日々記 観劇別館

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『篤姫』第37回

今回は久光様、ついに天璋院とご対面、でした。久光様が刀による脅迫という汚い手段を使って幕府の権威を脅かす政治改革(文久の改革)を押し進めたこと、また、攘夷は無理と知りながら本音を偽って朝廷に取り入ったことで、どうしても天璋院は彼を許せないのですね。見ている間、山口さんのとんかつの例え話が頭に浮かんできて仕方ありませんでした。井伊大老の時とは逆に、「攘夷は無理」という認識は一致しているし、それにかたや兄の、かたや夫の遺言を背負って戦っているという点では一緒なのに。
あと、この場面では、内心は気を張りまくっていると思うのに、大人の余裕を装って天璋院の責めの言葉に巧みに切り返し、クールに受け流す久光様の態度が実に黒くて良かったです。あの悪そうな冷たい目と、とても西郷を怒鳴りつけた時にコロレド猊下声を発したのと同じ人物とは思えない、黒さ全開の囁き声がまた良し(^_^)。その一方で対面終了後、天璋院様は最早薩摩の味方にはなってくれないようだ、と帯刀に嘆く姿を、そりゃこんな強引で直球勝負ではない手段を取ってたら無理だろ、と突っ込みつつ見てました。
久光様と大久保、根っこの部分は人間味溢れるのだけど、やると決めたら手段を選ばない冷徹さが共通していて、帯刀がのちに人的ネットワーク作りで諸方面の信頼を得ていくのとは対照的だと思いました。

それにしても勝さんは美味しい所を持っていってますね。幕政改革をやり遂げなければならないことは分かっているけれど、手段を選ばない久光様達のやり方に違和感を覚える帯刀の肩をがっしり支えてくれるような、そんな役どころです。
帯刀は、更に天璋院と再会し、碁盤を前に本音を語り合うことで、自分の思いの正しさを確信し、進むべき道を見出せたのでしょうか。囲碁の対局の勝ち負けで帯刀の心の成長を見せるという演出が心憎いです。この2人の再会は、今回が最後ではないのかな?もう一度出会うとすれば、それはどこになるのか?というのが気になります。
江戸を離れる駕籠の中ですっかりくたびれている久光様の表情が萌え、と思う間もなく、終盤であの「生麦事件」が起きてしまいました。例え下級藩士の判断で為されたこととしても、この時局下で一番してはならないこと=異人殺しをやってしまったあ!と呆然とする大久保や帯刀の表情が印象的でした。この事件が薩英戦争につながる、ということになりますが、次回はまず家茂の上洛という主人公サイドの大イベントが控えているので、すぐに薩英戦争のエピソードには進まないようです。
今回の話で、和宮が、薩摩が黒幕とは言え朝廷の勅使の行動により幕府に迷惑をかけた、と天璋院に詫び、心の底の揺れを封印して進んで故郷と敵対しようとする天璋院の心を察するように、故郷は簡単に捨てられるものではない、と語りかける場面があって、2人の心が少し近づいたのかな?とも思いましたが、来週は家茂の上洛を巡ってまた対立してしまうようなので、そちらの展開も気になる所です(いや、こっちが本筋なのですが)。