日々記 観劇別館

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『エリザベート』感想(2008.12.14マチネ)

エリザベート涼風真世 トート=山口祐一郎 ルイジ・ルキーニ=高嶋政宏 フランツ・ヨーゼフ=石川禅 ゾフィー寿ひずる ルドルフ=伊礼彼方 ルドルフ(少年時代)=田川颯眞

本日は『篤姫』が最終回、なのですが、ここ数週間土日は仕事や観劇で不在、平日は本業多忙、が影響して、最終回の2回前から全然ドラマを見られていない状況です。今週中には何とか最終回まで通し見て感想をアップしたいのですが、忘年会だの大きい会議だのがあるので多少苦しいかも知れません……。

取りあえず、本日はエリザのマチネを観てきましたのでレポートです。場合によってはソワレで未だに体験していない武田トートを、と思っていたのですが、前日出勤で体力があまり残っていなかったので断念しました。

というわけで、ここ2回程朝海シシィが続いていましたが、11月3日以来、やっと涼風シシィに再会できました。
ダンス時の立ち居振る舞いなど、朝海シシィの方が優っている面はあるとは思いますが、やはり私は涼風シシィの方が好みです。朝海さんだと「今日はこの場面ではちゃんと歌えるのか?」ばかりが気になって、今イチ物語に入り込めないので……。
座席は2階席D列のサブセンでしたが、帝劇って2階の方が音響が良いように聴こえるのは気のせいでしょうか?台詞や歌詞の一音一音までしっかり聞き取れるように思いました。
実のところ、山口トートが革命ダンスで、ルドルフを投げ飛ばすように舞台の中央に突き飛ばす場面でかけ声を発するという話だけは聞いていたのですが、今までその声を一度も聴き取れたことがありませんでした。しかし本日は「どぉりゃあぁー!」という体育会系なかけ声をしっかり聴き取ることができて満足です(^_^)*1
前回(11月30日)観た時喉の調子があまり良くなさそうだった山口さん、今回は復調されていたようです。「愛のテーマ」「私を燃やす愛」は一音ずつ明瞭に区切って歌っている感じで、前回観た時と少し歌い方が変わっているように聞こえました。
「愛と死の輪舞」も甘く深みのあるいつもの歌声でした。「最後のダンス」で半眼の色っぽい表情で派手な手振りをしながら熱唱する山口トートの姿を見守りつつ、ああ、やっぱりトート閣下は元気に限る、と感慨にふける自分はすっかりこの52歳のオジさんお兄さんにしてやられているに違いありません*2
今回涼風さんの演技で気づいたのは、挙式翌朝の場面で叩き起こされてふくれっ面してる!という点です。一路さんや朝海さんの場合、叩き起こされてゾフィーの前に姿を現した時点では戸惑って訳分かっていないように見えたのですが、涼風さんの場合は初めから「何この人非常識な!」という顔をしてます。しかも自分の要求を拒絶されてパニクるんじゃなくて、あくまで相手が自分の常識の尺度に合わないことに腹を立てていて、最後まで自分に落ち度があるとは微塵も思っていません、この娘(笑)。
そして「私だけに」で歌い上げながら、駄々っ子から自我を持ち戦う女性に急激に変化していく様子を見せていくのが見事でした。涼風さんは、歌なしの演技部分だけでなく、歌でもきちんとメリハリのある演技をしているのが良いです。そんなのミュージカルだから当然だろう、と言われそうですし、流石に「私だけに」のラストの最高音は涼風さんでも多少きつそう、と感じられますけれど、シシィの役は、歌える技術と演じる技術の両方が高くないと成立しないと思っています。

