時代劇を題材にした映画『侍タイムスリッパー』を観てまいりました。
先に観た家族や公式サイトから、どうも元々は自主制作映画だったのが大評判で全国でロードショー公開になったらしいとか、なぜかヒロインの役者さんが助監督などスタッフも兼務しているらしいとかの情報のみを得た状態で映画館入り。
時は幕末、京の街。宿敵である長州藩士を討つべく仲間とともに待ち伏せる会津藩士高坂新左衛門。ターゲットとの真剣勝負に挑むも雷雨に見舞われ、突然の落雷が! 高坂が次に目覚めたのは見覚えのない街角。どうも江戸の街らしいが何だか人々の様子がおかしい。そう、ここは、時代劇が斜陽になりつつある2000年代の京都の撮影所だった。そして様々な出会いを経て、時代劇の斬られ役として生きていくことに……というのが序盤のストーリーです。
物語の性格上、後半部分のネタバレはできませんが、笑いあり、スリルあり、ほのかな甘酸っぱさあり、爽やかな感動あり、そして格好良い殺陣も満載、更に見方によってはライバルとの腐要素もありで、最後まで面白く、後味良く観られる映画でした。
太秦の撮影所を舞台にしていた朝ドラ『カムカムエヴリバディ』がお好きだった方にもおすすめしたい一本です。
キャラクターでは、高坂の設定が絶妙でした。比較的早期に自分の居場所が幕府滅亡から140年後の京都であることと、簡単に元の時代には戻れないことを悟るのですが、その後はそこまで苦労せずに1、2年で2000年代に馴染んでいるのが笑えます。
しかも身を置いているのが撮影所かつ芸能界なので、彼の風体や言葉遣い、口にする出自や事情も「個性」とか「そういう設定なのね」でかたづいてしまうし、多分戸籍や住民票がないとか多少のことは見過ごされるという😅
また、テレビの時代劇に激しくハートを鷲掴みにされる高坂や、「暴れん坊将軍(妄想)」を初めとする現実世界の数々の作品へのオマージュなど、コメディシーンとシリアスシーンとを問わず、作り手の時代劇への激しい愛が随所に込められています。
チャンバラの殺陣とホンモノの人斬りは違うのだ、という重要ポイントもしっかり笑いに昇華されています(そして伏線にも(略))。
なお、あまり詳しく書けないのが残念ですが、登場人物の1人である風見恭一郎が時代劇を演れなかった理由も演りたい理由も熱く切なくて泣けます。
高坂のライバル関係もまた良し。あれは腐要素が見出せると言ったら家族に咎められましたが、だって、あるじゃないですか……。
それから、何よりも、殺陣が本当に格好良くて、華やかなテレビの定番時代劇から、リアルを追求した映画の斬り合い、緊張感溢れる真剣勝負まで取り揃えているので、人間ドラマに興味のない人にもあの殺陣のバリエーションだけはぜひ観ていただきたい、と思います。
あと、ラストでは「えええええ!?」とリアルに声が出ました。その後の話が妄想し放題ですよ、あれは。
ところでなぜ現代(2020年代)ではなく2000年代が舞台? という疑問が映画館を出た後に残りましたが、その辺りは監督インタビュー(https://www.1st-generation.com/?p=22962)で理由が明かされていました。ただ、実際は、インタビューで明言されているそのことだけが理由じゃないだろう、という見解で私も家族も一致しています。