日々記 観劇別館

観劇(主にミュージカル)の感想ブログです。はてなダイアリーから移行しました。

『ベガーズ・オペラ』(2008.3.23マチネ)

マクヒース=内野聖陽 ピーチャム=橋本さとし ミセス・ピーチャム/ダイアナ・トレイプス=森公美子 ポリー・ピーチャム=笹本玲奈 ロキット=村井國夫 ルーシー・ロキット=島田歌穂 フィルチ=原田優一 「やってこい」=小此木麻里  老役者=近藤洋介

2週間ぶりのベガーズは、高嶋ベガーが放浪の旅に出たということで、さとしさんのベガー・トムがピーチャムに、原田くんのベガー・ノエルがフィルチに役替わりしてました。
フィルチはさとしさんが演じてた時は、いい歳なのに情けない男、というイメージでしたが、原田フィルチは情けないというよりも、若さ故に目先の利益しか見えておらず、結果として周りに振り回されてばかりの小悪党、といった感じでした。
そしてさとしさんのピーチャムは意外にどす黒さがなくて、とてもドライな感じでした。ついでに娘に対する父性愛もほとんどなくて(高嶋ピーチャムにもそんなものはありませんでしたけど)、かなりエゴイスティックなピーチャムです。

1幕と2幕の間の休憩時間。先日開演から終演までずっと座席に座りっぱなしでいたら全身筋肉痛になったこともあり、まあ、今回はベガーの皆さんへの施し物もないし、とトイレに立ち、ついでに1階席の外のエスカレーター椅子でお弁当を食べていた所、隣に座っていたオバちゃん達にベガーさん(アンサンブルの方)が、「パンフ買ってくれたー?買ったのー?……嘘つきぃ(笑)」と声をかけ、周囲の爆笑の渦に包まれつつ2階席行きのエスカレーターを上っていきました。というわけでベガー達はちゃんと客席外でもお仕事してるということが判明いたしました。
座席(1階後列上手通路寄り)に戻ると間もなくモリクミベガーが姿を現しました。同じ列の方が走り出て何か施し物を手渡した所、モリクミベガー、荷物が多すぎて持ちきれなかったようで、その方に手持ちの別の袋に入れて欲しいとお願いしてました。
そして2幕開演間際。「遅れちゃうよー!」と叫びながら客席に走り込む麻里ベガーが本日の収穫を何か落っことし、後ろから別のベガーさんが「落としたよー!」と叫びながら一所懸命追いかけていきました。また、客席から舞台に昇って戻る際、アンサンブルさん(独眼竜風カブト姿の方)が大きい音をたてて素で転んでしまい、客席爆笑。さとしベガー、思い切り「何やってるのー!」とツッコミを入れ、「はーい、リセットー!」と力業で観客を本編に戻していました。

そして2幕。原田くんがフィルチになることで、じゃあ、2幕の「もってこい」のソロは誰が歌うの?と疑問でしたが、そのままフィルチが引き継いで歌っていて嬉しかったです。やっぱり美声だわ……。
中盤の牢獄シーン、特にピーチャムと牢番ロキットのやり取りは、実のところ私には退屈な場面です。まあ、このシーンを境にピーチャムがマクヒースを処刑台送りにする目的が、遺産目当ての欲得と打算から、共闘しつつも化かし合うキツネとタヌキの関係にあるロキットに対する「男の意地」に変質するように思えるので、多分大事な場面なんだろうけど、眠いものは眠いのです。2幕はマクヒースと戯れる娼婦達や、ルーシーとポリーのガチンコ勝負など、女性の強さが際だつ場でもあるので、ますます男達の争いがつまらなく見えるのかも知れません。

3幕は、仕方がないのですが、中途半端にピーチャムがいなくなってしまうのが肩すかしを食らった感じでした。まあ、私的にはさとしさんはピーチャムよりトムの姿の方が似合うと思うので、良いのですけれど。
再び原田くんについて。「もってこい」の衣装が可愛かったのに、今回見られないのは寂しいなあ、と思っていたら、3幕の「やってこい」と牢獄にぶちこまれている場面では帽子にコート姿で、「もってこい」風衣装に戻ってました。ただ、直後の縛り首の場面では再びフィルチの格好をしていたので、恐らくお召し替えは上着だけであったと思われます。

今回はカーテンコールで役者さん方がSS席最前列の観客を引っ張り出して、手をつないで一緒にバンザイポーズをしてました。お客さん、リピーターで慣れている人は良いけれど、もし初観劇の人がいたらさぞかし驚いたんじゃないか?と余計な心配をしたりして(^_^;)。
かといってSS席の方ばかりが美味しかったかというと決してそうではなく、前述のとおりベガー達(に扮した役者さん達)がこまめに客席の隅々まで出没してくれていて、まんべんなく楽しめるようになっていたと思います。
最後に、このお芝居には日生劇場という大きすぎず小さすぎない小屋の空間がとても合っていると感じました。少なくとも帝劇向きではないな、と。大阪公演の小屋は梅田芸術劇場だったそうですが、広すぎやしなかっただろうか?と疑問です。