日々記 観劇別館

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『百年の物語 第一章』感想

1ヶ月近く前に購入した『百年の物語 第一章』のDVDをようやく鑑賞しました。

何不自由なく育てられた地主のお嬢様で、都会の女学校で大正デモクラシーの風も浴びた彩さんと、彼女に思いを寄せた2人の男性、成金の平吉さんと小作人の公太さんのお話です。モラルが重視された展開と1シーンの長台詞が、ああ、橋田壽賀子ドラマだなあ、という感じでした。

さて、鑑賞にあたり、初めから祐一郎フィルタ(何だそれは)がかかっている為か、どうも平吉さんに肩入れしてしまって仕方ありませんでした。
不器用で、妻への愛が深まれば深まるほどに墓穴を掘り、相手を傷つけていく平吉さん。妻のお腹に宿っているのが自分の子だと頭では分かっていながら、彼女の心がこちらにはないと知っているから、自分の子ではないと拒否する平吉さん。その揚げ句に妻に逃げられ、お母さまにびんたされても耐える平吉さん。一応あるお床入りシーンに全く色気がない平吉さん(いや、彩さんにとってはその時点では耐え難い暴力なので、実際色気は不要なのですが)。

そして彩さんが入獄している間に落魄した平吉さんの告白シーン。長台詞の演技を見事NGなしで撮り終えたことで有名なだけに、それまでの彼の数々の所業を綺麗に拭い去ってくれるかのような美しいシーンでした。
尊大で所有欲の塊だと思っていた相手にああいう虚飾を捨てた本音の告白をされたら、そりゃ女性はこっちを選ぶでしょう。この人を支えられるのは自分だけだ、と。なーんだ、結局正式な夫のもとに戻るのね、という見方もあるとは思いますが、彩さんが生まれて初めて自らの意志で選び取った人生に乾杯、という感じです。

とは言え、公太さんには同情を禁じ得ません。公太さんの夢の到達点には彩さんがいて、夢の実現の為に大好きな絵の道まで捨ててひたすらストイックに尽くし続け、最後に必ず自分を選んでくれると信じていたのに、「私にはあなたと夢を追う資格はない」、裏返せば「あなたは独りでも生きていけるでしょう」と言われてしまったわけですから。平吉さんも公太さんも、恋した女性の為に手段を選ばずまっしぐら、という点において本質は一緒だったのだろうけど、公太さんの場合、出会うタイミングが悪すぎたのだと思います。本当に人生ってままならないものです。

特典映像はちゃんとドラマが終わってから観ました。彩さんと平吉さんの披露宴シーンのメイキングを改めてチェックして、身長差が少ないことにびっくり。ちなみに菜々子さんは173.8cm(Wikipediaより)。隣の山口さん(186cm)が小さく見えます。
しかし特典映像の「彼さえいなければ僕は……」はそっくりそのまま公太さんから平吉さんに返ってくる台詞だと思うんですが?山口さん。でも、菜々子さんに日傘を差し掛けられて「わーい、うれしーなー(^^)」と小躍りしてるさまがとても43歳(当時)には見えず可愛かったので許します。