日々記 観劇別館

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『ダンス・オブ・ヴァンパイア』感想(2025.07.27 13:00開演 博多座)

キャスト:
クロロック伯爵=山口祐一郎 サラ=フランク莉奈 アルフレート=太田基裕 シャガール芋洗坂係長 レベッカ明星真由美 ヘルベルト=ジュリアン マグダ=青野紗穂 クコール=駒田一 ヴァンパイア・ダンサー=伯爵の化身=佐藤洋介 アブロンシウス教授=武田真治

関東から博多座に遠征してTdVを観てまいりました。

様々な日程の都合で前々日の金曜日に友人とともに九州入りし、しかし確保チケットは27日昼公演分のみ、ということで、金曜日から土曜日にかけては門司港で遊んだり、太宰府天満宮に参詣したり、「九州国立博物館 - 特別展「九州の国宝 きゅーはくのたから」」で志賀島の金印や「圧切長谷部」などの刀剣、埴輪等々を鑑賞したりして、いい感じにテンションが上がったところで、いざ、博多座へ! と臨みました。

今回が実は初・博多座でしたが、上演が始まってまず、舞台と客席の距離のあまりの近さに驚愕。特にダンスシーンでのダンサーさんたちの肉体の躍動感の伝わり方が迫力満点! しかも、舞台中央から役者さんの歌声や台詞がクリアに通って聞こえてくるではありませんか。

舞台中央からクリアに、というのがどういうことかと申しますと、劇場や座席によっては、左右のスピーカーの音ばかりが強くて肝心の舞台からの音がいまいちパワー不足で不満を覚えることがあります。しかし今回、比較的前方席であったことを差し引いても、役者さんの肉体とそこから発せられる声がしっかり存在感を示していて、いや、博多座すごいな、これは遠征する価値のある劇場だな、と感慨に浸っておりました。

ちょうど、博多座公式Xで、まさに舞台の近さと音響の良さの秘密について解説しているポストがありましたので、以下、引用します。基本は、劇場が歌舞伎の上演を念頭に置いて造られていることが大きいようです。

さて、そんな素晴らしい博多座で観たTdVですが、とにかく
「楽しかった~!」
という一言に尽きてしまいます。

今期はブリリア城も含めて、観た公演の全てで教授を除くキャストが全て一緒だったので、他キャストについては改めて書くことがあまりなかったりします(祐一郎さんは例外)。ただ、ここで感想が終わってしまってもあれですので、今回のキャストで唯一初見だった武田教授について書いておきます。

武田教授……まさか禅教授よりじじむさいとは予測できませんでした。しかもクソジジイ度がダントツに高かったです。しわがれ声で、一見傘をステッキ代わりにしたりしてよぼよぼしている? と思わせておいて、動作は実に機敏、まだまだ若い者には負けておられんぞ感が満々でした。加えて良く喋りやかましい😅 1幕のお城への道行きでの客席降りで、アルフよりも喋るしゃべる、喋りまくる。とてもエネルギッシュな教授で、初代の市村教授のイメージがふと頭をかすめました。

また、地方公演ということで、ご当地ネタがあるかも? と期待していましたが、初日や楽日のように特別な公演でもなかったこともあり、そんなにふんだんにはなかったです。2幕で太田アルフが霊廟で教授を救助した時に「よかよ~」と言ったぐらいでしょうか。もし見落とし・聞き落としがあったらすみません。

書くことがないと言いつつ、これだけは書きたいのがクコール劇場。緞帳の奥からはかすかに掃除機の駆動音が聞こえる中、モップ2本遣いで早々にお掃除を済ませたクコール。そこへ舞台下手から日傘とサングラスを装着して現れたのはヘルベルト。無言でクコールに風船をプレゼントしたと思ったら、突如その風船がクコールの手の中でバーンと破裂! 満足げに優雅に下手へと去って行くヘルベルトと悔しがるクコール。さて、ヘルベルトへの逆襲は実現したのでしょうか?

ということで、今回の祐一郎伯爵について語ります。長いです。

祐一郎伯爵、かなりグレーのアイメイクが濃くて、妖しい雰囲気を漂わせていました。昔、具体的には初演の2006年頃は公演を重ねるごとにどんどん化粧が薄くなっていくのを感じていましたが、今はそんなことはありません。武田教授との組み合わせで観るのは初めてでしたが、対禅教授の時と特に対応の違いはなかったように思います。

何と申しましても、ブリリア城では一度も1階席で観られていなかったので、今回、たっぷりと1階席の特権を堪能しました。下手通路を入場してくる時も、上手通路を退場する時も、伯爵が近い近い。伯爵の移動は滑車でもついているのかというぐらい静かで滑らかかつ高速でした。改めて、どうして歩くだけであそこまで人外感を醸し出せるのかと不思議です。あんなのが爆音の美声とともにマントを翻して突然現れたら、そりゃ宿屋の狭い浴室も異空間になりますし、サラもぞっこんになります。「艶やかな女になーれー」と歌った瞬間、艶やかなのはあなたですよ伯爵、と思いました。

また、くどいようですが音が良い劇城なので、伯爵の歌声も取れたての新鮮なものをノンストレスでそのままいただけます、という感じで、とてもありがたかったです。1幕のエンディングのロングトーンも聴いていて気持ち良く、「抑えがたい欲望」でも佐藤影伯爵の体重の全く感じられないダンスと祐一郎伯爵のドラマチックな歌声のシンクロの堪能に、安心して目も耳もゆだねることができました。

なお、今思い出したので書きますと、1幕エンディングで太田アルフ、伯爵が投げたスポンジをブリリア城では観劇した2回とも受け取れずに落としていましたが、博多座城ではしっかりキャッチしていました。もし成長なら嬉しいですが、そうではなく演出変更でキャッチできるようにしたのであれば、「そんな所を演出してどうする?」な気持ちです。

今回しみじみ思ったのは、自分は舞踏会に思い切り颯爽と現れる伯爵の、マントを脱いだ状態の衣装が好きだということでした。薄手なので、ぴんと伸びた首から背中のラインがとても綺麗に見えるのです。目的を成し遂げた後、その姿で息子ヘルベルトと向き合ってあおーん! とやる姿もまた良き。

そしてクライマックスで一瞬伯爵が見せる、(恐らく想定内の流れとは言え)遠くを見やる少し寂しそうな表情もしっかり見届け、心の中にあるその瞬間の舞台写真に「ここポイント!」と赤丸を付けていました。

カーテンコールではいつもの客席全員での赤ハンカチを使ったヴァンパイアダンスが特に説明なしに始まりましたが、周囲を見る限り客席の誰も戸惑うことなくダンスしていたのはさすがです。私は……始まってから何とか振り付けを思い出して事なきを得ました。

その後、キャストが退場して拍手で再度お出まし、が何度かあり、最後は祐一郎伯爵、武田教授、駒田クコールの3人で登場されていました。こういう時、伯爵がクコールも教授も前面にどんどん押し出すのが良いですね。

ということで、初・博多座遠征は無事完了いたしました。

今期で祐一郎伯爵が見納めになるかも? と思い、たとえ大楽は観られなくとも見届けたい! と遠征を決めたのですが、終わってみると、
「ええと、これだけ最高の伯爵を魅せてくれているのに、これで見納めなんて、そりゃないよね?」
という心持ちになっています。

その後博多座TdVは7月30日昼の前楽で祐一郎伯爵楽、夜に城田伯爵で無事大千穐楽を迎えたようです。おめでとうございます。そして今期も素晴らしい時間をありがとうございました!