日々記 観劇別館

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『ペテン師と詐欺師』感想(2008/1/27ソワレ)

ローレンス・ジェイムソン=鹿賀丈史 フレディ・ベンソン=市村正親 クリスティーン・コルゲート=ソニン ミュリエル・ユーバンクス=愛華みれ ジョリーン・オークス香寿たつき アンドレ・チボー=鶴見辰吾

日生劇場まで『ペテン師と詐欺師』を観に行ってきました。

2006年の初演後、噂には聞いてましたが、とても痛快で楽しい舞台でした。音楽も軽快だけどメリハリ豊かで良かったです。幕開けのオーヴァーチュアだけでわくわくさせてくれます。今回の指揮者は女性の方でしたが、一度西野淳さん辺りのダイナミックな指揮で聴いてみたい気がしました。*1

舞台はリヴィエラ。凄腕のアメリカ人詐欺師「ジャッカル」が荒らし回っているという噂を聞いたばかりのイギリス人ジゴロ詐欺師ローレンスと悪徳警察署長アンドレの前に、口八丁手八丁で憐れみを買っては金品にありつく、アメリカ人フレディが現れる所から物語が始まります。
鹿賀さん、以前『ジキル&ハイド』で観た時と同様、滑舌はどこかイマイチでしたが、スカした男っぷりが実に絵になってました。
市村さんも、前月のM!の時に疲れが感じられたのはどこへやら、同情が売り物のペテン師を思いきりお下劣に演じられていて、底力を見せてもらった感じです。特に1幕でローレンスの部屋に押し掛けた場面でダンスする時の身体の切れなどは、とても公演中に満59歳を迎えられるとは思えませんでした。

1幕でローレンスを振り回す石油王の娘ジョリーン。初演時に新感線の高田聖子さんが思い切りハジけて好演された役を、全く個性の違う(と思われる)香寿さんが演じるということで期待と不安がない交ぜになっていましたが、フタを開けてみると香寿さんも意外とハジけていて、思考が自由奔放に飛躍するジョリーンに思い切り笑わせてもらいました。とても先月までの男爵夫人とは思えず。初演を観た方の評判を伝え聞く限りでは、それでも高田さんのハジけ方には敵わなかったようで、比較できないのがつくづく残念。

スウィーニー・トッド』以来に観るソニンちゃんも良かったです。コルゲート歯磨きって確か昔日本語の箱に入って売っていたけど、それを覚えてるのって年寄り?と思いながら観ていました。
ソニンちゃんはまだ若いんだけど、割合高音を楽そうに出しているのが良いです。観る前から既にクリスティーンの正体は知ってしまっていたんですが、本当に可愛いと思わせてくれました。
しかし最も驚かせてくれたのはラストシーンで再び主人公2人のもとに姿を現した時。声色から何から全然別人(ジョリーンのフェイク?)に見えたのは凄かったです。最初本気でソニンちゃんと分からなかった(^_^;)。

1つだけ引っかかったのは、アンドレ署長がミュリエルに惚れた理由についてです。
多分、アンドレ署長本人も含めて曲者揃いの登場人物の中では最も普通で純粋な人だったからだとは思うのだけど、体感として最後まで分からなかったです。
まあ、そもそもがローレンスから彼女の気をそらす為に頼まれた駆け引きだったわけですし、恋愛は理屈で割り切れるものでないとは思うんですが、ミュリエルが空港で引き留めるほど惚れ倒すような相手に見えないのが最大の問題と申しましょうか。これはミュリエルを演じていた人(愛華さん)の役作りが単に私の好みではないだけかも知れませんけれど。

全体に、後味の良い作品でした。最初緞帳の絵柄からしてイギリス対アメリカのステレオタイプな構図だと錯覚させられていましたが、実はそうではなかったというオチも秀逸です。

*1:西野さんの指揮は『ダンス・オブ・ヴァンパイア』と『オペラ座の怪人』と『モーツァルト!』でしか聴いたことがありませんが、豪快だけど流麗さがあって割と好きです。