日々記 観劇別館

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『ウェディング・シンガー』感想(2008/2/16マチネ)

ロビー・ハート=井上芳雄 ジュリア=上原多香子 ホリー=樹里咲穂 グレン=大澄賢也 アンジーちあきしん リンダ=徳垣友子 ジョージ=新納慎也 ロージー初風諄 サミー=鈴木綜馬

ウェディング・シンガー』と『ファントム』をマチソワしてきました。
まずは『ウェディング―』の感想から。
結婚式当日に新婦に捨てられたウェディング・シンガー(結婚式場のバンドマン(司会役も兼ねる))のロビーと、青年実業家との結婚を控えた式場の同僚のウェイトレスジュリアとのアメリカンラブコメ、別の言い方をすれば、バカ純情でアホタレな主人公が、主人公よりはちょっと大人だけど同じくアホタレな仲間達の手助けでハッピーエンドを迎えるまでの珍騒動、といったストーリーを説明するのもバカバカしい内容で、とにかくはじめから最後まで笑わせられた舞台でした。

キャストの中では、1幕の樹里さん(サミーの元彼女ホリー。ロビーにもモーションをかける)と2幕の初風さん(ロビーのおばあちゃんロージー。色々と若さ現役)に驚かされました。樹里さんは大変キュートでセクシーでスタイルも綺麗でした。1幕のラスト、ロビーに逃げられた後に樹里さんがへそ出し超ミニの衣装のままでディスコのお立ち台の上に仰向けに横たわり、そこに天井から滝のように水がザバーッと降り注いでくる演出にただ呆然。そこだけロックコンサートのステージのようになっていました。
初風さんの一見上品で優しい老婦人だが実は……なキャラクターも衝撃でしたが、何と言っても度肝を抜かれたのは2幕で新納さんとデュエットしたラップ。実力派の底力を見た気がしました。サングラスをかけて、途中でブレイクダンスまで踊って(そこだけはいくら何でもダンサーの吹き替えでしたが)、ちょっと過激だけど今はおじいちゃん一筋の可愛いおばあちゃんでした。
綜馬さんのサミーはある程度予想していた範囲内ではあったけど、いかにも何日も風呂に入ってなさそうなギタリストぶりで笑わせてくれました。1幕のディスコでホリーがロビーに迫る場面で、サミーが隣の椅子でやきもきしてムキー!となってみたり、ホリー達に近寄ってみたり、ついにはやってられないとお店を立ち去るまでの小芝居がむやみにおかしくて気になって仕方なく、おかげでその場面、ロビーとホリーの動きをほとんど覚えてないです(笑)。グレンとジュリア?いたっけ?状態。
色々あったけど、このバカはやっぱり私じゃないとダメなのよ、的なノリでホリーが折れてサミーを選ぶ場面でも笑わせてもらいました。撮影禁止でさえなければ、あの2人がお揃いTシャツで並ぶ瞬間の姿だけ写真に残しておきたかったぐらいです。
しかしサミーってば、地獄のようなバーガーキングバイト生活から脱出したとは言え、よくクレジットカードを持ってたな、とそこは突っ込んでおきたいと思います。あのカード代をロビーがちゃんと返したのかとか、そういう所は深く考えないことにします。
新納さんのジョージは美しかったです。設定上、彼はどうしても恋愛では蚊帳の外になってしまうわけですが、その代わり、例のラップシーンからカテコに至るまで随所で初風さんを優しくエスコートしていて、その様子が大変に可愛いと思いました。
上原さんは時々歌の節回しが甘ったるく聞こえるのが気になりましたが、意外と歌えていたと思います。流石元沖縄アクターだけあってダンスもちゃんとこなしていました。
大澄さんは最後アメリカの名士(偽)達からさんざんな目に遭わされる役回りでしたが、バブリーな投資家に見事になり切っていました。本領であるダンスシーンももちろん格好良かったのだけど、おおっ!と思ったのは舞台での姿勢が背筋がぴんと伸びていてとても美しかったこと(前に大澄さんを観た『タイタニック』ではダンスシーンも無くとっとと逃げちゃう役だったので気づかず。)。新納さんや綜馬さんもそうなんですが、これぞ鍛えられた舞台人の筋肉、という感じでした。
そして主演の井上くん。コメディで観るのは『ミー&マイガール』以来でしたが、バカやってても実は色々考えてる男の子だったミーマイの時とはまた違って、『ウェディング―』では最初から最後まであほのこな役でした。もっとも、クライマックスではきっちり決めてくれていました。公式ブログのメイキングレポで井上くんがアコースティックギターのレッスンを受ける様子が出ていましたが、おお、こういうことだったのか!と膝を打ちました。
なお、前宣ポスター等で物議を醸した(?)リーゼントは、実際の舞台ではおとなしめでした。
にしてもあんな純情バカのロビーが、そもそも何でリンダなんかと付き合ってたのかはストーリー上最大の謎です。やはりリンダが魔性の女だったってことでしょうか。それとも気にするだけ野暮?

最後にパンフレットでのコメントについて。井上くんはディナーショー形式で自分の結婚式をやりたいそうですが、パンフ収録の座談会(鈴木・大澄・新納・井上)でそのことに進行役が言及して綜馬さんと新納さんにドン引きされた上、
「僕は、井上君がやりたいようなのを、バーンと思う存分やっちゃいましたからねえ」
と大澄さんに落とされていました。流石にその後では、
「やらなくていいなら、それでもいいと思う」
とトーンダウンしてましたけど。誰も止めなければ本当にやるんじゃないかという気がとてもしているんですが、いいのか?と一応心配するふりをしてみました。