キャスト：ヴォルフガング・モーツァルト＝山崎育三郎 ナンネール＝高橋由美子 コンスタンツェ＝島袋寛子 ヴァルトシュテッテン男爵夫人＝涼風真世 セシリア・ウェーバー＝阿知波悟美 アルコ伯爵＝武岡淳一 エマヌエル・シカネーダー＝吉野圭吾 コロレド大司教＝山口祐一郎 レオポルト＝市村正親 アマデ＝坂口湧久
12月23日ソワレ、M!の帝劇前楽にしてマイ楽となりました公演の感想です。
……と言っても、実は舞台本編について、あまり書くことがなかったりするのでした(^_^;)。
両ヴォルフの比較は前のエントリに大方書いてしまいましたし、シカネーダーやアルコ伯爵の「本日のひとこと」も、マチネと同じだったりしましたので。
というわけで、以下、本編と直接関係ないことも呟くかと思いますが、ご容赦ください。
ソワレ本編のハプニングで私が気づいたのは、1幕のウェーバー家にヴォルフが招かれて、アロイズィアが歌おうとした時に、ヴォルフに近づかせてもらえないコンスが嫌がらせに、お鍋の底をおたまでカン！と引っぱたく場面。本来ここでは、セシリアママがコンスを睨み付けて咳払いをしてアロイズィアの歌へ、という流れですが、何故かセシリアママ、
「コ、コンクールにも出たことがありますの！」
と一言。多分、思わず「コンスタンツェ！」と名前を呼んで叱りそうになってしまったのかな？と推測しております(^_^;)。
他は特に、前楽（山崎くん楽）ならではのアドリブというのは、なかったように思います。そもそも山崎くん、アドリブを振られても、井上くんのように的確に振り返すのはまだ難しいでしょうし。
今回山崎ヴォルフを観て思ったのは、やっぱりこの子って天然なんだなあ、ということです。1幕の若い頃の場面なんて、心から自分の可能性を信じて疑っていなくて、自由を本能的に求めている癖に、自分が愛する相手でさえあれば、甘えたら受け入れられるのが当たり前だと思っていて。
ついでに自分をこれでもかと束縛、調教しようとする、コロレド猊下の独占欲の裏に、あんなに強烈な愛が隠されているなんて、想像すらしていないんでしょうね。
そんな天然な子が、才能は決して無限ではなくて、時に自分の血まで搾り取るものなのだとか、また、例え強い絆で結ばれた家族であったとしても、裏切り続けたら心が離れるものだとか、そういう現実を知るほどに壊されていく姿は、何て可哀想なんだと思わずにはいられませんでした。才能さえなければ、周りにでくのぼう扱いされながらも、何となくへらへらと可愛がられて生きていけたのかも、とも考えたりして。
でも何故か、最後に彼が自分一人の足で立って歩いて、命を削り尽くした上でアマデと心中する道を選ぶことについては、同情しないどころか、むしろすがすがしくすら感じられるのでした。
矛盾しているようですし、異論もあろうかと思いますが、彼が自分の影（アマデ）から逃れるのではなく、全てのしがらみを断ち切り、ある意味「自由」を手に入れた上で、ただ一人で影と向き合い選んだ結論だったわけで。だから、「人間」としては救われなかったとしても、「魂」としては救われたのではないか、と思うのです。
本編の話に戻ります。
この回を観て最も驚かされたのは、やはり楽を迎えた涼風男爵夫人でした。
実は山崎ヴォルフとの組み合わせで観るのは初めてだったのですが、「星から降る金」で何と熱っぽく（イヤらしい意味でなく）ヴォルフを誘うこと！井上ヴォルフにはここまでしていなかったように思うのですが……。
「私が子供の頃から目を付けている貴方なのだから、どんなことをしてでもウィーンに連れて行くわ。但し、貴方の意志次第だけどね！」
と言っているかのように聞こえました。……はっ、もしかしてこの男爵夫人、肉食女子？
自分的に、男爵夫人のスタンダード像としたいのは、香寿さんの方ではありますが。涼風さんのはこれはこれで「あり」だと思いました。自分の懐が深いのか、それとも節操がなさ過ぎるのかは分かりませんが（汗）。
それから、山口猊下。
前楽だからスペシャル、というのは特段なかったですが、猊下の声は、この回でもたっぷりと客席に浴びせられていました(^_^)。あと、何度観ても、猊下だけ色々な意味で大きすぎます。歌も演技も、彼の周囲だけ縮尺が不思議。これは決してフィルタが掛かっているせいだけではないと思うのですが……。
また、前回観た時には猊下が思わずキャッチしてしまった、山崎ヴォルフの白いカツラ。今回は猊下の足元にすら届かず、猊下の乗っている台の下にぽとん、と落下してしまいました(T_T)。山崎くん、自分の楽ということで気合いが入りすぎてしまったのでしょうか？ちょっと残念。
そして、この回は友人と、1階M列センターブロックの上手通路寄りに座っておりました。この席、もちろん音響的にも申し分のない場所でもありますが、2幕のエピローグで、猊下が真正面に立ってくれるという美味しい場所でもあります(^_^)。猊下の目線がばしばしと飛んできて、それだけで圧倒されてしまっていました。
カーテンコールの話は、当日の速報レポにも少し書きましたが、細かい所は公式動画を観ていただければ良いと思いますので、あまりこまごまとは書きません。
ポイントだけ申し上げますと、涼風さんがご挨拶の時に、自ら両手を挙げて拍手をパッ！とストップさせるポーズを取って見せて、「1度やってみたかったんです」と言ったのが可愛かったです。
また、山崎くんのご挨拶の中の、
「僕の人生の中で、不安やプレッシャーや恐怖、こんなに感じたことはありません。その分だけ悦びだったり、感動だったり、本当に幸せな時間を過ごさせていただきました」
という言葉が印象的でした。ああ、頑張っているんだね……。個人的には、彼が、初演メンバーに感謝、という主旨で、アッキーこと中川晃教くんの名前にも言及してくれたのが嬉しかったです。
あと、後から動画を確認した所、カットされてしまっていましたが、司会の武岡さんが2人の挨拶を終えた時点で締めにかかろうとした時、市村さんが、つとそれを止めて、亜美ちゃんを前に進み出させました。そして、亜美ちゃん、山崎くんのマイクでご挨拶していました。彼女は、最後のヴォルフとの追い出しカテコでも一言ご挨拶していたので、ヴォルフ同様、2回ご挨拶したことになります。
というわけで、公演終了後は、「私の今年のM!が終わってしまった……」という虚脱状態のまま、友人とディナーして午前様に。そして翌日は、千穐楽に頭の隅で思いを馳せつつ1日働いておりました。
そんなこんなでやっと、12月23日の2公演感想をアップすることができました。千穐楽に無事参加できた友人から聞いた話などもありますので、その辺りはまた明日にでもアップしたいと思います。
