日々記 観劇別館

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CONCERT『THE BEST』感想(2025.02.18 18:00開演 Cプログラム 帝国劇場)(追記あり)

キャスト:
井上芳雄 浦井健治 小野田龍之介 甲斐翔真 佐藤隆紀LE VELVETS) 島田歌穂 三浦宏規 宮野真守 木下晴香 昆夏美 涼風真世 平野綾森公美子
(Cプログラムゲスト)伊礼彼方 駒田一 保坂知寿 松下優也 山口祐一郎

帝国劇場クロージングラインナップのラストを飾るコンサート『THE BEST』に行ってきました。

劇場内には、過去の上演作品のタペストリーや、実際に使われていた着到板などが展示されていて、特に着到板は撮影・録音禁止だったこともあり、目を凝らしてチェックする人が列をなしていました。私も目を皿のようにして無事「山口祐一郎」「浦井健治」の名前を見つけられたので安堵。

今回、ちょっとだけ勇気を出してSS席に手を出したところ、入場後に「SS席特典最後尾」の案内があったのでそちらの列にも並びました。

特典は“Imperial Theatre 1966-2025”と銀で印字されたタンブラーでした。もったいなくて使えなさそう……。

他にもグッズ列、飲み物・パンフ列、そして入口には顔認証未完了の皆様の列なども形成されており、とにかく列、列、列だらけ! でした。

感想はネタバレ最小限で書いていますが、エンディング曲など一部の曲名を出しているものがあるので、ご承知おきください。

コンサートは、帝劇で上演されたことのあるミュージカル全53作のナンバーを最低1曲、フルコーラスもしくはメドレーで全て披露する、という内容でした。

帝劇で最初に上演されたミュージカルは『心を繋ぐ6ペンス』だそうです。え、『マイ・フェア・レディ』じゃないの? と一瞬戸惑いましたが、そう言えばマイフェアの初演は東京宝塚劇場で、しかも現帝劇のこけら落とし前でした。

今回色々なミュージカル曲を聴いてみて、近年上演されたものでも、観ていないものがかなりあることが分かりました。実は王様と私もマイフェアもルドルフも1789も観ていなかったりします。なんと恐ろしい。

あと、限られた曲数内でレミゼサイゴン、エリザ、M!からは複数曲がセットリストに入っているのは、通しキャストとCプログラムキャストでセトリを組んだ結果でもありますが、やはりこの4作品が観客を盛り上げやすいのでしょうね。

キャストはレギュラーもゲストも安心してお歌を聴ける方ばかりです。

女性陣レギュラーはモリクミこと森公美子さん、島田歌穂さん、涼風真世さん、平野綾さん、昆夏美さん、木下晴香さん(本日初日)。

モリクミさんについては、「え、涼風さんでなくモリクミさんがそれ歌うの?」と驚いた1曲が終盤にありましたが、聴き終えてみると、「なるほど、独立した曲として歌うとそういうしっとりと濃いアプローチもありなのね」となかなか新鮮な印象でした。

歌穂さんも歳を取らない方だなあ、としみじみ。「オン・マイ・オウン」がまた生で聴けて嬉しかったです。あの曲でエポニーヌの心象風景の銀の河が立体的に浮かび上がって見えたのは、歌穂さんと新妻聖子さんぐらいでしたので。

綾ちゃんは金髪になっていたので真面目に最初誰だかわからなかったです……。でも歌えば七色の声。

昆さんは、そうか、もう中堅どころだったんですね、と、幅広い曲に対応しているのを観て思いました。晴香ちゃんも凛とした強さと素直なかわいらしさを両方兼ね備えた歌声が、聴いていて心地良いのです。

男性陣レギュラーでは、特に井上くんは声量もあり声の質も強く、歌声だけですぐに彼の声と分かりますし、仕切りも全く危なげなく、これは重用されるよな、と今更ながら思いました。

浦井くんも歌は安定しています。隙をみてまた暴走しないかと危惧(期待?)していましたが全くそんなこともなく。本日はソロMCで帝劇デビュー(エリザベート)の思い出として、「『これが帝劇だよ』と常に後ろから優しく支えてくれた祐さん」について語っていて、大変になごませてもらいました。彼の祐さん愛は筋金入りだと思います。

また今回、三浦宏規くんのバレエで鍛えられたというしなやかで美しいダンスに感銘を受けておりました。歌も良いですし、今回出てくるたびに目で追っていたキャストのひとりです。

シュガーさんこと佐藤隆紀さんや小野田さん、甲斐くんは、最近のレミゼにご無沙汰なこともあり、あまり数多く舞台で観られていませんでした。今回、皆様の歌の上手さを堪能できたので、いずれはちゃんと舞台を観ようと思います。

ゲストの皆様は2幕からの登場でした。

1組目は松下優也くん、保坂知寿さん、伊礼彼方くん。

優也くんは先日『ケイン&アベル』で拝見したばかりでしたが、そうか、この演目だとあんな感じの主役で、初日が遅れた時は大変だったんだなあ、と歌やトークを聴いていました。

知寿さんは、そうか、ミセス・ダンヴァースは、普通のおばさまなのに哀しい執着と狂気を湛えていて、それが良かったんだよなあ、と思い出していました。トークで帝劇の神様がいる、という素敵なお話をされていて、「そうね、帝劇の怪人もいたよね」とつい連想してしまいました、ごめんなさい。

伊礼くんは、ルドルフの頃を知っているので「いやー、出世したなあ」と感慨深かったです。ただ一方でずっとどこかに危なっかしい所も残っているようにも見えて、そこは変わらないなあ、とも思いました。

そしてそして、ゲスト2組目は山口祐一郎さんと駒田一さん!

