日々記 観劇別館

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『ダンス・オブ・ヴァンパイア』初日感想(2015.11.3ソワレ)

キャスト:
クロロック伯爵=山口祐一郎 アルフレート=平方元基 サラ=神田沙也加 アブロンシウス教授=石川禅 ヘルベルト=上口耕平 シャガール=コング桑田 レベッカ=出雲綾 マグダ=ソニン クコール=駒田一

4年ぶりに帝劇で開幕した『ダンス・オブ・ヴァンパイア』(以下、TdV)。アルフレート、サラ、マグダのキャストを一新し、更にレベッカママのWキャストとして出雲綾さんが起用されています。
そして、衣装やカツラもリニューアルされ、何だかポスターの伯爵も煌びやかに。これは行かねば、ということで初日を観てまいりました。

伯爵のメイク、ポスターではバッチリだけど、実際の舞台ではどうなるかな?と疑問でしたが、それは杞憂で、メイクもネイル(親指が黒、他の指がマーブル系の真紅)もしっかり決まっていました。
肝心の歌声については、初日で緊張もされていたのか、1幕の登場ソロ「神は死んだ」では少々声がうわずっているように聞こえました。「お前を招待しよう」も気合いが先行している印象。ただ、そんな中でも「神は死んだ」で上手通路から退場する際、何故かサブセン通路近くの席の方に軽くデコピンなどされていましたが(^_^;)。

しかし1幕後半のお城の場面からはだいぶ落ち着きを取り戻した雰囲気に。教授との掛け合いを経て、汗かきな元基アルフレートのおでこをスポンジで丁寧に拭いてあげて、締めの「自由をその手でーーーーー♪」に至る頃にはすっかりいつもの余裕綽々の伯爵になっていました。

2幕序盤。あれ?今回はご先祖様の肖像画がない?とびっくり。サラを取り囲むのはご先祖様の幻影なのか、それともヴァンパイア達なのか、解釈に迷うところです。そもそも今回の伯爵には「ご先祖様」というものが存在するのかが定かではありません。
伯爵と沙也加サラとのデュエットは、意外に良いバランスでした。沙也加サラ、そんなに声量があるわけではないものの割と押しが強いので、それを伯爵が受け止めつつ柔らかく、程良く押し返していました。

「抑えがたき欲望」では伯爵はすっかり本調子に。この歌は単純に声を張り上げれば良いものではなく、しっとりと本能に振り回される者の哀感を漂わせつつ開き直って本能に従うという複雑な内容で、しかも曲が長いので、歌う人は本当に大変だと思います。正に山口さんの本領が余すところなく発揮されていました。伯爵の化身、新上さんのしなやかなダンスとも自然に融け合っていたと思います。

……と、しっとり観客を包み込んだと思いきや、直後の舞踏会で現れた伯爵、いきなりの力強いスタッカート&シャウト!そして、パワフルかつ華やかに、最後までぐいぐいと魅せてくれました。
終盤のネタバレは避けますが、ラストシーンの伯爵の演出が今回大幅に変更されていました。個人的には変更後の方が好みです。何で最初からこの演出にしなかったんだろう?

他のキャストについても今回初役の方を中心に少しずつ触れておきます。

元基アルフレート。代々のアルフについては「ヘタレ」という点では共通なのですが、

  • 泉見アルフ=純情な常識人ヘタレ
  • 浦井アルフ=純粋無垢な泣き虫ヘタレ
  • 育三郎アルフ=常識人だがどこか腹黒なヘタレ

という印象を抱いてきました。
今回の元基アルフの第一印象は、「容姿も姿勢も良いのに、行動させると残念なヘタレ新入社員」。真面目でそこそこやる気もあるのに、緩い所と気の利かない所と甘い所だらけで、年長者が、全くこの子はしょうがないな、と嘆きつつついフォローしてしまうタイプだと思います。汗は多いですが、泉見アルフほどぽたぽたしていなかったような。

沙也加サラ。前述のとおり、押しが強い持ち味がサラのイメージには合っていると感じました。過去に、伯爵にリードしてもらってやっとデュエットできていたサラもいましたが(誰とは申しません)、サラは演技だけでなく歌でも、鼻っ柱強く堂々と無邪気にしている方が良いです。

上口ヘルベルト。1幕での登場時にオレンジのサングラスを掛けていてインパクト大でした。
2幕での再登場は「あの場面」なわけですが、長髪・半銀髪のカツラと黒系の服装もあいまって、「へ?井上トートが何故ここに?」と一瞬呆然としてしまうぐらい、井上トートと雰囲気が似ていました。
井上トートにはあり得ないシースルーとTバックで、身体を張ってセクシーポーズを決めていた上口くん、これから公演期間中にぐんぐん変化、進化してくれそうで期待しています。

ソニンマグダ。とても今回初役とは思えない安定感を漂わせていました。グラマラスですが力強く、一歩間違えればシャガールを串刺しにできそうです。歌もパンチが効いてパワフルでした。

出雲レベッカ。最初「あれ?今日阿知波さんだっけ?」と一瞬悩んだぐらいに、ママの雰囲気を作り込んでいました。お声が澄んでいて綺麗です。
そして初役ではありませんが、コングシャガール。今回、結構アドリブを入れて笑わせてくれています。初日ということで、吸血した後に「みなぎってきた!これなら30日まで頑張れそう」のような台詞を加えていました。
最後に、こちらも続投組ですが、禅教授。不肖の弟子アルフレートに対しては愛情を漂わせつつも食えないじいさんなのですが、やはりどこか可愛げがあって憎めません。特に伯爵と夜更けのお城で対面する場面でのリアクションの可愛らしさと言ったら!

そうそう、駒田クコールも健在でした。幕間にはあのクコール劇場が復活。
「この間までスペインで召し使いやってましたが、あそこのご主人様も変な方で。こちらのご主人様も変わった方で……」
「10年前からこれやってますが、これから36回、そして大阪でも愛知でも毎回ネタを考えなければいけないので大変で……」
等とぼやきつつ、変わらぬうちわ捌きを見せてくれました。クコールさん、頑張れ!

カーテンコールでは、キャストと客席が「真っ赤に流れる血が欲しい〜」に合わせた振付で一緒に踊る、というのをやっています。初日は入場時にサイリウムブレスレットが配られ、客席はそれを手にして踊りました。このブレスレット配布はあと何回か予定されているようです。
また、初日でしたがキャスト全員のご挨拶は残念ながらありませんでした。但し、伯爵が全員を代表して、
「皆さまクコール劇場の初日にお越しいただきありがとうございます。ついでにダンス・オブ・ヴァンパイアの初日にお越しいただきありがとうございます」
のようなボケをかましつつ、極めて流暢にご挨拶されるというレア事例を目にしました。伯爵って本当、やればできる子!

では、改めて。
お帰りなさい、TdV!良く帝劇に戻ってきてくれたね!

次回は11月7日マチネを観劇します。良知アルフ、舞羽サラを初見の予定なので楽しみにしています。