日々記 観劇別館

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『ロミオ&ジュリエット』東京千穐楽感想(2011.10.2マチネ)

(キャスト)
ロミオ=山崎育三郎 ジュリエット=昆夏美 モンタギュー卿=ひのあらた モンタギュー夫人=大鳥れい ベンヴォーリオ=浦井健治 マーキューシオ=良知真次 キャピュレット卿=石川禅 キャピュレット夫人=涼風真世 乳母=未来優希 ティボルト=上原理生 ロレンス神父=安崎求 ヴェローナ大公=中山昇 パリス=岡田亮輔 死のダンサー=中島周

本日は、昨日に引き続き赤坂ACTシアターへ赴いて、ロミジュリ東京楽を観てきました。
元々は友人にチケットを取ってもらったものでしたが、友人は残念ながら仕事のため観劇キャンセルに。1人寂しく見届けてまいりました。

最初に、昨日も書いたとおり、楽日でやっと観られたキャストがいたので、彼らの感想から記します。

まず、昆ジュリ。舞台経験がある分、演技や歌の緩急の付け方は莉奈ジュリより1日の長があると感じました。歌い方が、若い頃の笹本玲奈ちゃん(今ももちろん若いですがもっと若い頃)に少しだけ似ていたような気がします。
昆ジュリはただ育ちが良いだけではなく、かなり我の強そうなお姫様でした。そして、何処がそうなの?と問われると困るのですが、1幕の涼風ママとの対話場面を観て、間違い無くあのママと血が繋がった娘だと思いました。純粋だけどどこかで自分の中のママ、ひいては女性としての澱みを自覚した上で、私はママのようにはならない!と考えているように見えました。
では、莉奈ジュリはどうなのかと申しますと、あのママの元に突然変異で生まれて全く澱みを持たないように見えました。あるいは澱みはあるのかも知れませんが、自分の中の澱みを直視することを徹底的に拒んでいるような感じ。いずれにしても、ジュリエットとしてはどちらも「あり」だと思います。

それから、上原ティボルト。目力強烈、大人に飼い慣らされることへの不満を隠しきれない、ぎらぎらしたした眼光を放つ獣ぶりが実に素敵でした。歌も、昨日も書いたとおり平方ティボも歌が上手いと思いましたが、上原ティボが歌うと、あの説明的台詞の多いソロナンバーがたちまちドラマティックに聞こえてきたのはどういうことでしょう。

もう1人は、中島さんの死のダンサー。振付は大貫さんとそう変わらないようでしたが、どちらかと言えば大貫さんのダンスの方が「動」志向で、中島さんのダンスは「静」志向な感じがしました。何というか、闇に溶け込もう、沈み込もうとする傾向が強いと申しましょうか。上手く表現できずもどかしいです。

そして、3週間ぶりにしてマイラスト観劇の育三郎ロミオ。
城田ロミオと育三郎ロミオ。2幕の寝所の場面で、朝起きて上半身から先にシャツをまとうのが城田ロミオで、下半身から先にスラックスをはくのが育三郎ロミオ、という以外にもいっぱい個性に違いのある2人ですが。……うーん、やっぱり私、どちらかと言えば城田ロミオより育三郎ロミオの方に萌えました。
これは身贔屓かも知れませんが、まず、声の綺麗さ。昆ジュリの声との相性も良いですが、2幕での浦井ベンヴォの歌声との共鳴が美しいのです。それから、表情豊かな瞳。あのうるうると感情を湛えた瞳にすっかりやられてしまいました。あくまで自分の主観ではありますが、「M!」のヴォルフよりロミオの方が育三郎くんにはしっくりきていると思いました。
城田ロミオの、本人はあの世紀末っぽいハードな世界で、精一杯大人として振る舞っているつもりだったのに実は――なキャラクターももちろん良いのですが、他方で、ジュリエットの死(本当は仮死)を知るやいなや、一目散に後追いへと突っ走ってしまう一途さが馴染むのは、子供の甘さをたっぷり心に湛えている育三郎ロミオの方だ、と考えています。
また、1幕のナンバー「世界の王」の前の「みんなで王になるんだ!」という台詞。育三郎ロミオが口にすると、決してモンタギューチームに対する大人の気遣いではなく、本心を飾らずそのまま言葉にしているようにすんなり聞こえたのは不思議でした。

