。
展示順は、
ハプスブルク家肖像画→イタリア絵画→ドイツ絵画→特別出品(明治天皇が1869年にフランツ・ヨーゼフ1世に贈った画帖)→工芸と武具→スペイン絵画→フランドル・オランダ絵画
という順序でした。
展覧会のメインはあくまで「ハプスブルク家が収集したコレクション」だと思うのですが、最も人だかりができていたのはやはり肖像画コーナーのヴィンターハルター画「オーストリア皇妃エリザベート」でした。かく言う私も、あの肖像もポーズもミュージカルのポスター等で散々見慣れている筈なのに、数分間立ち尽くして見とれておりました。
と、隣で見ていた関西弁の女性二人連れのこんな感嘆の声が耳に入りました。
「うゎー、綺麗!うちの寮の○○先輩にくりそつやわー!」
……どんな先輩や。そんな別嬪さんなら一度お会いしたいわ。せやけど性格もシシィにくりそつなら勘弁な。
フランツ・ヨーゼフ1世の肖像も、若い頃と60代頃の2枚程ありましたが、後者のハンガリー人画家ムンカーチ・ミハーイ画「ハンガリーの軍服姿の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世」の描写が、威厳は確かにあるものの、額に刻まれた皺も生々しく、あまりに容赦なし(^_^;)。シシィの絵や、同じコーナーにあった、見るからに賢そうなメラー画「11歳の女帝マリア・テレジア」の例のように、高貴な方の肖像画はやはり野郎より女性の方が華やかで楽しいと思いました。

来場していた若いお姉さん方は、ユディット*1のグロテスクな絵を観て騒いだりしていました。私は露骨なグロ絵は苦手なので、同じ斬首でもクラナッハの「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」ぐらいの表現で結構です。

純粋に絵画として惹かれたのはムリーリョ画「聖家族と幼い洗礼者聖ヨハネ」や「大天使ミカエル」*2、それから、ジョルダーノ画「物乞い」*3や、ベラスケス画「食卓につく貧しい貴族」*4辺りでしょうか。別に貧乏が好きというわけではないのですが。
観ていて切ないのはベラスケス画「白衣の王女マルガリータテレサ」や「皇太子フェリペ・プロスペロ」。幼子の絵は可愛いのだけど、彼らが若くして天に召された結末を知っているだけに、そこに王家のほの暗い闇を敏感に感じ取ってしまうのです。
展示の後半にスペイン絵画やフランドル・オランダ絵画を持ってきたのは正解だと思います。特にフランドル・オランダ。ルーベンスのような宗教画にすら、どこか地に足の付いた明るさがあり、イタリアやドイツの絵画に漂っていた王侯貴族の血の臭いが浄化され、救われたような気がしました。

そして会場出口のショップにて図録などを購っていた所、何と池田理代子画「マリア・テレジア」、「エリザベート(シシィ)」、「マルガリータ」の複製画や絵ハガキが販売されているのを発見。イラストの情報は公式サイトにも載っていたのに、交通アクセスとオンラインチケット購入しか読んでませんでした(^_^;)。流石に複製画は高価すぎて購入は無理なので、絵ハガキを入手(下の写真)。

池田先生の絵柄はマルガリータのような儚げ美少女よりも、マリア・テレジアやシシィのように絶対素直に人の言うことを信じて従うということをしなさそうな、強い目力を放つ美女の方が似合うとは思いますが、3枚とも美しいことには相違ありません。

*1:侵略者アッシリアの将軍ホロフェルネスを騙して酒を飲ませて斬首した、大変度胸のあるユダヤの女

*2:あの柔らかな光とどこか温かみのある人物の眼差しが好きです。

*3:物乞いとは思えぬ知的冷静な眼差し、と思ったらどうも貧乏弁護士のイメージらしいです。

*4:彼らの貧しくも美しい姿にどうも『レ・ミゼラブル』の司教様の晩餐を連想して心が騒ぎます。