日々記 観劇別館

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『ウーマン・イン・ホワイト』感想(2007/11/18マチネ(初日))

マリアン・ハルカム=笹本玲奈 ローラ・フェアリー=神田沙也加 ウォルター・ハートライト=別所哲也 パーシヴァル・グライド卿=石川禅 アン・キャスリック=山本カナコ フレデリック・フェアリー=光枝明彦 フォスコ伯爵=上條恒彦

アンドリュー・ロイド=ウェバーの最新作『ウーマン・イン・ホワイト』を観てきました。
青山劇場へ行くのは初めてで、1階L列の下手ブロックでしたが、なかなか観やすくて音響も良い劇場だという印象でした。ちょっと女子トイレは少なそうでしたが(^_^;)。
パンフを買って眺めていたら、光枝さんの紹介ページの応援コメントの主として山口さんの名が!内容は至って普通に大先輩をリスペクトするもので、いかに不思議ちゃんな文章を得意とする山口さんでも、やはり自分の事務所の所属俳優でもある方にあまり怪しいコメントは書けなかったんだろうな、と想像していました。

さて、演目の感想に戻りますと、ストーリーは「火サス」のようにベタな謎解きやどんでん返し満載で、ある程度次の展開の予測が付いてしまうのだけれど楽しかったです。1幕の前半まではちょっと展開がたるくて、1幕後半から怒濤の快進撃で2幕ラストまで畳みかけるという感じでした。いや、たるかったのはマリアン、ローラ、ハートライトの3人の平和で穏やかな日々の中に、密やかに緩く三角関係が形づくられていくまでの場面なので、物語において無くては成らない場面なのですが。
また全体に、ダンスよりは音楽にウェイトが置かれていると思いました。ただ、ある曲に心を鷲づかみにされるようなことは今回は無かったです。目立ったダンスシーンは1幕のどんど焼き(仮)*1と、2幕のマリアンの悪夢と、同じくマリアンがロンドンで騙されてカツアゲされ身ぐるみ剥がされる場面位だったでしょうか。

登場人物の中で強烈だったのは石川禅さん演じるグライドでした。登場する直前にハートライトが白いドレスの女に「グライドは非道い男」と聞かされる場面があったので、多少はそのマイナスフィルタがかかっていたのかも知れませんが、とにかくグライドが初めて舞台に姿を現した瞬間から腹黒さたっぷり。MAのルイ16世の時には癒し系だった禅さんの微笑みが、あれほどまでに胡散臭く感じられる日が来ようとは(ジャベールはあまり笑わないので除外)。しかも冷酷・強欲・凶暴の三拍子揃ってますし。
主演の玲奈ちゃんですが、マリアンはやや年長の役(20代後半〜30代前半?)ということもあるのか、出てきた瞬間おばさんくさくてびっくりしました。彼女、声が綺麗で声量もあるし音外さなくて安定感抜群な歌を聴かせてくれて好きなのですが、時々高音部で力入りすぎな歌い方をするのだけが気になります。玲奈ちゃんの歌唱力ならそんな歌い方しなくても行ける筈なのに何故?と思うのですが。それでも「オール・フォー・ローラ」等のソロもかなり歌いこなせていたし、前向きで行動的なマリアンの役柄も彼女に合っていて良かったです。
沙也加ちゃんの歌は通常音域は彼女のお母様を彷彿とさせるややハスキーな声で良いのですが、ソプラノがあまり出てないなあ、と感じました。特にマリアン、ローラ、アンの三重唱で1人だけ明らかに声が通っていなかったのが残念。雰囲気は実に可愛らしいお姫様で良かったのですけれどね。
別所さんの歌は初めて聴きました。暖かみのある良く通る歌声で、やはり安定感があって好感が持てました。あと、ネタバレになるので詳しくは書きませんが、マリアンとローラの間でのハートライトの心の揺れ動きが何とも言えず自然でした。
アンはローラにそっくりという設定。役者さんの顔だけ見ると「どこがやねん」ってツッコミ入れたくなる(ついでに歌も山本さんの方が声量があるような……)のだけど、演出の上でしっかりとそっくりに見えたのは凄いと思いました。
光枝さん演じる、主人公姉妹の叔父様(父親の弟)は、彼女達にまつわる重大な秘密を抱えているのですが、彼女達のためにしてきた筈のことが全て裏目に出たためにひっそり悩んでいたんだろうな、と気づいたのは終演後しばらく経ってからのことです(遅すぎ)。
上条さんのフォスコ伯爵、絶対善人ではあり得ないのだけれど、かといって悪党にもなり切れなかった所が妙にツボでした。悪党なんだけどグライドよりどこか冷めていて、自分のこともしっかり大事にしていたのがプラスにつながったのかも知れません。

カーテンコールでは初日ということで玲奈ちゃんのご挨拶がありました。挨拶の途中、感極まったのか一瞬涙声になったのを見て、玲奈かわいいよ玲奈、と心の中でつぶやいていた私。別にそのためではないと思いますが、会場の半分以上がスタオベしてました。

*1:要は収穫祭のことです。