日々記 観劇別館

観劇(主にミュージカル)の感想ブログです。はてなダイアリーから移行しました。

『エリザベート』感想(2008.11.29ソワレ)

エリザベート朝海ひかる トート=山口祐一郎 ルイジ・ルキーニ=高嶋政宏 フランツ・ヨーゼフ=石川禅 ゾフィー初風諄 ルドルフ=伊礼彼方 ルドルフ(少年時代)=太田力斗

金曜日は出張し、夜まで用事があったのでそのまま現地にお泊まり。土曜日は帝劇でエリザのソワレ観劇。そして日曜日もエリザのソワレを観る予定。……我ながら何やってるんだ、って感じです。
2日連続朝海シシィでチケットを取ってしまったので、当初どちらかを譲渡掲示板にでも出すつもりでしたが、29日はファンクラブで取ってもらった1Fのやや後方ながらもS席のど真ん中。一方30日は2F席ですが今期あまり確保できていない浦井ルドルフ。結局どちらも捨てられず今日まで来てしまいました。

というわけで、11月29日の『エリザベート』感想です。これを書き終えたのは30日の朝でして、はてなダイアリーでは投稿時刻を偽装できないので29日午前の投稿のように見えてしまいますが、観たのは29日ソワレです。
全体としては、誰もどこも間違えなかったし、特にハプニング等なく終わったように思いますが、例によって観察力も記憶力も薄いのでその辺は自信がありません。

山口トートは朝海シシィが相手だと、歌で勝負にならない相手だからなのか(暴言)、心なしか涼風さんと組んだ時の3割増し位、獣のように挑みかかっているように見受けられます*1
「最後のダンス」の時に階段の上で激しく仰け反りながら歌う力強い迫りっぷり。「エリザベート泣かないで」の艶っぽく囁く歌声。そしてルドルフの葬儀でシシィを突き放す場面の何かを懸命に堪える表情に至るまで、シシィへの執着を強く見せつけ続けてくれました。ラストでシシィを迎える時の表情は優しいのですが、長い間注ぎ続けた情熱からようやく解放されてほっとしている様にも見えました。
あと、獣とはちょっと違いますが、1幕の「闇が広がる」が短いフレーズなのに実はたっぷりと様々な技巧が凝らされているということに、初めてエリザを観てから3年経った今日、やっと気づきました。歌い出しは本当に泣いているような震え声なのに(日によって全然震えていない時もあります)、徐々にシシィに死という避けられない運命(=トート自身)を諦めて受け入れよと諭すような語りかけに変わり、でも最後はシシィの運命を告げ威圧して去っていくのです。この場面の山口トートは、母親のエゴの犠牲者である幼女の死に対し一貫して冷徹である、と勝手に思い込んでましたが、決してそれだけではなかったようです。
革命場面のダンスでは力強く動いていました。決して踊れないわけじゃないのです。直前のルドルフを乗せた馬車の御者の鞭捌き所作も格好良く決まってるし。ただ、ダンスになると手足がぶんぶんするというだけで(^_^;)。
死のキスは対ルドルフ、対シシィともに本日は客席に対し横顔が斜めになっていて、口元が見えませんでした。あれも客席への見せ方など毎日何らかの模索をしているんでしょうね。

禅さんのフランツは8月以来の再会でした。登場場面でのぴっかぴかの若作りも相変わらず凄かったんですが、とにかくシシィの美しさの虜になっているのが分かりやすいフランツでした。結婚式では溢れる嬉しさを隠しきれない様子だし、1幕ラストなんて本当に妻を取り戻すことしか頭にない感じで、今季綜馬さんのフランツより好きかも、と思いました。「悪夢」で妻の避けられぬ運命を知らされた後に、ガラス玉のように虚ろな瞳を見せているのがツボです。
ゾフィーは前から繰り返しているように寿ゾフィーの方が猛々しくて、流石シシィの伯母(母親の異母姉)なだけはある、と思えて好きなのですが、初風さんのゾフィーの懸命に背筋を伸ばしてお家を守るために鬼であろうとする人物像にも好感が持てました。

伊礼くんは9日に観た時より歌が弱かった様に見えました。闇が広がるのルドルフパートの出だしから声が全く出ておらず、サビでもトートとのハモりが成立せずじまい。疲れが出てきたのかも知れません。それでも終演後のロビーで、彼が立派に王子様を演じている!と成長ぶりを心から喜んでいるファン(テニプリミュージカルからのファン?)の声が聞こえてきました。まだまだガンバレ伊礼くん。
少年ルドルフは前回に引き続き太田くん。何故かこの子がプロローグに登場しただけで胸が締め付けられる思いになるのは、あの儚げな声がいけないのだと思います。死(トート)と常に隣り合わせな感じが良く伝わってくるルドルフです。山口トートが幼い彼を今すぐにでもひねり潰したい衝動に駆られながらもそうしないのは、彼を死の意志に導くプランには大人になってから彼自身の意志で乗ってもらいたいから、というのもあるのでしょうけれど、どこかに何%かは幼子を哀れと思う気持ちがあったと思いたいです。

そして私の最大の関門、朝海シシィ。歌い方には大概慣れてきましたが高音がひっくり返るのはやはり気になります。「私だけに」は前に聴いたときよりは日本語として成立していましたが、ラストのフレーズでやっぱり高い音を出し切れていませんでした。
「私が踊る時」ではクライマックスで全然声が伸びていかず、舞台には山口トートの声ばかりが響いてました*2。これは友人の受け売りとなりますが、観客として頭の中で「『私が踊る時』のこのフレーズならこう歌って欲しい」等と無意識に拵えているイメージを、この人の口から出てくるフレーズは声の出し方から強弱から微妙に裏切ってくれているのがどうも引っかかります。
「夜のボート」でもきちんと最後まで歌えるのかが気になって落ち着いて聴けず……(T-T)。精神病院の場面やルドルフの葬儀場面での歌は割と普通に歌えていたのですが、あれは得意な音域だったからでしょうか?
30日も含めてあと2回朝海さんで観る予定ですが、彼女の演技や体技は決して嫌いではないし、前述のように山口さんの演技が結構楽しいので、多分頑張れると思います。

シシィが棺桶に入ると「ああ、私のエリザ*3が今日も終わってしまった」と一瞬だけ泣きたい気持ちになりました。でも、カーテンコールで役者さん方が順々に挨拶をされて、山口さんが登場して端正なお辞儀をされる姿を見ると、ありがとう!また来るからね!とあっという間に日常に戻ることができたのは不思議です。
通常の全員でのカテコが3回ぐらいあった後に、にシシィ&トート2人のカテコは2回ぐらいあったと思います。2人で他メンバーを呼び寄せるパターンは今回はありませんでした。

*1:実は帝劇で休憩時間に「あれはエロオヤジだよねー」という感想が聞こえてきて、笑いを堪えるのに必死だったんですが、もうちょっと綺麗にまとめてみました。

*2:もちろん山口さんは抑えて歌っていると思うのですが。

*3:こう書くと「あたしのガンダム」(by ニナ・パープルトン)みたいでちょっとイヤ。