祐一郎さん1曲目、駒田さん、祐一郎さん2曲目、という順に楽曲が披露されていました。

祐一郎さんはやっぱり伯爵のあの曲(歌詞は今回のコンサートのスペシャルバージョン!)で登場すると、大げさでなしに空気感が全く違います。0番に立って歌っている間は客席まで丸ごと「劇城」の空気に包まれているようでした。それにしてもウエストの位置が高くて、あんなにフロックコートが映える人も滅多にいないな、と思いながら1曲を堪能。

で、劇城の跡地にスポンジとともに(笑)現れて、あっという間に強かで猥雑な空気感に変えてくれる駒田さんも相当な手練れだと思ったわけです。客席を盛り上げつつも決してやり過ぎず、しかも後を引かないのはなかなかできる技ではありません。

再度登場した祐一郎さんが披露したのは黄泉の帝王の曲。曲の後半で手ぶりがどんどん激しくなり、あの頃の「死」が降臨している! と思わせられる熱唱ぶりでした。

井上くんとの3人トークは、案の定、年齢が上の方から順に全く落ち着きがなく(笑)、祐一郎さんが数えの年齢で今年は古希にあたる(!)ということで、

「肩がコキコキ言う。その気持ちがいずれ(井上くんにも)分かるから」

「『コキデプエルトリコ』という動物がいるんですよ。カエルでね」(「鳥とかじゃないんですか!」という井上くんのツッコミあり。しかし何でそんな動物をご存じなのか)

等々のやり取りで爆笑させられ、更に井上くんの真ん前に祐一郎さんが躍り出て、井上くんに「被らないでください!」とたしなめられるに至り、腹筋崩壊😂

最終的にトリオ漫才と化した末に、駒田さんとともにダッシュで下手に捌けていき、井上くんに「捌けるの早っ!」と再度ツッコまれていました。

他のキャストが語っている「帝劇の思い出」は祐一郎さんからは一言も出ず……。ただ、井上くんにツッコまれて「それを語ったら3時間じゃ足りないから~」と答えたのは、多分かなり本音に近いのではないかと想像しています。以前に、ブランクを経て初めて帝劇のレミゼの舞台に立った時の喜びを熱く語っているインタビューを読んだことがありますが、そこから更に30年近くの蓄積があるでしょうし……。

トークの後は、「井上芳雄&(空欄)」になっている曲があり気になっていましたが、イントロが始まり井上くんと祐一郎さんが登場して「あ、やっぱり!」と。初演を観ていない私でも、このデュエットは心が沸き立ちます。そして歌い終わると力強い握手! 帰りに「上演が観たくなった」という観客の方のおしゃべりも聞こえてきて、わかる! と頷くなどしていました。

このゲストコーナーの後更に数曲が歌われまして、ラストはレミゼの「民衆の歌」。私的にはこの歌のセンターに祐一郎さんが立って歌っているだけで、2011年の震災後の心震えた上演とか、2013年のあの降板劇とかが頭をよぎって涙腺が緩むというものです。

コンサートが終わって振り返ってみて、やはり自分の帝劇の思い出は、たかだか20年弱ではありますが、あらゆるものが山口祐一郎という役者に紐付いており、彼を縦糸に綴られているのだと実感しています(脳内B.G.M.は中島みゆき「糸」)。

そして今回、新しい劇場でお会いできるよう頑張ります、とは決して口にしなかった祐一郎さん……。実は翌日の夜公演(Cプログラム最終日)も、途中からでしたが配信で観て、ああ、ちょっと声が枯れてるな、昼公演でも熱唱しすぎちゃった? と思いつつ、今のこの素敵な瞬間は宝物、ずっと当たり前に体験できるとは限らない、としみじみとしておりました。しかし、それでも。新劇場でもお目にかかれますようにと今は一縷の望みとして願いたいと思います。

(2025.02.23追記)

あろうことか涼風さんの存在と感想をまるっと書き漏らしていたので追記します。わざとじゃないんです、本当です😭

涼風さんはソロで1曲、他の方と組んで4曲ほど歌唱されていました。回転木馬に出演された頃はまだ舞台に興味ない頃だったな、観たかったな、などと思いながら聴き入っていました。確かM.A.かイーストウィック(マルシアさん、モリクミさんと共演)が初見だったと思います(自信なし)。

しかしやはり圧巻は井上くんとのエリザベートのデュエット曲です。忘れがちですがこのペア、M.A.でカップルを演じていて、その頃は井上くんがまだ若造過ぎて「なんかツバメっぽい」とかなり失礼な印象を抱いていましたが、現在の色々アップデートされた井上くんだとちょうど良い感じで拮抗していて、「今ならこのペアでトートとシシィ行ける!」と思いました。涼風シシィは賛否あった気がしますが、私はあの男前に波風に立ち向かおうとする所がかなり好きでした。

……以上、追記でした。涼風さんも新劇場でまた観られますように願っております。