今回最大のハプニングに遭遇したのは、未来さん演じるジュリエットの乳母(ばあや)かと思います。
ばあや、1幕のモンタギューの縄張りへの侵入場面で、何と良知マキュに生キスされてました!そして、
「ペッペッ!……本当にしたっ!」
とアドリブ呟き。未来さんのファンの皆様の反応がひっそり気になります(^_^;)。
ハプニングにもめげず、その後いつものように鉄棒レンジャー降り、ベンヴォ&マキュの成敗等をこなし、任務を果たしてジュリエットのもとに生還したばあや。
「イケメンにモテすぎてチューまでされちゃいました!」
としっかりご報告していました(笑)。

また、ハプニングではありませんが、1幕での育三郎ロミオと神父様の掛け合いも楽しかったです。育三郎ロミオ、神父様の髪をいきなり2回も「髪の毛ぼっさぼさ!」となでつけた上、確かカーテンコールでも同じようになでつけていました。

楽しかったのは千穐楽ならではのカーテンコール。以下、プリンシパルご挨拶で印象的だった所のみ抜き出します。
良知マキュは、実は最初この作品のオーディションをティボルトで受けたそうです。マネージャーさんから合格通知を聴いた時に初めてマーキューシオ役だと知って驚いたとか。そして上原ティボルトをじいっと見つめて未練を見せるポーズ。ええと、きみはもうそのポーズからしてマキュにしか見えないわけですが(^_^;)。一番早く死んでしまう役だけれど、一秒でも長く生きたいと心掛けている、という発言もされていました。
涼風ママは「みんな大好きでーす!」などと絶叫していました。……あのぅ、と、時々ご挨拶が応援団になる誰かさんが伝染りましたか?(^_^;)
浦井ベンヴォからは、稽古中の怪我のため初日前にダンサーチームを離脱、降板となった「浜手さん」(浜手綾子さん)に寄せる言葉がありました。「ダンサー29人、浜手さんを加えて30人」とわざわざ言い直す浦井くんがとても素敵でした。
岡田パリスからは「ピンクが大好きになりました!」とご挨拶。あの物語の中で唯一屈託ゼロ、ひたすらKYに能天気に振る舞うパリス伯爵のテンションを、毎回保ち続けるのは実はとても大変なことだったに違いないと想像しています。
そして死のダンサー中島さん。
「彼はダンスではなく言葉で気持ちを表現するのが苦手。稽古場でも声を聞いたことがない」(禅さん談)
とのことで、中島さんが耳元で囁く言葉を禅さんが通訳していました(笑)。最後に「早く人間に戻りたい」と発言し、客席を爆笑の渦に包んでいました。

最後の最後に、昨日楽を迎えた5人(城田ロミオ、莉奈ジュリ、平方ティボ、一彰マキュ、大貫「死のダンサー」)が客席から舞台上に呼び出されたのですが、他の方が普段着(莉奈ちゃんのみややドレッシーなミニワンピ)なのに対し、何故か死のダンサー大貫さんだけ、黒タキシードで決め決めでご登場(笑)。
すっぴんの大貫さんは、普通に爽やかに微笑むイケメンで、お約束として育三郎ロミオに「どなたでしょう?」と突っ込まれ、「どうも、『死』です!」と答えていました。昨日の前楽カテコでのアクロバットと言い、無口系な中島さんとは真逆のキャラクターをお持ちのように思います。

ロミジュリ男女混合キャスト日本初演版。スタッフ、キャストの皆様、素晴らしい舞台を本当にありがとうございました。時間さえ許せばもう一度ぐらい観に行きたかったけれど、諸事情で3回のみに留まってしまいました。
本当は日本公演もDVDで出して欲しいぐらいですが、会場での告知によればハイライトライブ盤CDが出るそうなので、いずれ発売されたら音楽を耳で聴きつつ映像の脳内再生に励みたいともくろんでいます。……というか、しばらく耳の中で「世界の王」がリピート再生されそうな勢いなわけですが(^_^;;)。