日々記 観劇別館

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NHKドラマ『極北ラプソディ』感想(2013.3.19〜20放映)

また前回の更新から間が空いてしまいました。標記のドラマの感想を書くのは義務だと思いつつ、サボっているうちに本業がそれどころではなくなり、気づいたら10日経ってしまいましたが、少しだけ書き記しておきます。

実は海堂尊さんの原作は未読なのですが、Wikipediaの記述や聞こえてきた話によると、ストーリーや人物設定はかなり小説と異なるようです。
実際、今中先生と、原作には存在しないらしい彼女・梢さんの恋愛話にかなり時間が割かれており、もちろん瑛太さんと加藤あいさん演じる2人の窓辺での散髪シーン(彼女は美容師の設定)に象徴される、温かな視点の恋愛描写も素晴らしかったのですが、もう少しだけ長く、主題である「地域医療の甘くない現実」のハードな噛み応えを味わいたかったという思いも否めません。

このドラマ、少なくとも半年以上の時間軸で話が進んでいるのに、何だか秋っぽい場面が多いぞ、とか、桜の苗木を植えるのに無理やり根雪を掘らなくても、とかの小さいツッコミ所はいくつかありましたが、それはさておき(^_^;)。
全体に、せっかくテーマを語るにふさわしいエピソードや人物がたくさんいるのに、しかもそれらが上手く料理されているのに、75分全2回の放送では短すぎると思いました。市民病院の醜聞報道に繋がる、元テナルディエな徳井優さん演じる問題患者のエピソードももう少し突っ込んで欲しかったですし、梢さんのおじいちゃん(高橋昌也さん)の人間味ももっと堪能したかった……と欲を言えば切りがないです。
それでも、市民病院院長である世良先生(小林薫さん)の、腹を括り悪役と見られても致し方のない毅然とした態度で難局に臨む姿勢は渋い輝きを放っていました。梢さんとの「生き別れの父子」の物語がなくても、今中先生に見せる先輩医師としての背中や、昔なじみの速水先生(山口祐一郎さん!)との部屋飲み場面で見せる心を許した表情だけで十分に、世良先生の男としての、そして人間としての厚みは伝わってくると思うのですが、ああした肉親の情にまつわる話がないとテレビドラマとしては作りづらかったのだろうか?と少々首を捻っています。

原作の速水先生はドクターヘリには乗らないらしいです。しかしドラマでは1回だけながら乗っていました。世良先生に対し「高所恐怖症だから普段は乗らない」と語る場面がありましたが、さて、原作ではどういう事情なのでしょう。
ドラマ前篇での出番はほぼこのドクターヘリのシーンのみでした。その代わり、後篇では大活躍。チュッパチャプスは舐めまくるわ、マッサージ機に当たって妙に色っぽく悶えるわ、救命にしては微妙に弱そうな心臓マッサージを行うわと、本筋に関係ない部分でも細かい見せ場がいくつかありました。すみません、実は消防署の救命講習会を受けたことがあり、その時の「心臓マッサージは、肋骨が折れても良いと思って強く押してください」という消防士さんの言葉と、それでも強く押すのに四苦八苦した記憶が鮮明に残っているもので(^_^;)。
大きい見せ場の1つは、前述の世良先生との部屋飲み場面。お2人とも実にいい表情で向き合われていて、この2人の場面をもっと見たいのに、やっぱりこのドラマの尺は短すぎる!とテレビの前で1人悔しがっていました。
もう1つは、市民病院から自分の救急救命センターに出向中の今中先生をセンターに転籍させてくれ、と世良先生に願い出た後に今中先生本人にもその意志を告げ、
「で?お前はオレに何を訊きたいんだ?」
と問う場面。その直後に起きた事件をきっかけに今中先生の意志は固まるわけですが、速水先生は上の台詞を発した時には恐らく、今中先生の本心を察しているのだろう、という含みのある表情で、これにはちょっぴり切なさを覚えました。しかも今中先生が市民病院に復帰してからは登場しない速水先生……。最後にもう1カットぐらい、相変わらず救急医療に励んでいる速水先生を見たかったように思います。

そしてこのドラマが終わってしまった以上、またしばらくの間、山口さんのお姿を見る機会はないと思われます。ああ、寂しい現実。
ということで、今後数ヶ月間、月一程度で観劇の予定は入れてありますが、また何かきっかけがない限りは少しの間地下に潜る予定です。どうかまた、気持ちがわくわくするような素敵な報せに巡り会えますように。