日々記 観劇別館

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『ダンス・オブ・ヴァンパイア』帝劇初日感想(2019.11.5 18:00開演)

キャスト:
クロロック伯爵=山口祐一郎 アルフレート=相葉裕樹 サラ=神田沙也加 アブロンシウス教授=石川禅 ヘルベルト=植原卓也 シャガール=コング桑田 レベッカ阿知波悟美 マグダ=大塚千弘 クコール=駒田一  ヴァンパイア・ダンサー=森山開次

2019年版『ダンス・オブ・ヴァンパイア』(以下「TdV」)の帝国劇城(TdVの場合はやはり「劇場」ではなくこの字ですね)初日を観てまいりました。

以下、Twitterの方にも書いたことの引き写しになりますが、感想です。

初日ということもあってか、キャストの皆様は全体的に手堅い感じで演じていらしたように感じられました。緊張ゆえでしょうか、サラとアルフのデュエット「初めてだから」では終わり近くで2人とも声がやや上ずっていたように聞こえました。

今回は舞台美術が全面的に見直し、とのことで、演出も変えられていました。その代わりダンスの振り付けの追加や大幅な変更はあまりなかったように見受けられます。

舞台美術の変更の例は、前半で主な舞台になるシャガールの宿屋のセット。以前は確か平屋建てだったと思いますが、何と3階建て(あるいはロフト付き2階建て)に変更されました。舞台上に高低差を作る演出は最近の帝劇的トレンドなのでしょうか。

また、1幕の伯爵とサラのお風呂場シーンにも大幅な変更が。私、従来の登場方法を13年前の初演で初めて見た時、辺り憚らず爆笑した覚えがありますが、今回は客席のあちこちで笑いが起きていました。うーん、あれは理屈に合わない……。

他にも教授のオペラ風ソロの場面などいくつか演出変更箇所があるので、劇城に行かれる方はチェックしてみてください。特に教授については4年前の前回公演よりも学究的でストイックなキャラクターになるとのことでしたが、その分演出上で傍若無人ぶり(KYとも言う)が強調されているなど、そこかしこに色づけが加えられています。

以下は役者さんの感想を初役の方を中心に簡単に。

相葉アルフ。現役アンジョルラスということで、お歌は上手くて歌声も力強いです。アルフレートとしては少しだけオツムと人生経験の足りない感じを軽妙に演じていましたが、個人の色が出るのはまだこれから、な感じです。

初代サラ、大塚千弘さんのマグダ。前半が実に小悪魔な感じで可愛らしくて、何ならいつでもサラに復帰してくれて良いのよ、と言いたくなるぐらいでしたが、後半では一変。恐らくサラとの違いを際立たせるためだと推測しますが、何もあそこまでホラーな佇まいにならなくても……。せめてエンディングやカテコでは可愛いマグダに戻って欲しいのになあ、と思いながら見ていました。

植原ヘルベルト。お笑い要素よりもビジュアル系要素の強いヘルちゃんは久しぶりになります。初演の吉野圭吾さんは最早レジェンドなので別格ですが、植原ヘルも見た目をかなり妖艶に作り込んでいて、すらりと美しかったです。

そして。4年ぶりの再会となった山口伯爵!

伯爵は実に華麗でなまめかしく、歌声の張りも抜群でした。13年前の初演時から、再演を重ねるごとに若返り、美しさが増しているようにお見受けします。

また、「抑えがたき欲望」での、森山影伯爵のダンスとのシンクロが、今までになく素晴らしかったと思います。この場面ではもちろん、山口伯爵と森山影伯爵は互いにアクションを交わし合うわけではないので、「息の合った演技」という言い方が適切なのかは分かりませんが、まさに2人が一体となって、クロロック伯爵という異形の者の複雑な内面世界を舞台上に見事に体現していました。

森山影伯爵をはじめとするダンサーズの振り付け等には大きい変更なし、と書きましたが、文字通りヴァンパイアたちのダンスがTdVの世界観の重要な一翼を担っていて、前回公演までの積み重ねでダンスはある程度完成されているのであえていじる必要もない、ということなのかも知れません。

しかし、カーテンコールでの客席用振り付けは、多分毎回見直しが加えられています。事前に公式動画でも拡散された振り付けは今回も、客席側での真似のしやすさと、長時間の観劇で固まった身体を動かすことの心地よさとを両立させたものになっており、存分に楽しむことができました。このために、動画でも使われていた真っ赤なハンカチを手作りして(布地を切って糊で貼っただけですが)持参した甲斐がありました!

次回の観劇は9日昼の予定。サラと影伯爵は今回と一緒で、アルフレートだけが異なります。東さんはほかの演目も含めて全く初見なので楽しみにしています。

初日前から休演者が出ているハードな演目ですが、どうぞカンパニーの皆さまが帝劇千穐楽、そして地方公演を経て1月の大阪大千穐楽まで無事に完走されますよう、お祈り申し上げております。