日々記 観劇別館

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『ウェディング・シンガー』感想(2013.3.3マチネ)

キャスト:
ロビー=井上芳雄 ジュリア=高橋愛 サミー=吉野圭吾 ジョージ=新納慎也 ホリー=彩吹真央 グレン=大澄賢也 ロージー初風諄

お久しぶりです。1月に『シラノ』を観て以降、レミゼショックもあってめっきり観劇から遠ざかっていましたが、久々にリハビリ的に、シアタークリエで3月1日から再々演中の『ウェディング・シンガー』を観に行ってまいりました。

以下、若干ネタバレありの感想です。

ウェディング・シンガー』、私的にはかなり不思議な演目です。
ストーリーはキャスト一同がおバカをやっているうちに気づいたらハッピーエンドになっているし、お下劣ネタは多いし、演出は枝葉を盛り立てて飾るのには熱心だけど、全体を貫いて観客を感動に導く一本筋の通った美学みたいなものはイマイチ充実していないし、と書き出してみてもキャストの豪華さ以外にあまり良い所がないのに(すみません(^_^;))、どこかに「また食べてもいいかな?」と思わせる軽い中毒性が潜んでいるように思います。私、初演以来何年も観ていなかったのに、何故、馬鹿言ってんじゃねぇ〜!♪とか、ゴミ溜めに帰る〜♪とか、しょうもないフレーズばかり覚えているのでしょう(笑)。
今回驚かされたのは、初演、再演の鈴木綜馬さんに代わってロビーのバンド仲間のベーシスト「サミー」を演じた吉野さんでした。むさ苦しく野暮ったくて出腹で、でも気の良い兄貴分だったのは綜馬サミー。対する吉野サミーは、第1印象が「や、山口トート!?」でした。もちろん歌い出すと全く違いますが(失礼)、長い金髪に軽くビジュアル系が入ったメイクで決められると、かなりやばいです。キーボーディストの新納ジョージも初演時から美しさがグレードアップしていて、サミーとジョージの並びはかなり煌びやかな目の保養でした。返す返すも、当日オペラグラスを忘れたのが残念でなりません。
ちなみに吉野サミーのキャラクターは、正に「残念なイケメン」。美しいのにあんなにおバカで、発言や振る舞いが色々残念な上、しかもステージ以外での服装センスが微妙、という男性はある種の女性の保護意識をかき立てそうですが、元気溌剌なお姉様ホリーにはダメだったんでしょうね……。
ホリーも初演、再演の樹里咲穂さんから彩吹さんに交替です。彩吹ホリー、綺麗に割れた腹筋が衝撃でした。樹里ホリーよりコケティッシュ度は若干下がったようにも思いましたが、さばさばした漢らしさと直情径行が身上!のようなお姉様を元気に演じられていました。
腐れ縁な大人のカップルが2幕で思い切り開き直って弾けて、より一層結びつきを強めていく雰囲気は、綜馬・樹里ペアの方が色濃かったように思います。例の「馬鹿」Tシャツの場面など、吉野・彩吹ペアにももう少し弾けてほしい所です。ただ、お2人の高い身体能力を活かしたアクションは見どころの1つになっています。確か空港からラスベガスにロビーを送り出す場面だったと思いますが、吉野サミーがさりげなく彩吹ホリーを右腕のみでお姫様抱っこしており、左手をぶらぶらさせながら上手へと退場していく姿には心底驚かされました。
高橋ジュリアは、前回までの上原ジュリアより歌えていたと思います。もっともジュリアのナンバーには、ザ・ミュージカル的な曲調のものよりもポップス調のものが多いので、そう感じたのかも知れません。
そして井上ロビー。初演の時よりも随分落ち着いちゃったなあ、とも感じましたが、同時に彼に任せておけば大丈夫、的な安心感も増したように見えます。今回、ロビーに対するサミーとジョージの位置付けが、以前のちょっと兄貴分として見守る関係から、対等にぶつかり合って泣いて笑う関係に変わっていましたが、井上くんの成長に合わせた良い変更だったと思います。
あと、個人的にこの演目の2大見せ場は、2幕序盤の大澄グレン率いるマネーゲームな群舞と、金婚式で初風ロージー(おばあちゃん)がジョージのキーボード演奏に乗せて、あの美声でノリノリでラップを歌いまくる場面だと思っているわけですが、今回もこれらの場面は非常に楽しかったです。そしてグレンが投資対象にニューコークを選んでスターバックスを切り捨ててしまう場面が、彼の未来を示唆しているように見えて非常に可哀想で……と、そんなことを気にしているのは自分だけかも知れませんが(^_^;)。グレン、友達としても結婚相手としてもかなり残念な人物なのに、あのお金のニオイの中で実に楽しそうに過ごしているさまが何だか憎めないんですよね……。
今回でこの演目は「ファイナル・ステージ」だそうです。観られなくなってもそんなに困りませんが、日本でしばらく観られなくなると思うと寂しさが込み上げてくるようにも思います。やっぱり不思議な演目です。