日々記 観劇別館

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『ZIPANG PUNK 五右衞門ロックIII』感想(2012.12.24マチネ)

キャスト:
石川五右衞門=古田新太 明智心九郎=三浦春馬 猫の目お銀=蒼井優 シャルル・ド・ボスコーニュ=浦井健治 春来尼=高橋由美子 前田慶次郎橋本じゅん 石田三成粟根まこと マローネ=高田聖子 蜂ヶ屋善兵衛=村井國夫 豊臣秀吉麿赤兒

クリスマス・イブに、シアターオーブで観劇してまいりました。本作は劇団☆新感線の『五右衛門ロック』シリーズ第3作。私は第1作はDVDも含めて観ておらず、第2作を観たきりですが、今回は、人物設定の荒唐無稽さに比して、極力丁寧に、細心に物語を展開させているように見えました。
そもそもこのシリーズの、
石川五右衛門が釜茹での刑に処せられながらも何故か生き長らえ、日本のみならず南蛮をも股に掛けて義賊として活躍する」
という基本設定が大胆にぶっ飛んでいるわけですが、今回その五右衛門が「若い者に任せた」的な台詞を度々口にし、実際狂言回し的役割に徹していたのは、少し寂しいものがありました。
今回はかぶき者の前田慶次郎として登場した橋本じゅんさんも、腰のご病気の影響もあってか、殺陣の見せ場こそありますが、どちらかと言えば若者をサポートする役回りでした。
ただ、それは、ある程度落ち着いた年代になった看板役者の皆様に、いつまでも体力と運動能力の限界を迫るような演技を強いるのではなく、丁寧にドラマ性とケレン味を両立させた芝居を作り上げ、見せていこう、という制作側の姿勢の表明であるように感じられました。
ストーリー面では、前半が軽いミステリコメディ仕立てで作られていましたが、それは1幕のラストでほぼひっくり返され、2幕が終わってみると、あれ?実は謎解き自体にあまり意味はなくて、初めからこの結論ありきで進行していたのかな?出落ちかよ!と多少肩透かしを喰らいました。
でも、特に2幕では全ての主要登場人物に見せ場がまんべんなく用意されており、もう本当に殺陣もダンスも目のご馳走、笑わせてもらい、新感線らしいヘヴィメタルな音楽もたっぷり堪能いたしました。
ただ、これは意見が分かれるかも知れませんが、2幕の心九郎がお銀の言葉に耳を傾けて心に仮面を被るのを止めてから悪役一味との対峙に至る場面には、若干冗長さを覚えました。いえ、お銀と心九郎の対話自体は本当に丹念に練られていて素敵だと思ったのですけれどね。

そして、今回、舞台装置が美しかったです。舞台の床は一面に堺の街並み。高い天井までしっかり届く三本松や巨大帆船など、舞台空間をしっかり活かして作られていました。オーブでは初めて3階席で観たのですが、多分この舞台装置、上階から眺めた方が全体を良く見られてお得だと思います。その代わりにたまに見えてはいけない物が見えたりもしましたし、1階席のように客席降り演技は楽しめませんが。

以降は少々不真面目さが入り交じった感想です。

取りあえず脚本家&演出家、どれだけJCSとエリザ好きなんだよ!と思いました。「商人・ザ・スーパースター」はともかく、予想もしていなかった場面で「悪夢」のパロディが聴けるとは……。
それから、実はキャスト表をきちんと把握しないまま観劇に臨んだせいもあってか、1幕途中まで村井さんを識別できませんでした。誰だっけ?この年齢層でこれだけ歌える男性役者って少ないよね?と歌声に耳を凝らしてようやく判明。
更に白状しますと、由美子さんを判別できたのはカーテンコールでモニタに紹介字幕が出た時だったりします(^_^;)。女性役者にこそ、ああいう芯のある歌い方ができる人はそうたくさんいないのに、何でやねん?と自分の鑑賞能力を大変に疑問視した瞬間でした。
しかしその割に、浦井くんだけは1幕で登場した瞬間から判別できていたというのが謎です。フード付きマントをすっぽり被っていたのに。もっとも、シャルル王太子はアクションが独特なのでかなり分かりやすいのですけれど(^_^)。そしてシャルル王太子、新感線ワールドに馴染みすぎです。キレッキレの動きと言い、慶次郎とのど派手同士デュエットと言い、とある大型動物を使うさまと言い、もういつ準劇団員になってもおかしくないくらいに違和感がありませんでした。
また、最初に書いたとおり、今回は若手メインの舞台でした。そういうわけで、三浦春馬くんの歌・ダンス・演技と三拍子揃った器用さや、蒼井優ちゃんのテレビや映画で見せるほんわかした色気とは全く異なる表情を観ることができたのももちろんありがたかったのですが、終盤はやはり、ベテランの村井さんや高田さん、そして何と言っても麿赤兒さんがびしりと引き締めていました。麿さん演じる秀吉が、五右衞門との交換条件であったある重要な物を拒否する場面で、このお芝居の美味しい所の何割かを持って行ったように感じました。

これが、私の今年の観劇納めとなる予定です。何だかんだと書きましたが、観劇納めにふさわしい、ゴージャスで楽しい舞台だったと思います。今年の観劇総括は後日書かせていただく予定です。