日々記 観劇別館

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『エリザベート』感想(2008.12.20ソワレ)※2008.12.21追記あり

エリザベート涼風真世 トート=山口祐一郎 ルイジ・ルキーニ=高嶋政宏 フランツ・ヨーゼフ=石川禅 ゾフィー寿ひずる ルドルフ=伊礼彼方 ルドルフ(少年時代)=田川颯眞

本日観に行ったのはカード会社貸切公演。前回14日に観た時と少年ルドルフに至るまで全く同一キャストでした。ついでに申し上げますと、前回と位置こそ違いますが(今回は下手ブロック)やはり2階席だったので、今日はあまり目新しいことは書けなさそうです。
今回、あまり調子の良くないキャストが多かったように感じられました。涼風さんは微妙に声が伸びず、禅さんも時々声が枯れているように聴こえる箇所がありました。
山口さんも最初から最後までベストコンディションではなく、全体に声をコントロールしまくりで、どこか全開に伸ばせていないように聴こえました。それでもあれだけの声量で聴かせてくれるのが凄い所ですけれど。ほかのお二人ももちろん同様に、他日と比べるようなことをせず単体で観れば十分ベストなお歌だったと思います。
あと、私は気づかなかったのですが、劇場で顔を合わせた友人達によれば、2幕のルドルフの馬車に乗る場面でトートが一瞬けつまずいていたようです。明日の休演日はたっぷりお休みして、残り4回の帝劇公演をぜひご無事に乗り切られますよう祈っています。

でも、例えベストコンディションでなかったとしても、「エリザベート泣かないで」でトートがとても想いを抑えきれない、といった表情で、心を込めて囁くように歌う声は相変わらず艶めかしかったです。
それから、「私が踊る時」の時のトートですが、シシィが自分を見ていない時には泣きそうな実に切ない表情で彼女を見つめているのに、馬車から降りてデュエットする時にはそんな姿は見せず、ひたすらフフンと上から目線で嘲笑うような顔をしているように見えて、なんだか可愛いぞ、と思いました。そう考えると、体操室の微熱の場面で、やっとシシィが自分で命を絶つと言ってくれた!と喜んでがうがうと迫ったら、シシィに追い返される姿に、より一層哀れを誘われるというものです。

そして、涼風シシィ、禅フランツ、伊礼ルドルフの組み合わせで観るのは本日が最後でした。シシィ&フランツのお歌は先ほど書いたとおりベストとは言えなかったものの、それとは無関係に今回の「夜のボート」は、フランツの求めても決して得られないものへの渇望と深い哀しみも、シシィの既に夫から何光年も心が離れているのに何故か隠せない寂しさも、溢れるほどに湛えていて、個人的に今期のエリザ公演でのベストだったと思います。
伊礼くんは、まだ歌声に天然エコーが足りない気はするものの、今日は先週より声量もたっぷり出ていて良かったです。次に彼の歌声を聴く機会がいつになるか定かではありませんが、「ミルク」を見る限りダンスは綺麗だし*1、もっともっと頑張れば、いつか今期の浦井くんみたいに山口さんの誉め言葉をもらえる日も夢ではないぞ、と期待しています。

あと、今日特別に何かあったわけではありませんが、トートの登場する場面以外では、「皇后の勝利」と「マダム・ヴォルフのコレクション」が結構好きです。
「皇后の勝利」ではドスのきいた声で「大司教様は?」と突っ込む寿ゾフィーが、「マダム・ヴォルフ」では、前任の小野さんほどのボリュームはないものの猫っぽくセクシーに踊るヘレネ姉さんこと南海さんがチェックポイント。ヘレネで登場する時のぶりぶりなメイクとドレスには相変わらず馴染めないのですが、南海さん自体は普通に可愛いと思うのです。
余談ですが、先日、現在は伊東弘美さんが演じているマダム役、初演はシルビア・グラブさんが演じてたんだな、とふと思い出し、初演時のライブ盤を聴いてみました。CDに残るシルビアさんの歌声、上手いけどあまり厚みがないように聞こえるので、できれば厚みを増した今の歌声で聴いてみたいと思った次第です。でも高嶋ルキーニが登板している限りは無理でしょうね……。

終演後は、セゾンカードほかの貸切公演ということで、涼風さん&山口さんのご挨拶がありました。涼風さんのご挨拶は普通に真面目だったので省略。以下、山口さんのご挨拶です。例によって記憶力はいい加減なので、あくまで雰囲気をお伝えするということでご了承ください。
「セゾンカード会員の皆様、UCカード会員の皆様、本日はお越しいただきありがとうございました。今日は、セゾンカード会員の皆様、UCカード会員の皆様(何故繰り返す?)、もうすぐクリスマスということで、みんなでクリスマスソングを歌いたいと思います。(ここで客席から大拍手。舞台上でホントに?という感じで顔を見合わせる禅さんほかキャスト一同)……と思いましたが、やっぱりやめておきます。メリークリスマス!そしてハッピーニューイヤー!ありがとうございました!」
こういう文言を、いかにも何か企んでいる笑顔でぬけぬけと口にする、この方の性格のワルさ(笑)が大好きです。エリザの残りのチケットも後1回分となってしまいましたが、しっかり見届けたいと思います。

(2008.12.21追記
感想で、革命〜マイヤーリンクの場面について書き損ねていたので付け足しです。

いつも全体を眺めることにしている革命ダンス、今回はオペラでトートをガン見してみたんですが、ダンスする時の一所懸命でどこか苦しげに歯を食いしばり、身もだえているようにも見える表情に萌えました(^_^)。ルドルフをはめて死に追い込むことが初めからの彼の目的の筈なんですが、実は身を切られるような苦しい行為でもあるのでは?と穿ってみたりして。
そして革命が摘発された後にぼさぼさの髪の毛のままで背中を見せて佇んでいる姿がまた何とも言えず。ちなみに今回はルドルフを投げる時に叫んでなくて残念でした。
「僕はママの鏡だから」の場面の涼風シシィ、本当にこの母親は息子の言うことを全然分かってない、という表情をしていて軽くぞっとさせられました。
マイヤーリンクのキスシーンは、今回はしっかり唇をつけていたように見えました。ピストルも髪に絡まったりしないできちんと渡せてました。
エピローグのシシィへのキスはちゃんとしているようにも寸止めにもどちらにも見えて、よく分かりませんでした。でもシシィを迎え入れる時、トートが実に良い笑顔、言ってみれば神の慈愛の笑顔(死神*2なのに)をしていたので何でも良いです。

*1:1幕のハンガリーの場面にもルドが出ているそうですが、ついに発見できず。伊礼くんのハンガリー青年は後ろで旗持ってちょろちょろ落ち着かないらしいです。

*2:そういえば一応東宝の役名は「黄泉の帝王」だけど、山口さんは一貫して「死神」と言い続けてますね。本来はTod=死なので「死神」で正解なのです。