日々記 観劇別館

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『ダンス・オブ・ヴァンパイア』感想(2011.12.11マチネ)

キャスト:
クロロック伯爵=山口祐一郎 サラ=高橋愛 アルフレート=浦井健治 アブロンシウス教授=石川禅 ヘルベルト=馬場徹 シャガール=コング桑田 レベッカ阿知波悟美 マグダ=Jennifer クコール=駒田一 ヴァンパイア・ダンサー=新上裕也

今回のWキャスト組み合わせは、浦井アルフ・高橋サラ・新上Vダンサーでした。
座席は何と最前列で、上手サブセンの通路から3、4席目。伯爵の「神は死んだ」の退場時、通り道の真ん前ではないものの、伯爵との距離は2m程度。あの退場音楽のどうも歌謡ショーくさい伴奏とコーラスには未だにどうも違和感を覚えてしまうわけですが、人外オーラを漂わせながら、しずしずと足下に目線を落とすことなく舞台の階段を降りていく伯爵のデカさに改めて驚嘆しておりました。マントを羽織っているとマント無し時の1割増巨大化して見えるのは不思議です。
とりあえず伯爵関係の感想からまとめてまいりますと、本日は1幕からお声の調子が微妙にお疲れのように聴こえました。もちろんいつも通りしっかり劇場中に響き渡る声量は保たれてましたが、あれ?何となく声が引っかかってる?1幕ラストと2幕後半の聴かせどころに備えて声を軽くセーブしている?という印象と不安が拭えませんでした。
その2幕の聴かせどころ「抑えがたい欲望」で、不安は的中。伯爵、曲後半の「卑しく恥ずべき欲望こそが我らが支配者」のロングトーン直前の語り歌いのフレーズで、感極まり過ぎたのか、表情や声が何だか泣きそうで震えて詰まり気味だなあ、と思っていたら、何と伯爵の口から軽く咳き込む音が!
心臓が止まるかと思いましたが、大丈夫、我らが山口祐一郎なら必ず立て直してくれる筈、頑張れ、頑張れ!と固唾をのみながら見守っていた所、滅多に聞いたことのない雷鳴の如きパワフルな声で「我らが支配者ー!」の超絶ロングトーンが響き渡りました。そこから最後の「神になるのだ」までは全く危な気なし。舞踏会でも、どことなくいつもより声が出しにくそうでスタッカートが多め?と気になる所こそありましたが、ほぼ通常通りの伯爵を見せてくれましたし、カテコでも元気にサイリウムブレスレットを振り回しまくっていました。彼の歌には多分、今後一生付いていくとは思いますが、だからと言ってあまりドキドキするのは心臓によろしくないです(^_^;)。

以降、かなり要点のみに絞った感想となります。
浦井アルフは最前列で観てもやっぱりヘタレでビビりでした。綺麗な子なのにアルフになっている間は変顔も辞さず(笑)、しかも油断した拍子に「でんもねぇ〜、できないなぁ〜」等と言葉に訛りが。ということは、浦井アルフは都から離れた田舎の出身?等々と考えていました。そんなヘタレ・ビビりなのに、「サラへ」では強いサラへの愛をしっとりと歌い上げてくれます。
細かい所では、教授が霊廟で動けなくなった時に浦井アルフ、階下から足場をもたもたと懸垂し(これはいつも通り)、何故か首のマフラーの先を教授の足元に投げつけて助けようとしていました。うぅ、可愛すぎる。
教授を救助した後には、
教「そんなことでは100年経っても私の後継者にはなれん!」
ア「100年経ったら死んじゃいますよ!」
教「そうですよ、それが何か?」
という掛け合い漫才をしていました。「100年経ったら〜」の部分は確か2009年の時も言っていたような覚えがありますが、教授の居直りは初めて聞いた気がします。
あと終盤で高橋サラがアルフの首っ玉に飛びつく時、浦井アルフが一瞬お姫様抱っこのようにすっとサラの腰に手を差し伸べようとしていました。こんな細かい仕草をしていたのですね。
その高橋サラは、初日の時よりはだいぶ慣れたのか安定してきたと感じました。でも、「愛のデュエット」でちょっと覚束ない所があって、伯爵が優しく合わせるように歌っていたので、もう一声、と言った所でしょうか。
教授は、結構上手階段やステージ前通路での演技が多いです。レベッカに人違い成敗される前にいたのも上手階段ですし、お城への道行きでも上手のステージ前通路をぱたぱたと走っていました。まあ、他の登場人物もサラはお城に走り去るわ、シャガールも2度ほどダッシュするわ、ヴァンパイアさんは「今宵〜」と歌いながら通り過ぎるわ、しまいにはアルフが舞踏会の時階段下にスタンバイするわと何かと賑やかな場所なわけですが。浦井アルフ、背中から見ると結構肩幅が細かったです、というのはどうでも良い情報ですね、きっと。
それとヘルベルト。教授に指十字架で撃退される時、「覚えていやがれ!」と負け惜しみで叫び、教授に「江戸っ子かっ!」と突っ込まれていました。舞踏会で伯爵とサラが「永遠の命……」とデュエットしている間、愛しいアルフの背中にぴったり貼り付いて彼を狙っていたことを、今季初めて知りました。ごめんね、ヘルベルト。

それから今季、TdVのダンスシーンについてはダンスを良く知らない人のボロが出まくるので、あまり書いておりません。
強いて言うなら、例えば、確かに最近観て綺麗だと思ったロミジュリのダンスとは違うかな、と思います。伸びやかさ、爽快さ、それに動きの「間」といった、観客としてダンスを観てて気持ち良い!と思われてくれる動きの要素が、TdVからはあえて取り除かれているような印象です。
また、これはダンサーの力量には関係なく、振付に由来するものであるとも実感しています。こういうタイプのダンスに心引かれるかそうでないかは、本当に好みの問題だなあ、というのが最近つらつらと考えている所です。

最後になりましたが、幕間のクコール劇場には浦井アルフが「あんのー、すみません、トイレはどこですか?」と少々訛った口調で登場していました。このパターンの登場は以前禅教授もやってましたが、クコールからの帝劇トイレ案内も兼ねた実用的な会話になっています(^_^)。
トイレの会話の後、おもむろにクコールが浦井アルフの手を取って、懐からサラのスポンジを取り出し、1幕ラストの伯爵の「自由をーーーその手でーーーーー!」と歌いながらスポンジを掲げるあの振付を物真似してました。1幕と同様頭上にスポンジを高々と掲げながら退場するアルフの後ろにクコールが続き、1幕終了のインストを歌いながら伯爵の決めポーズ(^o^)。客席の爆笑と拍手に包まれながらクコール、「いっぺんやってみたかったんです」と照れ笑いしながら退場していきました。逆に今までこのネタがなかったのが不思議な気がします。