日々記 観劇別館

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『マディソン郡の橋』感想(2018.3.4マチネ)

キャスト:ロバート=山口祐一郎 フランチェスカ涼風真世 マリアン=彩乃かなみ マイケル=石川新太 キャロライン=島田彩 チャーリー=戸井勝海 マージ=伊東弘美 バド=石川禅 others=加賀谷一肇

プレビューを含めて3回目の『橋』観劇でした。
この演目は、マリアンのソロ、あるジャズシンガー(伊東さん)のソロ(ラジオから流れる音楽の設定)、2幕冒頭の共進会のお祭り騒ぎ、バドが妻との出会いを「俺にしてみりゃお姫さま(だった)」と回想するソロ、そしてチャーリーとバドのデュエットなど、主演2人以外にも心にしみるアメリカンな雰囲気たっぷりのナンバーがいくつもあります。
特に戸井さんと禅さんのデュエットは死にゆく者、そして亡くなり墓地に葬られた後も生者を見守り続ける者の視点に立った曲ですが、『橋』の原作に準拠すると確か、フランチェスカはバドと同じ場所には葬られない筈なので、そのことを思いながら聴くと少しさみしい気持ちになりました。

『橋』の歌唱については影コーラスも含めて全9名のキャストのみで回しているとのことですが、全く薄い印象は抱かず、むしろ重厚感さえ覚えるのは不思議です。
また、主役2人の歌唱についても、各種インタビューでご本人方が語られているとおり1曲の中で拍子やテンポや音程が目まぐるしく変化したり、アカペラから途中で有伴奏に移行したりと、さり気なく複雑で、技巧的な歌唱力が要求され、しかしそれ故にとてもドラマチックなものとなっています。
小品ではあるものの、音楽の素人から見ても結構評価されて良い作品だと思うんですが……どうなんでしょうね。

ーーと言いつつ、所詮ミーハーなファンとしては、1幕終盤の、
身体を清め勝負ワンピースをまとった美しいフランチェスカ→堪らずロバートが、フランチェスカを抱き締める→2人、熱く盛り上がる→マージから電話が入る→フランチェスカ、蕩けそうになりながらも電話を取る→ロバート、そう簡単にクールダウンできず手も離せず焦れる、焦れる、焦れる!
この辺りの一連のロバートの仕草の流れにどきどきしてしまったりするのです(^_^;)。
ここで焦らされるからこそ、その後の「旅は、あなたへと至る」があり、この2人の関係がただの道ならぬ恋に終わらないものとなるわけですが。

ついでに、プレビュー初日で2幕の翌朝シーンを見た時「ロバート、何故きっちり着衣?」とツッコミを入れましたが、逆にあの1幕エンディングを経てここまで清潔感を保って凄い!……と思わせておいて、その後のコーヒートークで声だけできっちり色気を出してくる山口ロバートはなかなか稀有な存在だとも思います。
なおかなりの失礼を承知で申しますと、ミュージカル役者の皆さまの中では山口さん、どちらかと言えば不器用な枠に入ると思っていますが、その歌声が持つ説得力の飛び抜け方は本当尋常ではございません。

それから、今日は、2幕のフランチェスカのイタリアでの日々の回想、ロバートが一緒に行こう! フランチェスカ! と呼びかけてそんなことはできない! と言われる場面、そして死期の近づいたロバートの恋人への色あせぬ思い、以上3つの場面の歌声を聴きながら目に涙が滲んでいました。決して後悔はしていないが、あまりにもままならぬ人生の甘みと苦み。この物語はたまたまラブストーリーですが、恋愛絡みでなくてもこの種の甘みと苦みに関して、人生におけるいくばくかの記憶が呼び起こされたのかも知れません。

最後にこの公演について。とにかく少しでも初日に近い日程でチケット確保したくて取ったのですーっかり忘れていましたが、e+貸切公演でした。
なので主演2人のご挨拶があることを全く予測しておらず、何だか得した気分に。
山口さんが「イー、プラス!」と両手で+のポーズ*1を取って現れたのを受けて、涼風さんも同じポーズで決めていました。
ちなみに山口さんの本日のご挨拶では「日比谷公園の春の花が綺麗です」とおすすめしてましたが、現在足が不調なのと、終演後の空腹に負けたのとで公園までは足を伸ばせず。暑いぐらいに暖かい日だったので、さぞ花が綺麗に咲き誇っていたことだろうと想像しています。

*1:スペシウム光線のポーズに近いです。