日々記 観劇別館

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『クリエ・ミュージカル・コレクション』感想(ネタバレ注意)(2014.1.18ソワレ)

出演:
石井一孝 瀬奈じゅん 山口祐一郎 涼風真世 中川晃教 田代万里生 知念里奈 今拓哉

先週1月11日に引き続き、再び『クリエ・ミュージカル・コレクション』(クリコレ)を観に行ってまいりました。2回目にして今回がマイ楽となる予定です。実はあと1回行けそうなチャンスはあったのですが、重要な仕事の予定と重なってしまい泣く泣く断念しました(>_<)。

劇場入りする前に日比谷シャンテのアクセサリー屋さんに立ち寄り、今回のコンサートとタイアップした「キャストモデルアクセサリー」のブレスレットを見せていただきました。山口さんモデル、試着してみると思いの外可愛くて上品だったので大変に心が動いたのですが、お値段が帝劇S席2回分弱と知りお財布と相談の結果、我慢の道を選択することに。後ろ髪を引かれつつ逃げるように劇場に入りました。

以下、曲名などネタバレしまくりますので、これから初見予定の方はご注意ください。

本日のオープニングMCは知念さんでした。
「私の『コレクション』は『ジキル&ハイド』の『その目に』です」
という内容でした。確かミュージカル初挑戦演目だったと言っていたと思います。

トップバッターの山口さんは今日もパワフルな声でシャウトしてました。スリムジーンズに包まれた長い脚と意外に柔らかい身体を誇るかのようにかなり開脚して歌ってましたが、内股が似合わない曲だから意識的に外股を心掛けているのかも?と思いながらじっくり鑑賞しました。

前回も思ったのですが、こういうロック調あるいはポップス調の曲に関しては、カズさんやアッキーの歌い方の方が自然でこなれているような気がします。山口さんに続けて2番目に登場したカズさんの「Autobiography」が爽やかなポップス調だったので、特に強くそう感じたのかも知れません。
しかし今回の山口さんは、かなり良い感じに崩しつつ派手にシャウトしていて素敵でした。

山口さんが歌唱されたナンバーでは、今回、1幕でTdVの「愛のデュエット」が披露されていて、あれ?前回は2幕で歌っていなかったっけ?と少々戸惑うなど。このコンサート、曲目だけでなく、曲順も所々変更されていたように思います。

ただ、今回観て前回の記憶のいい加減ぶりも確認しましたし、また、2幕で歌われた「虹」や「闇が広がる」(前回は「私が踊る時」)の曲順はそんなに変わっていなかった気がするので、やはり「愛のデュエット」は前回も1幕だったかも知れません。すみません。
2幕の「虹」は何と言うかもう、正統派の二枚目を甘く演じきっていました。
2幕アンコールの「抑えがたい欲望」は、本公演の時にも何度かこういうことがありましたが、頭が空っぽになり、ただひたすら舞台上の山口伯爵の歌声に打ちのめされ、すっかり魂を持って行かれる状態になりまして。歌い終わると、客席からは当然のように大拍手、ショーストップ。隣の席の方はハンカチを眼に当てて涙ぐんでいらっしゃいました。
一転、TdVの2幕フィナーレでは山口さん、いつものふわりと温かく弾けるような笑顔でご登場。出演者の中では明らかに「ボス」の立場の筈なのですが、圧倒感ではなく優しく浸透するような存在感を終始保たれていました。
万里生くんとの「闇が広がる」については後述します。

以下、山口さん以外の出演者の皆さまについても少しずつ記しておきます。

まず、何と言っても今回の公演で凄いと思ったのは万里生くんの声量でした。オペラの舞台と同じでマイク要らんやろ、あれ、とすっかり圧倒されていました。万里生くんの歌声、贅沢を言えばもう少しカリスマ性を帯びて欲しいと思いますが、声質はどちらかと言えば好きな方です。

