日々記 観劇別館

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『ダンス・オブ・ヴァンパイア』感想(2019.11.9 13:00開演)

キャスト:
クロロック伯爵=山口祐一郎 アルフレート=東啓介 サラ=神田沙也加 アブロンシウス教授=石川禅 ヘルベルト=植原卓也 シャガール=コング桑田 レベッカ阿知波悟美 マグダ=大塚千弘 クコール=駒田一  ヴァンパイア・ダンサー=森山開次

今期2回目のTdV観劇に行ってまいりました。

ちなみに当日、有楽町駅から帝劇までの道沿いに警察車両が多数並んでいたので「あれ? 即位祝賀パレードは明日だったよね? 前日からこんなに警備してるなんて大変!」と思いながら通り過ぎたのですが、それが国民祭典の警備だったことは夜帰宅してから知りました😅。そもそも国民祭典が9日に開催されることすら知らず、そう言えばそんなイベントもあったっけ、な体たらくで。いや、今週本業が超多忙でしたもので(完全に言い訳)。

閑話休題TdV、アルフレート以外は初日と同キャストでの観劇でした。

東くんは他の舞台も含めて全くの初見でした。この舞台では当該公演のアルフが毎回開演前の諸注意アナウンスを務めますが、東アルフ、その語り口が、声は渋い低音で格好良いものの、あまりにも真面目過ぎてツッコミ所も愛敬も皆無。なので、心の中でチコちゃん風に「つまんねーヤツだなー」と呟いていましたが……。

ごめんなさい。東アルフ、声量たっぷりで張りのある歌声で、しかも演技の間合いも絶妙でおバカキャラを作り込んでいて、予想以上に良かったです。

あと、東アルフ、とにかく背が高い! 公称187cm。186cmの伯爵と対面した時に顔が真正面にあるアルフは初めてだと思います。

あんなに背が高かったら2幕の霊廟で教授が立ち往生した時に手が届いて救出できてしまうのでは? と心配していましたが、そこはなんと、

「教授が『優秀な助手アルフレートよ、助けてください』と言ってくれたら助けます!」

とか何とか理屈をこねて助けに行かず、当然教授もそんな条件を飲むわけがないので、結局「ひとりでやれ!」と命じられるという展開になっていました。

また、身長差30cm以上の東アルフと沙也加サラ。ラストのあれ、どうするのかな?と思ってたら、沙也加サラがジャンプして飛びついてガブッと行っていました。身長差萌えの人にはたまらない場面だったのではないでしょうか。

東アルフ、ソロの「サラ」も表情豊かに歌い上げており、とても初帝劇とは思えないほど好演していました。将来が期待できそうな若手の1人だと思います。

以下、心に引っかかった箇所をストーリー順に。

1幕、アルフとサラのデュエット「初めてだから」の時の夜這いシーンでのマグダ。4演目までの彼女は気分じゃないけど渋々、な感じでしたが、今期の千弘マグダは「んもー、しょうがないわねぇ」みたいな感じに見えました。何だかんだでシャガールを結構憎からず思っているらしき、可愛らしいマグダなのです。

そして翌朝の場面で、教授だけでなくシャガールも頭のてっぺんに絆創膏を貼ってたことに今期2回目観劇にして初めて気づいたという😅。教授の頭の絆創膏はアルフもしくは教授自身が貼ったのだとずっと思っていましたが、前夜に教授が殴られた後、部屋から出てきたマグダが教授の傷を覗き込むような仕草をしていたので、今回はもしかしたらマグダが貼ったのかも? と思っています。

伯爵のお風呂場侵入。家が割れて、立ち去った後には何事もなかったように元に戻っていますが、相変わらずどうやって入ったのか分からない所が素敵。伯爵ボイスの甘い囁きと力強い牽引との呼吸は今回も迫力満点、サラが手もなく籠絡されるには十分すぎました。

サラの出奔前の妄想ダンス。開次影伯爵、失礼ながら実はそんなに身体が柔らかくないと思うのですが、やはり彼のダンスの疾走感と闇のエネルギーには引き込まれます。

伯爵城入城場面。伯爵を挑発するように名刺をプルプルさせる教授から、今回も伯爵は元気に名刺をもぎ取っていました。

1幕終盤クライマックスの伯爵がアルフを教え諭す(たらしこむとも言う)場面。時に父親のような人生の大先輩、時に悪徳へと誘う者、時に真理へと導く伝道師、という感じでころころ変わる豊かな表情、そしてロングトーンを、「驚異的だ……」とM!のコロレド猊下のごとく堪能していました。