これも今更ですが、1幕でシシィが娘を亡くす場面で、朝海さんは声を出さず、涼風さんは盛大に「いやあぁぁ!」と悲鳴を上げるという違いがあります。トートの「闇が広がる」の導入部の声の歪ませ方はまた極まっていました。
エリザベート泣かないで」でのトートのシシィへの迫り方は、対朝海さんの時と比べてとても静かでした。そんなに強がらないでいい加減こっちにおいでよ、と受け身で誘っている感じ。シシィの拒み方も激しくないけどきっぱり毅然としているように見えました。
そして、トートが羽根ペンを床に投げて突き刺した後(何故いつもきちんと刺さるのか不思議です)、2拍位おいてから「ミルク」の場面に移行するわけですが、個人的には余韻を楽しむためもう4拍おいてもらっても構わないとずっと思ってます。でも「ミルク」で貧しい母親姿で歌い踊りまくる春風ひとみさんや南海まりさん(ヘレネ姉さん)に注目するのは最近のお気に入りです。
1幕ラストの白ドレス涼風さんは、もうすっかりシシィが入り込んでいて全く危なげありませんでした。それと対照的にトートが泣きそうな顔で見守っていたのが印象に残っています。

2幕のハンガリーのパレード場面で、トートが元気にかっ飛ばしてくれるのはやはり嬉しいです。「私が踊る時」も涼風さんとは綺麗にハモり、それぞれのプライドで見事に合戦してくれてました。
ここまで強く誇り高く振る舞い続けるシシィが、精神病院で心をぐらつかされた揚げ句、夫の裏切りを知らされ、それでも毅然と立とうとする根性は素直に凄いと思います。でも体操室の場面では、長椅子に片足を乗せかけて開脚状態で歌うトートのことも「足長っ!細っ!ついでに身体柔らかっ!」と、改めて観察してしまった自分(^_^;)。
ゾフィーの寿さんは申し分なし。彼女のゾフィーには鋼の強さの中に1%の揺らぎが秘められていて素敵です。
少年ルドルフは前回と同じく颯眞くんでしたが、前回より声が澄んで通っていたように聞こえました。
大人ルドルフの伊礼くんも、前回よりは声が通っていたように思います。今回の座席故かも知れませんが、革命を決意する場面で朗々と台詞を響かせていました。でも「闇が広がる(リプライズ)」で声が響かないのはもう仕方ないかな、と諦めてますが(ごめんなさい)。
伊礼くん、噂によれば、Wルドルフトークショーで「山口トートは最近キスしてくれない」と言ってたらしいです。今回(に限りませんけど)、それを頭に入れて気をつけてキスシーンを観てましたが、確かに触れたか触れないか良く分からないタイミングで顔を離してました。何の思惑でそうしてるのか謎です。
ここまで全然禅さんのことを書いてませんでしたが、今日はフランツが出てくる度に同情しながら観ていました。フランツに多少でも思い入れがあり、加えてシシィ、フランツ双方が「歌える」人であれば、「夜のボート」の叙情感がいや増すというものです。
シシィのことが本当に大好きなのに「ママ」と「皇帝であること」の呪縛から抜け出せないが故に彼女に決別され、しかも自分を裏切った息子は分かり合えないまま命を絶つという哀れさ。のみならず「悪夢」でトートがいきなり夢にやってきて身内の不幸を見せつけられて嘲笑われるときたら、いやあ、それは簡単に立ち直れないだろうな、と思いました。また山口トートの嘲笑が心底勝ち誇って名実ともに上から目線なのが何とも言えず。
エピローグのトートは、投げやりでなく自然に死を求めるようになったシシィを、穏やかな笑顔で静かに迎え入れていました。山口トート、やっぱり朝海シシィに対しては攻めの愛、涼風シシィに対しては受け身の愛をテーマにしているのかな?と勝手に解釈しております。

細部の観察力0なので見逃しているだけかもしれませんが、特にトラブルもハプニングもなく、キャストの皆さんも比較的好調な良い公演だったと思います。オケの金管が結構外しまくりだったのが気になった位です。
そのためか、カーテンコールの客席の反応も割と良好でした。いつもの叫びオバさん(前回もいらっしゃいました)も盛大に叫んでましたが(泣)。本日はソワレもあったので時間も押していたと思いますが、最後のシシィ&トートの2人カーテンコールもしっかり2度あり、大満足でした。体力消耗気味でしたが充填された気持ち*3で、頑張って行って良かったです、本当に。

*1:トートとしてそのかけ声がよろしいかどうかは議論があるかと思いますが。

*2:真剣な話、好き嫌いが分かれるらしいあの手振りが気になったことはほとんどないのです。

*3:あくまで気持ち。帰宅後は2時間程倒れて寝てました(^_^;)。