凄まじかったのは、2幕中盤で披露された、山口トート・万里生ルドルフによる「闇が広がる」です。
トートとルドルフというのは、役柄の上ではトートがルドルフの葛藤に付け込み破滅させるので、もちろん最後はトートが圧倒しなければならないのですが、この場面、ルドルフ役者の実力によってはトート役者が保護者あるいは単に胸を貸すリード役のように見えてしまうこともあります*1
しかし、今回の山口トート、万里生ルドルフに対しては対等に受けて立ち、ガチンコで駆け引きしているという印象でした。ちょっと油断すると圧倒され引きずり下ろされてもおかしくはないという緊張感に満ちた、実にびりびりした空気の漂うデュエットで。終わった時には拍手でショーストップ。山口さん、最後にトートが左手をルドルフに突き出している決めポーズから、ぐぐぐっ、と満身の力を込めた握り拳を作って見せて客席の笑いを取りつつ、万里生くんと力強くハイタッチして、やったぜ!という感じで捌けて行きました。
実は『エリザベート』本公演で万里生ルドルフを観た時には、ルドルフとしてはちょっと最初から最後まで熱量が高すぎるかな?という印象も抱いていたので、個人的には他の公演日で披露されたというアッキールドルフによる「闇が広がる」を聴いてみたい、と思っていましたが、思いがけず素晴らしいデュエットを堪能できて良かったです*2

万里生くんと言えば、1幕最後のTdV1幕フィナーレ再現寸劇では、万里生くんがヘルベルト役、今さんがクコール役を務めていました。
「我が息子も嬉しいでしょう」の場面で山口伯爵に○首を突かれた上、お尻にタッチされる万里生ヘルベルト(^_^;)。ただ、これは理生くんヘルベルトの時も似たり寄ったりのことをやられていたように思います。更に万里生ヘルベルト、アルフ役のアッキーを背中から抱っこ、そのまま軽くリフトして客席から拍手をもらっていました。

そのアッキー。1幕フィナーレでは、途中、教授と伯爵のやり取りに思わず笑ってしまう場面もあり。息子さんに抱っこされたばかりでなく、伯爵に徹頭徹尾弄ばれ続けていました。こういう時の山口さんは素で楽しそうで、頭の中で色々悪戯を考えていそうな目つきがたまらないのですが、それはさておき(^_^)。伯爵、スポンジを投げる時、フェイントを掛けていつもと全然違う方向に投げてましたし(^_^;)。当然アッキーはキャッチできず。それだけ弄ばれた後で伯爵ロングトーンに合わせてスポンジ掲揚の決めポーズを取らないといけないなんて、役者さんって何て大変なお仕事、と、そこだけ冷静な目になったりしながら微笑ましく客席から見守っておりました。
そして、今回2幕の序盤で、前回は聴けなかったアッキーの「残酷な人生」を聴けて幸せでした。曲自体はそんなに幸せな内容ではありませんが、こういう心を切り刻むようなヴォルフのナンバーを聴くと、やはりマイ・ベスト・ヴォルフは彼であると実感せずにはいられません。

石井カズさん。何と言うか、きちんと舞台の上での「居方」を心得ている方だなあ、と思いました。山口さんとは違う意味で、客席・共演者・オケ・進行スタッフの空気を読んだ自然な立ち居振る舞いに好感が持てます。

涼風さん。美声もさることながら、安定感が半端なかったです。どちらかと言えば魔性の女・美魔女な印象が強いですが、1幕で歌った「42nd Street」ではどこか男役っぽい拵えで。こういう役もまだできるんだ、と思いつつ観ていました。

瀬奈さんの「キッチュ」の客席降りは、前回座った後方の席からは一部始終見渡せたのですが、今回は前方の席だったので、途中でちょっと置いてけぼりを喰った気がして残念。でも可愛かったですよ(^_^)。彼女の声や雰囲気に合うナンバーのセレクトも絶妙だったと思います。
昨年上演された『エニシング・ゴーズ』は作品としてはそれほど好みではなかったのですが、今回瀬奈さんの明るく嫌味がなく風通しの良い歌声を何曲か聴いて、ああ、こんなに良い歌が揃っていたんだなあ、彼女のリノで再演あったらまた観に行こうかなあ、と少し思いました。

