日々記 観劇別館

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『SHOW-ISMS(Version DRAMATICA/ROMANTICA)』(Streaming+配信)感想(2020.7.23 18:00開演)

キャスト:
彩吹真央 JKim 知念里奈 新妻聖子 井上芳雄 美弥るりか 平方元基 夢咲ねね 樋口麻美 下村実生 今拓哉 保坂知寿

シアタークリエで7月20日から上演されている『SHOW-ISMS』。都外在住な上に地元で日常が完結している者としては、まだ公共交通機関に乗って利根川を越えて劇場に向かうのが精神的に辛いので、今回も配信で鑑賞することにしました。

私的に劇場に行くこと自体は全く抵抗がないのですが、東京に到着するまでの間に公共交通機関で移動することにまだ踏ん切りがつかずにいます。さりとて東京の複雑な道筋を迷わずに車で走れる運転技術も、空いている駐車場を探してさっくり入庫する技術も持ち合わせておらず。都内在住であればリスクと隣り合わせは当たり前、ともう少し腹を括れたかも知れない所を、こんなに躊躇していて、「家から劇場の玄関先に直通できるどこでもドアが欲しい!」と本気で考えている自分がいい加減アホらしくなってきてはいますが、まだしばらくは悩み続けると思います。

前置きが長くなりましたが、以下、ショーの感想です。

開演30分前から日替わりキャストによる配信があると言うので、家族が拵えてくれた夕食を早めにいただきながら観ていました。本日のキャストは、平方さんと夢咲さん→井上さんと演出家小林さん→再び平方さんと夢咲さん、でした。最初に平方さんが出てきた時の風体が頭にタオルを巻いたTシャツ姿、体格も若干筋肉が割増されたガテン系(この言葉ってまだ通用します?)だったので、「何で?」という大きい疑問符で頭が埋め尽くされ、内容はほとんど覚えておりません。なおガテン系の理由は『マトリョーシカ』の役柄の関係でした。

今回の本編プログラム(Aプログラム、と呼ばれていました)は前半が『DRAMATICA/ROMANTICA』のコンサート、中盤が『∞/ユイット』からの井上さんと彩吹さんのデュエット、後半が本来今年の新作として単独上演される予定だった『マトリョーシカ』から数曲披露するショー、という構成でした。公演日程後半の『マトリョーシカ』メインのプログラムが「Bプログラム」になるようです。

前半で知念さんの歌う「Cinema Italiano」をどこかで確かに聴いたことがある! と本ブログを検索したら、2014年1月のクリコレで披露されていました。これ、結構好きな曲です。あと『ルドルフ』から1曲歌う前に、この歌は今歌うと「ん?」と思う、というような発言をされていて、井上さんに「まあ、状況も変わりましたからね」と返されていました。なお問題の歌の内容は、若い娘に心惹かれる夫ルドルフに「私が妻よ!」と哀しく主張する正妃の歌で、ああ、それは確かに当時とは実生活での立場が変わったから、また違う気持ちになるんだろうな、と思いながら聴いていました。

新妻さん、ソロでの声量が凄かったです。配信でこれなら現地ではどれだけ響いてるんだ!? と圧倒されてしまいました。ご本人が「会場の換気が良いので外の雨音が聞こえる」と語られていましたが、多分この声なら雨音もかき消されたことでしょう……と思っていたら、井上さんが同趣旨のことを突っ込んでいました。

JKimさんも「私、確かにこの重厚な歌声を最近聴いた」と思ったら『ビッグ・フィッシュ』の魔女さんでした(なぜ忘れる)。「魔女役が多い」とご自身で仰ってましたがそうなのでしょうか。「動物役も多い」と言う話も出て「それは劇団的に……」と井上さんが返していました。JKimさんは劇団四季で『CATS』のグリザベラ役などを務めており、今回の公演でも情感たっぷりの「メモリー」を披露されていました。

そのJKimさんが、「今日この会場にいらした方は勇気のある方です!」と発言されていて、うんうん、そうだと思うよ、私はちょっと勇気が足りなかったけど、と思っていたら、井上さんがすかさず「配信の皆さんも、これポチると(申し込むと)4000円かー、と勇気が要りますよね!」とフォローを入れていました。JKimさんはこの情勢下に劇場に駆けつけられた方達への心からの感謝の言葉を発せられたものなので、そのことは何の邪心もなく素直に受け止めていますが、それと同時に井上さんのフォローの力量に感心せずにはいられませんでした。

この件に限らず、井上さん、冠番組のホストやその他の司会、トークゲストなどの経験を積んだためか、以前から高かったMC力がまた上がったように感じられました。今回の強力かつ個性的な女性陣(しかも家族を含む)を、軽妙にして時々ブラックなトークで見事に仕切り、その上プリンスぶりも遺憾なく発揮していたと思います。

なお新妻さんやJKimさんが強烈すぎて書き損ねていましたが、彩吹さんも安定のレベルで大活躍されていました。中盤の井上さんとのデュエットが美しかったです。

後半の『マトリョーシカ』ショーではキャスト(美弥さん、平方さん、夢咲さん、樋口さん、下村さん、今さん、知寿さん)が登場し、それぞれの配役について説明されていました。様々な事情を抱えて定時制高校に通う、シングルマザー、学習障害を抱える肉体労働の青年、中年ホームレス、貧困ゆえに無学の主婦など立場も年齢も異なる生徒達と、美弥さんの先生との物語であるとのことです。

元の脚本では3時間近くあった『マトリョーシカ』を今回のAプログラムでは4曲のショーに、Bプログラムでは80分程度のミュージカル・スケッチに再構成するそうで、それはなかなか大変な作業なのではないかと想像しています。

今回披露された楽曲は上記のとおりわずか4曲、ほんのさわりに過ぎないようですが、いずれも「例え短縮版であっても良いから、この美しい音楽とダンスに彩られた物語を見届けたい」と観客の心をかき立てる巧妙な作りになっていました。ううむ、これはBプログラムの配信も観るしかないでしょうか……?

公演のラストは前半・後半のキャスト全員によるゴージャスな合唱でした。終演後、配信で知寿さんら女性キャスト3名からのご挨拶もあって、2時間があっという間、満足感たっぷりのコンサートであったと思います。

なお、配信状況としては、わが家の環境(フレッツ光、室内ではWi-Fi)では途中で一瞬だけ映像が不安定になりましたが、あとは概ね問題なく視聴することができました。ただし配信時のチャット欄には「たびたび不安定になった」とのコメントも見受けられたので、各自の通信環境や居住地域の回線状況にも大きく左右されるのかも知れません。