幕間のお楽しみ、クコール劇場。客席の掛け声に軽妙に答えつつ職務に励むクコールさんのお掃除道具が従来のうちわからモップに変わったのを見て「これも、流行りの働き方改革?」と考えていました。ちなみに今回のクコールさんはおもむろにマントを脱ぎ床に置いたと思ったら、マントの中から靴を出現させていました。一見やっつけ仕事っぽく見せかけてさり気なく小さな驚きを見せてくれるのが良いですね。

2幕序盤。沙也加サラ、鼻にかかった甘え声で歌うのが可愛いなあ、でも芯には骨太なものが見える神田沙也加という役者さんとしては、いつまでこのカワイイ小娘路線でやっていくのかなあ、と大きなお世話なことを考えつつ、伯爵が現れるとすっかりそちらに頭が切り替わっておりました。

「夜を感じろ」。よく見ると夢アルフは最後に果敢に影伯爵に立ち向かってはいるものの、決着が着く前に夜明け、と申しますか恐らくはアルフが手にする十字架に象徴される信仰に助けられていて、決してアルフ自身が勝ったわけではないのですね。

教授を知識欲という名の沼に引きずり込む図書室の場面。今回のセット変更については大体いい感じだと思っているのですが、図書室だけは若干不満があります。もちろん何百年も生きている伯爵のお城なら背表紙の茶色い古びた本ばかりで当然ですし、4演目の時のように大型本を踏み台代わりにしなくなったのは良いのですが、もう少し教授が本務を忘れて没頭するだけの説得力のある棚作りをしていただきたかったです。個人的には「大型本が踏み台に!」の問題はあったものの、前回公演までの、教授の言葉通り哲学書からパンフレット類までの幅広い蔵書構成であることが一目見ただけで察せられる書架が結構好きでした。

植原ヘルベルト。ビジュアルが初演寄りなのでどうしても比べられがちのようですが、もっと彼の色ではっちゃけてもらって大丈夫だと思います。東アルフと禅教授がいい感じに受けて楽しいドタバタになっていました。

お城の階上での伯爵登場。あれ、伯爵に紗がかかっていますが、一体どこにいるんでしょうね。もしかしてイメージビジョン投影? 伯爵ボイス全方位攻撃は、2階の方がスピーカーが近くて迫力があったと感じました(今回は1階前方下手サブセンにて鑑賞)。

「抑えがたき欲望」。今回もショーストップが起きていた伯爵と影伯爵の好演もあって、伯爵に籠絡されるサラや、ぎりぎり踏みとどまりながら揺らいでいたアルフの気持ちが、今回はとてもよくわかる気がしました。

墓場に眠るヒラのヴァンパイア達は人間に対しひたすら恨みを抱き下剋上を望んでいるイメージでしたが、伯爵は人間を欲望を満たす獲物として眺め下ろし支配を狙うと同時に人間を憐れみ愛おしんでいるという印象を強く受けました。しかもこの大ボス、人たらしときています。本当に一筋縄ではいかないお方です。だからこそ、敵方である教授は「くだらん!」と一蹴せざるを得ないのでしょう。

舞踏会。センターで堂々と熱唱しながらの伯爵の入場から、クライマックスに至るまでの一連のシーンはいつも目を離さず観てしまうわけでして。何度観ても、あの華やかでサスペンスなシーンがいつも崩れず、ぶれずに展開するのは凄いことだと思っています。

カーテンコールは、スペシャルの日ではないから普通の手拍子で終わるのかな? と思っていたら、しっかりヘルベルトの振付講座付きで客席参加になっていました。すぐ前の席にかなりご年輩の男性(おじいちゃん)がいらして、ヘルベルトの客席スタンディングコールに従い立っていたのでちょっと心配でしたが、しっかり振付をこなしていたのでほっとしました。むしろ私自身の方が振付が怪しい……。

と言うわけで、今回はめちゃめちゃ楽しむことができました。次回のTdV観劇はもう少し先になりますので、それまで桜井サラはしばらくお預けです。その前に『ビッグ・フィッシュ』クリエ版を見届ける予定です。