それから知念さん。ミュージカルに出始めた頃は舞台降板事件などであまり良い印象を持っていなかったのですが、サイゴンレミゼTdVと観てきて、改めてミュージカルの舞台で大きい役割を担う役者さんの一人になったのだなあ、と今回のコンサートで実感しました。歌も安心して聴けますが、「Cinema Italiano」の椅子を使ったダンス(脚が綺麗!)を観てそう思った次第です。

そして、クリコレ後半日程から登板の今さん。他の方が少なくとも2曲は自分の持ち歌(演じた役の歌)を歌っているのに対し、歌った曲が全て他の方の持ち歌でした。エリザや三銃士には別の役で出演していたので、全くご縁のない歌ばかりというわけではありませんが、どれもこれも歌いこなしていたことに心から称賛の拍手を送らせていただきます。
特に「ありのままの私」。ステージに膝を斜めにした女座りで登場し、その後ステージ上を歩き回る時にも終始内股で通し続けていたのは見事でした。

……こうしてとても楽しかったコンサート終演後はしばし陶然とし、惚けておりました。夜の街を歩き、電車に乗るうちに少しずつ我に返り、山口さんの舞台にはこれでもう4月までお目に掛かれないのか、としょんぼり。でも待ち続けた昨年1年間のことを思えば、なんくるないさー!な心持ちでおります。

最後に、当日のセットリストを記しておきます。ただ、曲順は一部いい加減な可能性がありますのでご容赦ください。

【1幕】

  • オープニングMC:知念さん
  • 我を信じよ!(三銃士)(山口さん)
  • Autobiography(トゥモロー・モーニング)(カズさん)
  • 42nd Street(42nd Street)(涼風さん)
  • 愛さずにいられない(エニシング・ゴーズ)(万里生ビリー)
  • キッチュエリザベート)(瀬奈ルキーニ)
  • Every Day(トゥモロー・モーニング)(万里生くん)
  • 愛のデュエット(ダンス オブ ヴァンパイア)(山口伯爵・知念サラ)
  • ひとりは皆のために(三銃士)(今アトス・アッキーポルトス・カズさんアラミス・万里生ダル)
  • あの夏はどこに(三銃士)(今アトス・瀬奈ミレディー)
  • まるちり〜握った拳に神は宿る(SHIROH)(アッキー)
  • 星から降る金(モーツァルト!)(涼風さん)
  • ありのままの私(ラ・カージュ・オ・フォール)(今さんザザ(!))
  • 少女の頃(イーストウィックの魔女たち)(涼風さん・瀬奈さん・知念さん)
  • Act 1 フィナーレ(ダンス オブ ヴァンパイア)(万里生ヘル、今クコール)

【2幕】

  • 残酷な人生(モーツァルト!)(アッキーヴォルフ)
  • その目に(ジキル&ハイド)(涼風ルーシー・知念エマ)
  • ユー・アー・ザ・トップ(エニシング・ゴーズ)(瀬奈リノ・万里生ビリー)
  • 虹(ローマの休日)(山口さん)
  • Look What We Made(トゥモロー・モーニング)(カズさん・万里生くん)
  • エニシング・ゴーズ(エニシング・ゴーズ)(瀬奈リノ)
  • 見果てぬ夢(ラ・マンチャの男)(今さん)
  • 闇が広がる(エリザベート)(山口トート・万里生ルド)
  • Cinema Italiano(DRAMATICA/ROMANTICA(映画『NINE』より))(知念さん)
  • キャンディードの嘆き(キャンディード)(カズさん)
  • 二人を信じて(ルドルフ ザ・ラストキス)(知念さん)
  • 時が来た(ジキル&ハイド)(アッキー)
  • 夜のボート(エリザベート)(瀬奈シシィ・今フランツ)
  • Seasons of Love(RENT)(山口さん以外全員)
  • 抑えがたい欲望(ダンス オブ ヴァンパイア)(山口伯爵)
  • Act 2 フィナーレ(ダンス オブ ヴァンパイア)(全員)

*1:別演目ですがTdVのサラとのデュエットにも少し似たような所があります。

*2:アッキールドルフもとても聴きたかったですが……。