日々記 観劇別館

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近況報告と『モーツァルト!』帝劇千穐楽映像雑感

2014年もあと2日で終わりを迎えようとしている中、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

年明けに転居を控えていることから、準備のため、6日に観たM!を観劇納めにしました。
これでしばらくは本業と引越準備に専念ね、と思っていましたが……。

実は、最後にM!を観てから僅か10日余り後に、私の実父が急な病で永眠しました。
父はここ1年ほど体調を崩し気味でしたが、最近は持ち直しており、亡くなる3週間前には普段は離れて暮らす家族全員で会食もしたところでしたので、ただ「こんな筈では」と呆然とするばかりでした。
近親者と父のごく親しい方々のみで葬儀を終え、10日程過ぎた今でも、これまで実家に帰ると当たり前に笑顔で出迎えてくれた人の不在にまだ慣れない状態が続いています。

そんな心境で、今日やっと自宅でM!帝劇千穐楽のカーテンコール映像を観ました。

客席の爆笑を取りながら井上くん、市村さんをしっかり盛り立てる山口さんに感動しつつ、
「この客席へのお忘れ物の注意、某イベントでの諸注意っぽいな」
と微笑ましく思いながら映像を見つめていました。

そしてWキャストの育三郎くん、初演時のWキャスト、アッキーの登場にほっこり。

で、実は、井上くんのご挨拶にあった、
「人生が凄く厳しいことを、人が凄く優しいことを、この作品で教えてもらったと思います」
という言葉がシンプルに心に響きました。
今回ほど人生の理不尽さと人の命の儚さという厳しい事実に打ちのめされたことも、先日の葬儀の参列者の皆さま、そしてネット上で交流のある皆さま(リアル知人もそうでない方も)の言葉が温かく心に染み渡ったことも、これまで滅多にありません。

最後に、M!という作品を巡る今の自分の心境について、少しだけ語らせてください。

M!においては父親との愛憎とそこからの自立、そして父親との永遠の別れが重要なエピソードとなっています。
父との別れという事実に直面した時、ふと、父親と決裂したまま永遠の別れを迎えたヴォルフの気持ちに思いを馳せました。

自分の場合、ヴォルフのような父親との確執というのはほとんど記憶がありません。父がわが子の人生として思い描いていた理想を生きたと言うにふさわしい生き方を、これまでに自分がして来られたかは疑問ですが、少なくとも相手から理想を押しつけられても、そして相手に失望をさせてもいなかったと信じています。
しかし、二度とこの世で言葉を交わすことはできません。父とお酒を酌み交わすことも、そして父を喜ばせようと計画していたことも、もう叶うことはありません。
ましてや父親と分かり合えぬままで突然相手の死を告げられたヴォルフの嘆きは、どんなに深かったことだろう、と、今更ながらそんなことをつらつらと考えています。

まだしばらくは迷宮を抜け出せそうにありませんが、幸い他の家族とは決裂もせず、互いに支え合いつつも依存し過ぎることなく、ごく普通の家族であり続けています。悲しみを忘れることはなくても、いつかは皆で迷宮を抜け出す日が来るのだと信じています。

そして、親しい者の命の火が消えても、それとは無関係に日々は淡々と過ぎていきます。もしかしたら、時の砂を踏み固めて足場として、遺された者は前に踏み出せるのかも知れません。

次にM!の再演があってもそこに井上ヴォルフはいませんが(まだ大阪の大千穐楽がありますが)、作品の命脈はこれからも続いていく筈です。自分が次回再演を観る時には、これまでとはまた違った心境で観ることになりそうです。これからもずっと、繰り返し、再演して欲しいと思います。

……自分語りでのお目汚し失礼いたしました。