日々記 観劇別館

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『ア・ラ・カルト2』感想(2010.12.11ソワレ)

キャスト
役者:高泉淳子 山本光洋 本多愛也 中山祐一朗(レギュラーゲスト)
楽家中西俊博(violin) クリス・シルバースタイン(bass) 竹中俊二(guitar) 林正樹(piano)
日替わりゲスト:今拓哉

1989年から毎年12月に青山円形劇場で上演されてきたというこの演目。2009年から一部キャストが入れ替わりリニューアルオープンされたそうですが、私は一度も観たことがなく、存在すら知りませんでした。
しかし、今回、懐具合と時間の許す限りはなるべく出演作を観ることにしている、今拓哉さんがゲストで登場されるということで、試みに観劇することになりました。

「役者と音楽家のいるレストラン」というサブタイトルのついた本作は、レストランを舞台に展開されるオムニバスストーリーで、シーンとシーンの間には、この作品の音楽監督でもある中西俊博さんらミュージシャン(お店の専属という設定)による、ジャズの生演奏が挿入されます。
また、2幕頭にはちょっとしたショータイムが設けられ、お店のギャルソンやミュージシャン、そしてゲストによる歌やダンス、その他諸芸が繰り広げられるなど、飽きることなく楽しい構成となっています。

ちなみにレストランでの食事シーンのフランス料理は全て本物を使っています。カクテルやワインも多分本物。つまり、お客に扮するキャストは毎日それらを食していることになります。ちなみにミュージシャンの皆さんにも、しっかりドリンクサービスがあります(^_^)。
観る前は、何故ア・ラ・カルト2は1日1公演しかないのだろう?と疑問でしたが、
「あれらの豪華料理を1日2回もいただいたら、キャストの身体にも予算的にもよろしくない」
のも、理由の1つではないかと考えています(笑)。いや、もちろん、円形劇場の客席に360°さらされる舞台空間で、あの少人数(上記キャスト表参照)であれだけのことを1日2回も演るのはしんどいに違いない、とも思いますが。

以下、ネタバレを避けつつレポート&感想にまいります。

公演はギャルソン姿の高泉さんの「レストランの正式リニューアルオープン*1」のご挨拶から始まりました。
その後ギャルソンの皆様が、次の場面のためにテーブルセッティングをするのですが、その手際が本職と見紛うほどに見事。しかも役としての演技(パントマイム)も見せてくれるので、飽きさせないのでした。

本編は、Aperitif, Plat Principal(以上1幕), Show Time, Dessert, Digestif(以上2幕)と言った具合にコースメニュー形式で構成されていました。

今さんは1幕後半のPlat Principal(主菜)から登場。薄い黄色のジャケットにグレー(だったと思う)のカットソー、下は濃い色のスリムパンツ(すみません、色の記憶がありません(^_^;))、首にはロザリオ型のチョーカーをつけてました。
まずは、高泉さんとの「○子の部屋」風ミニトークコーナー。昨日の公演では奥様も客席にいらしてたそうです。
高泉さんが「奥様とは一回り違って……」と言ったら、「一回りじゃありません、10歳です!」と言い直す今さん(^_^)。
役者生活のスタートであった劇団四季には、アヌイ等のストプレを演りたくて入団されたとか。入る前はストプレとミュージカルとは別部門だと思ってたそうで、初舞台こそ『ブレイキング・ザ・コード』というストプレの黒衣役でしたが、その後JCSジャポネスクバージョンのヘロデの後ろに侍る花魁役(!)やCATS等に出演し、次第にミュージカルへ……という話もしていました。
個人的には高泉さんの、
「自分も『ユーリンタウン』などのミュージカルに出たことがありますけど、ミュージカルの稽古場って、他の分野の演劇と比べて汚くないんですよね。空気が綺麗なの!」
という発言が興味深かったです。ストプレ畑と稽古場から作り方が全然違うのだろうか?などと想像してみたりして。

CATSから1フレーズだけ歌を披露した後は、高泉さんと二人でレストランのお客に扮しての即興芝居へ。ここで今さん、グレーのスーツにお召し替え。最初はレストランのメニューに基本の台詞や進行表が書いてあったらしく、メニューを片付けようとするギャルソンとの攻防戦になってました。
しかし、途中で話が急展開するポイントで、「ここからは好きに話せ」としか書いていない台本になったようで、ついにギャルソンに「メニュー要りませんね〜」と宣言され、メニュー回収(^_^;)。
今さんのアドリブですが、ご本人のお人柄からかアドリブも大変に真面目なので、かなりの部分は高泉さんがリードしてました。私、今さんよりは年下なのですが、年上である奥様が彼に落ちた気持ちが、少しだけ分かる気がいたします。
普段の舞台ではまずやらないであろうポーズも取る羽目にはなっていたものの、無事に決められたオチまで行き着いた今さんは、心底ホッとした顔をしてました。

10分の休憩時間には、ロビーでドリンクサービスが提供。キリンの午後の紅茶とジュースがフリー、ワインは有料(300円)でした。帰宅後に過去の公演情報に目を通した所、昔はワインもフリーでしたが、道交法の強化に伴い「飲んだら乗るな」な人が安易に飲まないよう、有料化されたようです。自分の場合、外では弱いお酒しか飲まないことにしているので、今回はワインは見送りました。

2幕頭のShow Timeでは、高泉さんのみならず、山本さんら、その他のキャストの皆さんも、それぞれに一芸を披露されていて、絶妙なショー空間を作られていました。
今さんもソロと合唱を各1曲披露してました。黒タキシード姿で(笑)。歌の声量が明らかに円形劇場の空間に有り余っていました。ソロの方の曲名が、洋楽だという以外に何だか分からないのが残念です(プログラムでも伏字になっています)。
これ以外にも、2幕で今さんが登場する場面がもう1つありましたが、詳述は省きます。思い切り気障な台詞を呟く前に、2拍ほど躊躇ってから口にしたのがちょっと可愛かったです。

そんなわけで、今回今さんが素敵だったのは言うまでもないですが、高泉さんの七変化ぶりも凄かったです。シーン毎に年齢、職業、そして性別までも全く異なる役柄を演じて、1つも違和感なし。何という芸達者。
音楽も、演技の邪魔にならず、それでいて聴かせどころではしっかり聴かせてくれる演奏テクニックを堪能いたしました。中西さん、竹中さん、クリスさん、林さんそれぞれのソロが素晴らしかったです。

笑いどころ、泣かせどころ、そして聴かせどころがまさに満載の舞台だったと思います。キャスト、ミュージシャン、そしてスタッフの皆さん、楽しい時間を本当にありがとうございました。

*1:キャストは昨年から一新されていますが「開店準備中」だったらしいです。