日々記 観劇別館

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『家族モドキ』感想(2023.08.05 18:00開演)

キャスト:
高梨次郎=山口祐一郎 木下渉=浦井健治 高梨民子=大塚千弘 木下園江=保坂知寿

3回目の『家族モドキ』を観に行ってまいりました。

開幕から10日経って、だいぶ舞台が安定してきた印象です。

上演時間が確か初日の時は18:00~20:10、本日は18:00~20:05(いずれも25分休憩を含む)と微妙に短くなっていましたが、どこか気づきにくい箇所をダウンサイジングしているのでしょうか。

お話は、最初に観た時の違和感よりは随分慣れてきました。あの結末について、今も素直に賛同できるわけではないのは一緒ですが、なぜ次郎さんが渉くんにあの言葉をかけるに至ったのかが少しだけ見えた気がしますので。

2幕序盤で民ちゃんが、ある事件が起きて動揺する渉くんに「私が恩返ししたい」と言う場面があります。その後、今度は次郎さんと園江さんが2人きりで語り合い、絶望のどん底にいる次郎さんに園江さんがかけた言葉がきっかけで、双方共に背中を押される流れになるのですが、結局のところ、当初園江さんの望みを批判していた次郎さんがそれを認めて推すような言葉を渉くんにかけるのも、「園江さんへの恩返し」でもあったのかも知れない、と今回観て思い始めています。そこら辺は民ちゃんと親子だなあ、とも。

ただ、渉くんの人柄が無意識に彼女を追い詰めた、とまで言う必要があったのかは、お芝居の台詞とわかっていても、そして最終的には渉くんの人柄を肯定していたとしても、どうなんだろう? と言う思いは拭えません。

また、今回、次郎さんと民ちゃんの親子関係に少し重点を置いて観てみたのですが、民ちゃんの恋愛がああいう状況になったのは、やはり相手が上っ面の優しさで騙すことに長けていたということだろうか? と考えました。そして図らずも次郎さんが「男を見る目がない」と腐していましたが、そもそも上っ面の優しさですら娘に見える形で示してこなかった貴方の不器用さが、娘の男を見る目が育たなかった原因なのでは? とツッコミを入れたいです。

あと、民ちゃんの母親であり次郎さんの妻であった女性について。あの子守唄を夫と一緒に歌っていたということは、恐らく夫に対する愛情はそれなりに強かったのではないかと思われますが、一方、夫と同じくそんなに愛情に器用な人ではなかったのではないか? とも想像しています。まあ、元をたどれば夫の女性遍歴などの行状が原因で、色々拗らせて自ら壊れてしまったと推測されますので、諸悪の根源はやはり夫な人なのだとは思いますが、何だか報われないですね。

なお、物語と直接関係のない点ですが、次郎さんの机上にある置き時計(目覚まし時計)。ずうっと時間が止まったままになっています。次郎さんはいつも腕時計で時間を見ているから良いのだろうとは思いますし、置き時計があの状態なのは彼の生活能力の低さの象徴なのかも知れませんが、作中の高梨家で起きている出来事が一体何時頃に起きているのかが謎なので、ふと気になった次第です。

今回、感想がツッコミどころばかりになってしまいましたが、1つだけ良いことを申しますと、何度観ても、4人のキャストの呼吸が絶妙で、そこはとても安心して観ていられるお芝居だという印象です。そしてこの4人だったらやはりミュージカルも観たいです。特に祐一郎さん、公表されているスケジュールにしばらくミュージカルの予定がないのはどういうこと? クリコンもメンバーから外れているし、クンツェ&リーヴァイ日本初演キャスト皆勤からも外れているけど、そろそろ歌ってくれてもいいんじゃない? と心の中で延々と呟いています(キモい)。

手持ちのチケットは残り1枚、東京千穐楽のみとなりました。身体に気をつけて、無事見届けられるようにしたいと思います。