日々記 観劇別館

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『篤姫』第36回

今回の『篤姫』は珍しく、18:00からのBSハイビジョンで鑑賞いたしました。いつもは20:00からアナログ放送で見ることが多いのですが。
今週のテーマは多分「信頼」。結構物語の激しい展開がありました。
自分の命令を聞かず独断で行動する西郷に顔をしかめて激昂する久光様の美声を聴いて、「あ、コロレド猊下声だ!」とまたまた小躍り。でも言ってることは「西郷を即刻島流しとせよ」という冷酷な命令なんですが……(^_^;)。
大坂で西郷に久光様の命令を伝え、島で生き抜いて薩摩のために働ける日を待て、と語りかけて抱き締める大久保を、つくづく鬼になり切れない人だよなあ、と思いながら見ていました。しかし、前の主君が素晴らしすぎたが故に、新しい主君に仕えることを心が拒んでしまうという西郷の気持ちは分かるけど、久光様には辛いことですね。

やっと京に入って建白書を手に朝廷入りして岩倉卿に会い、帝あてに幕政改革の提言を行うも、京の市中警護こそ許されたものの提言は一笑に付され、久光様、瞳をキラキラさせながら困惑。
その建白書の内容が幕府の耳にも入り、すっかり薩摩の回し者扱いで大奥で大姑の本寿院サイドからも嫁の和宮サイドからも総攻撃される天璋院の図は、見ていてかなり気が重くなるものでした。しかも滝山がクールに指摘したとおり、薩摩の行動は外様にあるまじきものだという事実は否定できないわけですし。

そして有馬達が寺田屋で公家衆の襲撃を密議していると聞きつけ、説得に出向く大久保ですが、受け入れられず。
「首謀者をここへ連れて参れ!」と美声を張り上げて力ずくでの説得交渉を命ずる久光様ですが、何故か帯刀と大久保は説得隊に加えず残します。交渉が決裂することを見越しての判断だったのか、あるいは後に明かされる真の有馬の思いをどこかで察していたのかは良く分かりませんが、結局交渉は決裂して斬り合いとなり、有馬は自らかつての仲間の刃を受けて倒れます。
結果的に「京の市中警護の役割を見事果たした」薩摩の京における地位は向上。
久光様は帯刀が示そうとした犠牲者の名簿を「見とうない」と目を瞑って拒否し、「あの者達の突出は幸いであった。薩摩の覚悟の程を朝廷にお示しすることができた故じゃ」と言い放ちます。この久光様が目を瞑って感情を抑える表情は度々出てきていますが、抑えられる感情は、時に怒り、時に哀しみ、と全く異なるものであり、実は奥の深い表情だと思っております。
主君の一見あんまりな態度を目にして不信感を露わにする帯刀でしたが、これに対し大久保は、有馬が寺田屋に書き残した遺書の存在を明らかにし、全てが有馬の計算の上での覚悟の行動であったと知らせます。真実を知った帯刀は自らの不明を恥じて、再び久光様への忠義心を取り戻すことができました。
その場面に、1人ひっそりと有馬の遺書を抱き締めて(手のアップが綺麗!)、「許せ……!」と身体を震わせ涙を堪える久光様の姿が挿入されました。
この人もまた、「人を信じられぬ」とかうそぶいて、実際自分を信じない西郷には容赦ない仕打ちを加えているのだけど、決して冷酷にはなり切れない人なのだと思いました。加えて、「人を信じない」者に取って、藩士達の捨て身の忠誠がいかに重い意味を持っていたことだろう、と。史実の島津久光の人物像については漠然と、西郷との不仲の話などであまり良い印象は持っていなかったのですが、演じる山口さんならずとも、このドラマで彼に対する見方が少し変わりそうです。

開国に反対したことによる謹慎を解かれた松平春嶽一橋慶喜も、外様と侮っていた薩摩が着実に力を蓄えていくことに脅威を覚えます。
そして、少女の頃に面識のあった有馬の死を嘆く間もなく、薩摩が朝廷の勅使とともに江戸に上ることを知る天璋院
朝廷の人間である自分を差し置いて勅使が薩摩の兵とともに江戸に上ることを知り、家茂に向かって天璋院への不信感を露わにする和宮
老中達からも責められるに及んで、つい天璋院に過去の慶喜擁立の一件まで持ち出して不信の言葉を投げかけてしまう家茂を見て、若いよなあ、と思いましたが、それに対して天璋院が取った行動というのは、自分が薩摩から持参した書物、白薩摩、薩摩切子等、思い出の品々を次々と庭で炎にくべて、幕府への忠誠を誓うことでした。そして幾島の残した掛け軸までも燃やそうとした時、家茂が止めに入り、母上を信じる、と告げます。
和宮は基本的にポーカーフェイスなのだけど、今回の天璋院の行動できっと、自分より格下なのにむやみに噛みついてくる相手としか見ていなかった姑の「女の一本道」という言葉の意味の一端を理解したのではないかな、と思っています。

しかし、来週は「天璋院と帯刀の7年ぶりの再会」ということですが、天璋院が嫁いでからまだそれしか経っていないというのは結構意外です。あと、今回の薩摩が随行しての勅使江戸入りにより引き起こされる幕政改革が「文久の改革」だということを、高校で日本史を取っていた癖に私はすっかり記憶喪失していました(^_^;)。で、この江戸入りの帰路に起きるのが生麦事件。「新選組!」以来、久しぶりに大河ドラマを見ながら幕末史のおさらいをしています。