日々記 観劇別館

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『モーツァルト!』感想(2010.12.18ソワレ)

キャスト:ヴォルフガング・モーツァルト=山崎育三郎 ナンネール=高橋由美子 コンスタンツェ=島袋寛子 ヴァルトシュテッテン男爵夫人=香寿たつき セシリア・ウェーバー阿知波悟美 アルコ伯爵=武岡淳一 エマヌエル・シカネーダー=吉野圭吾 コロレド大司教山口祐一郎 レオポルト市村正親 アマデ=松田亜美

11月20日以来、久方ぶりの山崎ヴォルフ、そして初日以来の亜美アマデでのM!観劇でした。
どうでも良い事実ですが、今期実は2回ほど最前列チケットが当たりました。1回目は11月20日ソワレ公演、2回目が今回の公演。両方山崎ヴォルフです。しかも偶然両方トークショー開催日。トークショーで舞台から飛び降りた山崎ヴォルフが駆け抜け、また軽々と舞台に飛び乗る姿を何度もかぶりつきで目撃することに。

その山崎ヴォルフは前回観た時、歌は申し分なく、表情も豊か過ぎるくらい豊かなのに、どこか物足りない印象がありました。今回も、流石に物足りないとは感じなくなったものの、2幕の前半時点では、彼の甘く素直な持ち味はどちらかと言えば、「並の男じゃない」や「愛していればわかりあえる」のようなポジティブな内容の曲の方に出るのかも?と感じさせられたりしていました。
しかし、2幕後半のパパの死後、ヴォルフが悔恨と絶望、そして自らの才能(アマデ)への憎しみから狂乱するも、男爵夫人の幻想の語りかけ(アマデが見せたもの)により再生する一連の場面。山崎ヴォルフ2度目にして初めてうるっときました。
きっと、本当は自分の才能、奔放な魂、そして家族のいずれにも誠実でありたいと願いながらも叶わなかったヴォルフの悲鳴が、彼の澄んだ声を通してこちらの心に届けられたに違いありません。
この場面では、香寿男爵夫人の「星から降る金(リプライズ)」の優しくも芯の強い歌声もまた、物を言っていたと思います。香寿夫人、対井上ヴォルフだともう少し彼を煽るような力強さがあるのですが、対山崎ヴォルフではそうでもないようです。

ところで、何度かM!を観ている癖に、井上ヴォルフと山崎ヴォルフの演技の「明確な」違いをあまり意識したことがないのですが、聞く所によるとどうも、この狂乱場面が台詞レベルで違っているらしいです。
具体的には、ヴォルフがアマデに向かって叫ぶ「お前が家族を引き裂いた!」という台詞。私は当然どちらのヴォルフも言っているという思い込みで聴いていたのですが、どうやら井上くんはこれを言っていないらしい、という情報が飛び込んできました。
私が認識している両ヴォルフの違いというのはせいぜい、例えば1幕の居酒屋場面で出会ったお姉さんと次の場面でいちゃついて、パパに呼ばれて出てくる時、井上ヴォルフは腰のベルトを緩めていますが山崎ヴォルフはそうではない、という程度でしかないのですが*1、次回もう1度だけ井上ヴォルフを観る機会がありそうなので、ここはちゃんと聴いて確かめねば、と思っています。コアな作品ファンの皆様からは「そんなの周知の事実だよ」と言われそうですが、自分の目と耳で確かめないと納得しない困った質なのです。

忘れないうちに、今回のコロレド猊下についても触れておきます。
お声は絶好調だったと思います。空気をびりびりと震わせて劇場空間に響き渡っていました。
そして、2週間前同様表情豊かで、ヴォルフのことを憎みつつも可愛くて仕方がない、といった雰囲気で満々でした。
1幕のおトイレシーンでは、3回くらいどこか艶っぽい悲鳴を上げつつ、尿意に身悶えていました。前回観た時には、悲鳴、2回程度だったような気もするのですが。
そして、本日特筆すべきは、1幕終盤の、猊下がヴォルフに白いカツラを投げつけられる場面。カツラは猊下の胸元に真っ直ぐ飛び……なんと猊下、両手でそのままキャッチ!更に暴れるヴォルフを眺めながら、なんと抱えたカツラにそっと鼻を寄せてくんくんと匂いを嗅いでいるではありませんか。
猊下、そんなにもヴォルフを愛していたなんて……(^_^;)。お蔭でこちらはすっかり笑いのツボにはまり、しかし最前列故、真ん前で山崎ヴォルフが「自由だーっ!」の絶叫等演技していたので、笑うに笑えず大変でした。
2幕の「神よ、何故許される」での「猿でも!」や「創り出す!」の叫びは前回観た時(12月4日)よりはやや控えめだったような気がします。それでも劇場中に叫びが轟いていたことには相違ありません。

