日々記 観劇別館

観劇(主にミュージカル)の感想ブログです。はてなダイアリーから移行しました。

YouTubeでジャベールを考える

先週のレミゼは実は母親を連れての観劇でした。母親は2006レミゼ(山口バル・綜馬ジャベ)も一緒に観ているのですが、以前から何度も「今回は綜馬さん出ないよ」と言って聞かせているのに、当日座席に座ってからも「あの人出ないの?」とこだわり続けていました。母よ、済まぬ……。「12月の『ライト・イン・ピアッツァ』のチケが取れたら一緒に行こうね」と約束しましたが、果たして無事取れるのかどうか。

さて、この週末のレミゼSPキャスト公演はチケットを確保しておらず、また、この台風なので、だらだらとYouTubeで過去のレミゼ映像を探索していたら、何と綜馬ジャベールの「Stars」と「ジャベールの自殺」があるではないですか。*1しばししみじみと堪能いたしました。
昨年観た時、綜馬ジャベールには「真っ直ぐさ」とか「信念」は感じても「熱さ」は感じませんでした。今回改めて映像でチェックすると、綜馬ジャベール、情熱はしっかりありすぎるぐらいに持っているのです。ただ、触ると火傷するようなものじゃなくて、表面は冷たくて、でも内面はふつふつ煮えたぎっていて入り込めないような、そんな種類の情熱。「冷たい情熱」と言ったら日本語としておかしいでしょうか?
で、今回もし出られていたら、自分的には「熱さ」で名高い今ジャベールと比較対照して観られたと思うのです。今ジャベールは未見ですが「触れたら火傷する」系の情熱を見せてくれそうなので、綜馬ジャベールとは真逆なのではないかと想像したりして。今年綜馬ジャベールがいたら絶対リピったのに、と歯がみしつつ、とりあえず、今ジャベールには7月最後の日にお目にかかれる予定ですのでひたすら心待ちにしています。

ところで、YouTubeには井上芳雄くんがライブ(2005年のライブらしい)で歌った「Stars」の映像も入っていたので何気なく聴いてみました。感想。……綺麗に歌えてるんだけど何かが違うっ!
何が違うのか色々考えてみましたが、恐らくは牢獄で生まれた囚人の子という境遇から神の正義だけを信じて這い上がった屈折とか、そういう背景が足りないんではないかと想像します。また、星の巡りというのは普通の人にとってはひたすらロマンティックなものですが、ジャベールにとってはもっと人生の根幹を形作っていて、「これがあるから俺は生きていられる」*2みたいな重要な法則なので、その辺の解釈にもずれがあるのでは?と思ってみたり。井上くんの場合まだ若い上、レミゼカンパニーではないというのも大きいかも知れません。
奇しくも石川禅さんが『月刊ミュージカル』2007年7月号の新キャストマリウスとの座談会で、

「この作品が恐ろしいのは、非常に素晴らしい作品なので、ただ歌っても、ストーリーは流れていく。それでは役者としての成長はない。考えることが勉強になっていくんです。」(p21の発言より引用)

とお話しされていましたが、多分レミゼの歌って他の演目にも増して、ただ綺麗に歌えるだけ、じゃだめで、作品世界やそれぞれの演じる役に対する解釈が、歌無しで見せるストプレと同程度かそれ以上に深く求められるんだろうな、という気がします。と言うわけで、井上くんにはもっと頑張ってほしいですし、現レミゼカンパニーの皆様にはもっともっと素晴らしい舞台を見せていただきたいと、欲張りな観客は願い続けるのでした。

*1:あえてリンクは貼りませんが、[Stars][Les][Miserables][Japanese]等のタグで探すと出てきます。

*2:何かこの書き方だと「一仕事の後の生ビール」みたいでどうかと思いますが(笑)。