日々記 観劇別館

観劇(主にミュージカル)の感想ブログです。はてなダイアリーから移行しました。

『キングダム』感想(2023.02.23 13:00開演)

キャスト:
信=三浦宏規 嬴政・漂=小関裕太 河了貂=華優希 楊端和=美弥るりか 壁=有澤樟太郎 成蟜=神里優希 左慈早乙女友貴 バジオウ=元木聖也 紫夏=朴璐美 昌文君=小西遼生 王騎=山口祐一郎 昌王・竭氏=壤晴彦 信(子供時代)=芝﨑郁久也 嬴政(子供時代)・漂(子供時代)=シャルパンティエ壱世

再び帝劇で『キングダム』を観てまいりました。今回がひとまずマイ楽で、王騎将軍も見納めになる予定です。今回はおけぴ観劇会・チケットぴあ合同貸切ということで、私はおけぴ観劇会枠でチケットを取っていただけました。おけぴさん、ありがとうございました!

信と政(青年)は初日と同じ三浦・小関ペア、壁と紫夏も同じキャストでしたが、河了貂と楊端和は華さん、美弥さんの元ジェンヌさんでした。王弟成蟜も今回は神里さんです。

美弥端和、尋常でなく凛々しく格好良かったです。初日に観た梅澤端和も美しかったですが、美弥端和は戦闘場面での動きのキレの良さもさることながら、ちょっとしたポーズの決めの美しさなど、自分の見せ方がやはり上手いと感じました。

河了貂は、海荷テンはああだとか、華テン(この略称は若干某中古車センターを連想しますね)だからこうだとかいう、演じる役者さんによる差が出にくい、フラットな役どころだという印象です。華さんは私は『ポーの一族』のライビュで可憐なメリーベルを観ただけなのですが、宝塚の娘役の方は男役を支える役割として観客にも期待される立場なのでメンタルが強くないと務まらない、という前提でいつも観ているので、テンの明るさ、強さ、賢さとはとても親和性が高いと思いながら観ていました。

神里成蟜は、ひん曲がった眉毛のメイクが特徴的です。今回の舞台では成蟜はプライドばかり高くて器の小さい悪役ですが、神里成蟜には未熟で幼いゆえの愚かさや残酷さが強くて、それでいて終盤には兄王の器に圧倒されている様子も見せており、原作の、成長後に兄王を支える立場に変わるという成蟜に通じるルートが見えた気がしました。

また今回、見納め(予定)ということもあり、全体のアクションに目を凝らして観ていました。「パルクール」についてはスポーツとして洗練されたアクション、という程度の知識しかないのですけれども、普通の見慣れた殺陣とはまた異なり、必然性のある、演者に高い身体能力を求めながらも決して無茶はさせないアクションで、それでいて見せ場はしっかり作られ仕上げられていることに好感を抱いています。劇中音楽が生オケであることも相まって、改めて、なんて豪華な2.5次元舞台! と感服するばかりです。

ということで、ここから今回の王騎将軍の感想にまいります。毎度Twitterなどで彼についての熱い愛の込められた的確な語りを読んでは、自分の語彙の貧困さと熱量の低さが嫌になっていますが、それでも書きます。

王騎将軍、初日に観た時よりもケレン味が少し和らいで、その分、無二の主君であった昭王ロスの激しさゆえに、忠誠心と闘争心の行き場を失った将の魂の孤独感が強調されているように見えました。まさにさまよえる怪鳥。原作未読なのでなぜ昌文君の偽首を差し出したのかなど良く分からない場面もありますが、現王の器を見極めるためにも昌文君は生かしておく必要のある人材と認めているのかな、と勝手に想像しています。

しかしケレン味が和らいだと言っても2幕のクライマックスでの矛の一振りと咆哮(衝撃波?)とで周囲を圧倒する場面のインパクトは健在! 客席からは笑いが起きていましたし、私も笑ってしまいましたが、それほど衝撃的、インパクト特大ということで💦

また、プロローグで王騎将軍が見せる昭王への深い敬意と愛情のこもった眼差しと、途中でのハイテンションかつ激しい振る舞いとのギャップがまた彼の魂の振れ幅を示していると感じられました。そのギャップがあるからこそ、終盤で彼が、大望を語るに相応しい器の片鱗を見せる政や、戦士としての高い資質を発揮する信ら若者たちに新たな生きがいを見出した後に、再び昭王の幻と向き合った時に見せる少年のような希望を湛えた表情の美しさが、より輝いて見えてきます。怪鳥にも、その能力と大きさに見合った止まり木は必要なのですよね。

終演後は貸切公演ということで、スペシャルカーテンコールがありました。

まずは三浦さんのご挨拶。最初は割と普通てしたが、途中から、
「皆さんキングダムのことを忘れないように、おけぴの相関図と……グッズを買ってください!」
という若干面白要素が入った展開に。なんか天然の香りが激しく漂うような……。でも真っ直ぐさが伝わってきて、祐一郎さんが推す理由が何となく分かったように思います。

続いてのご挨拶は小関さんから。
「舞台のその上の方にも人が2人ずつぐらいいて(照明さん?)皆で一つずつ場面を紡いでこの舞台を作っています」
ほう、宝塚の男役さんのようにきちんとした内容、と思った直後に、
「でも実は今日、コンタクトを落としてしまって……」
の発言が。初日に三浦さんがコンタクトを落としたという話をしていて、今回は大丈夫だったようで安心していましたが、今度は君かーい! と笑ってしまいました。

するとそこへだめ押しで、後ろに控えていた祐一郎さんが、
「あ、そこにコンタクトが」
と床を指差し、えっ、どこどこ? と小関さんが引っかかる状況も発生し、もう笑いが止まらなくなりそうでした。

カテコの締めは、
「これをぜひ流行らせたいんです!」
という三浦さんの前振りがあり、
“「キングダ」という掛け声とともに「ムー!」と皆で拳を振り上げる”
というアクションを客席全員でやる、というものでした。何か、良い子だなあ、と思って、元気が出ました。

このカンパニーが、そして王騎将軍が今後2ヶ月以上の地方公演を経てどう変化していくのか、もう一度観てみたい、という気持ちにもなっていますが、もう手持ちのチケットはゼロなのでした。今後は観に行かれた皆さんのレポートを楽しみに待ちたいと思います。でも配信があれば観るかも知れません。