日々記 観劇別館

観劇(主にミュージカル)の感想ブログです。はてなダイアリーから移行しました。

『My Story, My Song ~and YOU~』千穐楽感想(2022.5.22 13:00開演)

キャスト:
山口祐一郎 大塚千弘 吉野圭吾

5月19日に開幕した『MSMS』。惜しまれつつ、早くも千穐楽を迎えました。

劇場出入口には満員御礼の札が立てられており、客席に入ると配信用のカメラが何台か設置されていました。12列あたりの両端壁側の座席はやや視界が厳しそうな気配が漂っていましたが大丈夫だったのでしょうか。

千穐楽のゲストは吉野さんと千弘さん。
予想通り、仕切り役は千弘さんで、しかも祐一郎さんから小学校の先生に見立てられて「先生、次は捌けていいんですか?」等と頼られていました。やはり21日の舞台捌けミスが堪えていたのでしょうか……?

「配信あり」という制約があったためか、トークの内容はこれまでの中で最も収拾が付いていたと思います。ただ、下ネタはもう少し自粛しても良かったかも知れません。

以下、思い出しトークです。そのままの内容ではなく概要で、たまに細部が怪しいものもあるのでご容赦ください。

3人のつながりは?

祐一郎さん→千弘さんは、高校生から知っているというお馴染みのお話。祐一郎さん→吉野さんは『ジーザス・クライスト・スーパースター』(JCS)が最初だったようで、『ウエスト・サイド・ストーリー』(WSS)でも共演されていた模様。

なお、祐一郎さんですが、吉野さんとの初顔合わせの時に自分にあまりにも似ていたので、「うちの親父、また一個(子供を)外にこさえたのか?」と思ったそうです。その後は何回か吉野さんの細胞が入れ替わったので違ってきている、とも言っていましたが……。

吉野さんと千弘さんは『笑う男』の悪い人繋がり、という発言が何度か出ていましたが、あれ? デヴィットはともかくジョシアナって悪だったっけ? とひっそり謎に思っておりました。

 

昼公演と夜公演の間の過ごし方は?

祐一郎さん:お弁当を食べたら15~20分ぐらい横になって寝ている。これはトレーナーさんから教わったやり方。
吉野さん:自分は座ったまま眠る。横にならないようにとトレーナーさんから言われたので。
祐一郎さん:自分が教わったトレーナーさんはセ・リーグで連続優勝したチームを担当した後でパ・リーグのチームを担当し、そこも連続優勝したという方。座ったままだと首が疲れない?
(と、ここで吉野さんが、自分が椅子に背をもたれて脚を伸ばして寝ている姿を再現したので、脚のリクライニングの角度を指導して)今はそれで良いかも知れないが、そのうち何年か経つとぼくがそうしなければならない理由が分かると思う。
吉野さん:WSSの時にアンサンブルで指パッチンしていたら、先輩に「おまえ、それじゃダメだ!」と指導された(と、先輩の怖い口調の物真似で再現)。
祐一郎さん:(配信に配慮してか、乱暴な口調から丁寧な口調に直すように指導した上で)吉野さんは後から入ってきて歌も踊りもできたから、それで嫉妬されたのだと思う。
吉野さん:その時は、自分が全て悪いのだと信じていました。
祐一郎さん:これもある人に言われた言葉だが、緊張して苦しいと思ったら今までに一番緊張した時のことを思い出そう。それ以上に苦しいことはないと思えて気持ちが楽になる。と言われた。

 

3人の共演作について

祐一郎さんと千弘さんとで、昨日も話題に上った『レベッカ』の「Ich空気椅子事件」と「マキシム釘付けドア蹴破り事件」について再度語られました。

『三銃士』では、階段落ちなどの激しいアクションを務めた末に吉野さんのアキレス腱が切れた時、その音が(舞台袖にいた筈の)祐一郎さんにも聞こえた、という話がありました。その後吉野さんは、つま先が動かず踵だけで歩く状態で帝劇楽まで出演を続けましたが(博多座公演では原慎一郎さんに交代)、舞台袖に車椅子でスタンバイしている時には祐一郎さんが車椅子を押してくれていたとのことです。
 →この件ですが、当時、「吉野さんに東京楽まで無理をさせた」東宝さんに憤りを覚えていました。あれを美談にしてはいけないと今も思っていますが、かの作品での祐一郎さんと吉野さんの関係の良さを象徴するような息の合った演技も覚えていて、事情は東京楽まで知らなかった(気づかなかった)ものの実は負傷当日の、恐らく負傷後の処置や続行判断等のために休憩時間が延長された公演も観ていたので、今回のトークを聴き、役者さん方の当時のそれぞれの思いを引き出しを開けて垣間見せていただいたような気持ちになりました。

TdVの話題もありました。ヘルベルトは、1幕最後に登場するので、大体他のみんなは最初の出番が終わってほっとしているのに、一番後まで緊張が続く。なので、吉野さんは1人で舞台裏のゴミ箱の前で「やっと、退屈に、さーよーなーらあぁー」とか「あーあーあー」(2幕のお風呂の歌)とかを練習していたそうです。

