ヴォルフガング・モーツァルト＝中川晃教 コンスタンツェ＝hiro ナンネール＝高橋由美子 ヴァルトシュテッテン男爵夫人＝香寿たつき コロレド大司教＝山口祐一郎 レオポルト＝市村正親 セシリア・ウェーバー＝阿知波悟美 アルコ伯爵＝武岡淳一 エマヌエル・シカネーダー＝吉野圭吾 アマデ＝田澤有里朱
2年ぶりのＭ！観劇でした。
以前観た時にはひたすらきかん坊だった中川くんが、3月の『TOMMY』や6月のライブの時と比べても急に大人になった印象で戸惑いました。香寿さんの男爵夫人もしっとりとした大人の女性の雰囲気を醸し出してましたが、中川くん、それどころではなく、「星から降る金」の前に酒場女と物陰で戯れて、乱れた姿で登場する場面が妙にぞくぞくっと来ました。中川ヴォルフは本能のままに溢れる音楽と、内なる衝動のコントロールしきれ無さ加減が全身から出ていて好きです。
市村さんのパパは、序盤の声に力強さが欠けているように感じられました。役者さん個人とその演技とは単純に結びつけられるものでは無いと考えてますが、プライベートでの本来喜ばしいはずの変化が、演技の波長に微妙な乱れを及ぼしているのかも？と思います。それでもやはり、市村さんのソロナンバー「心を鉄に閉じこめて」や娘ナンネール（高橋さん可愛い！）との「終わりのない音楽」で繰り返し綴られる家族の葛藤の場面での深い存在感には感嘆せざるを得ません。
あと、今回印象的だったのは、一幕のクライマックスでのヴォルフとコロレド猊下との決別の場面。元々２人とも単純に憎み合っている設定では無いのだけれど、中川ヴォルフが猊下の手にキスして去ったり（井上ヴォルフは両手で猊下の手をはねのけます）、猊下がその手を名残惜しげにじっと見つめていたり、猊下が「お前ほど不愉快なしもべは見たことがない！」云々と怒鳴りつけ、ヴォルフを蹴飛ばさせて叩き出しつつも宝物を奪われ傷つけられた子供のような瞳で見遣っていたりと、屈折した愛情のやり取りが感じられて実に良かったです。
あの場面では、お取り込み中の猊下がハーレムな状況の割には清潔感があるとか、直後に立ち上がった時の猊下のウェストが細すぎる件等に目を奪われがちですが、一応そういう所も観てはいます。
コンスタンツェのhiroさんはミュージカル初挑戦ということでしたが、お歌はSPEED時代のキンキン声の名残はあるものの、意外に聴かせてくれました。歌だけなら昨年の木村佳乃さんより存在感があります。
ただ、既に多くの方が指摘されているところですが、台詞や演技はまだ一本調子で抑揚が少ないように見受けられました。観ていてコンスの心境の変化が汲み取りづらく、昨年の木村さんに感じた愛情への渇望感はあまり見出せなかったです。やっぱりミュージカルって歌だけじゃないんだと改めて実感するとともに、今後のhiroさんの成長を待つことにしたいと思います。
猊下について２つほど書き忘れ。馬車降り〜トイレの場面でアルコ伯爵に「さっき行ったのに」とつぶやかれていたことは前のエントリに既に記しましたが、さんざん悶えまくって入ったトイレの後の髪の乱れ具合の凄まじさと、ついたての向こうから睨みつける三白眼とにかなり笑わせていただきました。
あと、一幕で「どこだ！モーツァルト！」と登場した時のマント捌きが実に美しくて、「そうよ、２年前このマントと美丈夫な姿とバズーカな歌声に私ははまったのよ」と思い出しながら堪能したものです。
Ｍ！に関して他にもまだ書きたいことはあるのですけれど、それはソワレの感想で書くことにいたします。