他の印象に残ったキャストや場面について。
今回のアマデは亜美ちゃん。初日以来の再見でした。彼女のアマデもまた、山崎ヴォルフより少しだけ精神年齢は高い感じなのですが、でも不思議と対等な印象を受けました。彼女は目力が凄いです。1幕の最後、アマデがヴォルフの腕に羽根ペンを突き刺して血で楽譜をしたためる場面での、目がらんらんと輝いた笑顔はかなり怖いと思いました。
亜美アマデ、終演後のトークショーでも残業(笑)し、抽選箱を持って再登場しましたが、そこでの武岡さんの紹介によれば、今回の公演が山崎ヴォルフと組むラストだったようです。可愛い声で「みんな、ありがとう!」とご挨拶していました(^_^)。
島袋コンスは今回は少し声が出しづらそうに聞こえました。彼女の得意な高音域は問題なく出ていますが、喉がややお疲れな感じ。ただその分、コンスの人生思い通りにならなくていらだち苦悩している感が強調された演技になっていたと感じました。
吉野シカネーダーは、ソロやメインで出てくる場面では当然華やかに目立ちまくっているのですが、アンサンブルに混じって歌っている場面でも、例えば足を一歩前に踏み出す等のちょっとした動きであっても軽く足を捻ってみせるなどのオカズが入っていて、メインでない場面でもしっかりシカネーダーとして演技していることがよく分かります。プリンシパルキャストたるもの、それができて当たり前と言えば当たり前なんですが、吉野さんが主演・助演を問わず幅広い演目に起用されている理由の一端を、そこに見たような気がします。
武岡アルコ伯爵は、胴切り場面では、日替わり(?)で何かあらぬことを口走ることになっているようです。今回は、
「こんなことならチョコレートケーキ全部食べてくるんだったーっ!」
と叫んでいました。それをウィーンで言うなら「ザッハトルテ」だろう、とも思いましたが、それだと「?」になるお客さんがいるかも知れません。そして山崎ヴォルフからはおでこにキス(^_^;)。そりゃヴォルフ、猊下の館から彼に蹴飛ばして追い出されても文句は言えないだろう、と改めて思いました*2
あと、コンスの姉妹達(ヨゼファ=三木麻衣子さん、アロイズィア=秋園美緒さん、ゾフィ=徳垣友子さん)の「汚れ」(もちろん汚いという意味でなく人物像の)も、なかなか凄まじいものがあります。特にアロイズィア、本体が秋園さんという美女なのにメイクであそこまで不細工にできるのかと感心しきり(でも歌は上手い)。しかも貴女はお嫁に行った筈なのに、何故2幕でヴォルフ恐喝に参加を?と気になって仕方ありません。

終演後はトークショーが開催されました。ただ、トークショーと言っても、メインは抽選会と、山崎くん自身による景品の客席お届け(2階席にも!)だったので、あまり語ることはありません。詳しくは、仕事の早い東宝さんが、既に公式チャンネルに以下の映像をアップロードしてくれているので、そちらをご覧いただいた方が早いかと思います。
「モーツァルト!」12月18日トークショウ映像
ちなみに景品は、山崎くんオフィシャルTシャツ、オリジナルマイ箸(特注でスワロフスキーと山崎くんサイン入り)、出演者全員サイン入りパンフ、M!オリジナルクリアファイル(Quoカード付き)などでした。
1点のみネタを記しておきますと、トークショーの最後にサプライズということで、井上くんからのお手紙を武岡さんが朗読しました。そして何故かお手紙で、本番中のパ〇ツの柄を暴露される山崎くん(笑)。
「ちなみに僕はいつも黒です。あ、そんな情報は要りませんね?」
って井上くん……。お蔭で山崎くんの、
「パ〇ツのくだりは余計ですね」
等々とひたすら恥じらう可愛らしい姿が見られたわけですが、それで井上くんにお礼を言って良いかどうかは躊躇うものがあります(汗)。

*1:この場面では中川ヴォルフの色気が突出していたので、ごく個人的に「みんなもう少し色っぽく!」とこだわっています(笑)。

*2:アルコ伯爵が蹴飛ばして追い出したのは史実らしいです。