千弘さん:吉野さんが、白いうさちゃんを手作りしてきて。
吉野さん:そう、白いうさぎを連れていて、一人っ子で。
祐一郎さん:えっ、うさぎ、一人っ子だったの!?
 →私もそう勘違いして聞こえましたが、ヘルベルトのことだったようです。一人っ子で寂しいからお友達のうさぎさん(確か「しろちゃん」と呼ばれていたような)を作ったとか。

吉野さん:衣装がTバックだったのでワイヤレスマイクの発信機が背中に付けられなかった。やむを得ず、Tバックの「前」の方に発信機を付けたらちょうど良かった(と、股間に装着する仕草)。

ここで祐一郎さん、「わーっ!」と叫んで吉野さんの前に躍り出て隠すポーズを取っていました。これは祐一郎さん、賢明な判断だったと思います!

千弘さん:だったらカツラに付ければ良かったのに。私はそうしてました。
吉野さん:いや、ヘルベルトはカツラの形の関係で出っ張れないので……(ゴニョゴニョ)

 

次回作について

祐一郎さん:今回、作品名は言えないが、B130、W120、H130の奥さんになって禅さんとデュエットした。まだ色々あって言えないが、多分公演があると思う。
 →もし本当に実現するなら、ありがたや、ありがたや😊

千弘さん:『スラム・ドッグ・ミリオネア』をクリエでやります。弁護士役なので台詞覚えが大変。
吉野さん:『シスター・アクト』をやります。

 

その他

多分最初の方だったと思いますが、祐一郎さんが、配信は地球の裏からも見ている。リーヴァイさんも見ている、と言いながら地球の裏側のリーヴァイさんに手を振って呼びかけていました。リーヴァイさんが、「この国にきて初めて、日本というこんなにチャーミングな国があったのだ、と知りました」と仰っていた、というお話もしていました。

また、吉野さん、トークは配信慣れしていない感じの若干際どいモードでしたが、おりがみでかえるやかにを作ってきていて、それらが質問コーナーの質問箱の中から次々に取り出され披露されていました。うさぎさんの話も相まって、吉野さんの手先の器用さを印象付けるエピソードだったと思います。

 

2幕のコンサートは、めでたく東宝演劇部公式Twitterセットリストが公開されましたが、以下にもリストを記載します。

なお、3曲目は、ヘルベルト=吉野圭吾 アルフレート=山口祐一郎 の配役により披露されています。赤いジャケットに縞のマフラーをまとったオーバー60な祐アルフレートは実にかわいらしく、吉野ヘルベルトにリードされてのデュエットダンスのステップも軽やかで、吉野ヘルベルトに「今までのアルフレートの中でこんなに上手い人はいない」と言わしめていました。ご本人は曲が終わった後必要以上にぜーはーして息が上がったフリを強調していましたが😅。あと、あちこちの界隈で指摘されていましたが、祐アルフレートが逃げる時の「☆※◎*★◯◆!」という言語になっていない悲鳴は浦井アルフレートが元ネタと思われます。

それから、千弘コンスタンツェの「私だけに」も見事でしたが、「ダンスはやめられない」が聴けたのはうれしかったですね。彼女が舞台でこの曲を歌ったのは18、9歳の頃だったようですが、この曲はある程度年を重ねた今の彼女だからこそしっくりくる、と感じました。

そして、何と言っても祐一郎さん。とにかく歌唱の情感が、どの曲でも溢れかえっていました! ファントムの歌声は柔らかで甘い夜の帳で劇場を包み込み、マキシムは悪夢から解き放たれ、ロバートの心には広大なコーン畑と恋人の面影がどこまでも広がり……。ロバートについては前日のトークで、マディソン郡に実際に行き、イタリアから花嫁が嫁いだ相手が軍服を脱ぎ捨てトラクターに乗っていた広い広いコーン畑を体験してきた話を、とても懐かしそうに、楽しそうにされていたのが印象的だったので、余計に心の風景とシンクロしたのかも知れません。

何を置いても圧巻だったのは、ラストの「糸」。まさに一本一本糸を優しく紡ぐように歌われるこの歌の途中、祐一郎さんの感極まった表情を見て、この人もしかして、途中で泣いちゃうんじゃないかな? と心配になったぐらいです。そして歌い終えた瞬間から一呼吸おいて、極上の笑顔!

幸せすぎるひとときを過ごした公演の終了から1日以上が経ち、今は呆然としがちな自分の頬っぺたを引っ叩きながら現実に戻っています。多分、次回作発表までの間は、あの泣きそうなお顔と笑顔の思い出で生きていけるだろうと確信します。まさに、たとえ写真が色褪せても、鮮やかな色合いで記憶に残るに違いありません。

できればそう遠くない未来に次回作の発表があり、また劇場でお目にかかれますように。