日々記 観劇別館

観劇(主にミュージカル)の感想ブログです。はてなダイアリーから移行しました。

『ジーザス・クライスト=スーパースター』(ジャポネスク・バージョン)感想(2007/6/17マチネ)

ジーザス・クライスト=柳瀬大輔 イスカリオテのユダ芝清道 マグダラのマリア=高木美果 カヤパ=青木朗 アンナス=明戸信吾 司祭=阿川建一郎 田辺容 川原信弘 シモン=神崎翔馬 ペテロ=飯田洋輔 ピラト=村俊英 ヘロデ王下村尊則

劇団四季ジーザス・クライスト=スーパースター』(以下、JCS)のジャポネスク・バージョンを四季劇場[秋]まで観に行ってきました。
JCSは初見。「人間」イエス・キリストの最後の7日間を描いた物語で、山口祐一郎さんが劇団四季2代目ジーザスとしてデビューし、退団までの15年間演じていた作品というのがこの作品に関する最大の知識です。
劇場入りして最初に気づいたのが、舞台が客席側にかなりの角度で傾斜しているということ。あの傾いた舞台で演技するのは結構な体力勝負だと思います。
わずか1時間40分、休憩無しの舞台の中でめまぐるしく場面が展開していくので、JCS初心者としては物語の細部まで理解できたとはとても言えない状態でしたが、序盤から終盤まで、奇蹟を起こす力と民衆を惹きつける力とを手にしてしまった悩める青年ジーザスの「絶望感」「無力感」「孤独感」がひたすら奏で続けられているという印象でした。
ただ、私は非キリスト者なので、「あえて十字架に架けられること=民を救う為の神との契約」であるという概念を今ひとつ消化し切れていない感があります。また、キリスト教という宗教は、ジーザスの処刑と復活という流れがあって成立していると思うのですが、JCSでは復活せずにジーザスが息絶えて終幕となってしまいます。ジーザスは自らが「神の子」と呼ばれることを受け入れて十字架に架けられるのに、神が沈黙を持ってそれに答えるというのは実に重い結末です。

役者さんの話に移りますと、山口ジーザスを観た経験の無い山口さん贔屓(本日一緒に観た友人もそのひとり)としては、ついつい柳瀬ジーザスのそこかしこに、歌声も姿も超絶的に美しかったであろう若き日の山口ジーザスの幻影を追いかけてしまうことが多々あり、そこはひたすらごめんなさいをするしかありません。でも柳瀬ジーザスの歌声も力強く美しくて、感情移入して胸が押し潰されるような思いでした。
意外と良かったのはマグダラのマリアを演じた高木さん。澄んだソプラノが心地よいです。四季の女優さんってどちらかと言えば小柄で顔立ちも地味な方が多いのだけれど、ミュージカルにおいては歌えない美人より、地味でも歌える方がいいや、と思わせてくれます。
芝さんのユダはねっとりした持ち味でした。冴えないおじさんが美青年に屈折した感情を抱き、苦悩した揚げ句裏切ってしまうというシチュエーションの香りを濃厚に漂わせていて楽しかったです。
そして特筆すべきは、ヘロデ王の下村さん。登場時にまず真っ青なアフロ(所謂雷様ヘア)のカツラで出てきただけでも既に可笑しいのに、立ち上がるとドラァグ・クイーン風の退廃的なハイレグタイツ姿で動き回ってくれるので、大いに笑わせてもらいました。あれを昔は市村さんが演じていたこともあったんですね。市村さんがドラァグ・クイーンだったかは不明ですけど。

ということでJCS、躍動感あふれて充実した舞台だったんですが、どうも後何回か観てみないと込められたメッセージを正しく受け取れないような、そんな気持ちでいっぱいです。
JCSジャポネスク・バージョンの後は、エルサレム・バージョンを7月28日から1ヶ月間上演するそうなので、それもチケットが取れればですが一度ぐらい観に行ってみようかな、と考えているところです。