日々記 観劇別館

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『ロミオ&ジュリエット』東京前楽感想(2011.10.1ソワレ)

(キャスト)
ロミオ=城田優 ジュリエット=フランク莉奈 モンタギュー卿=ひのあらた モンタギュー夫人=大鳥れい ベンヴォーリオ=浦井健治 マーキューシオ=石井一彰 キャピュレット卿=石川禅 キャピュレット夫人=涼風真世 乳母=未来優希 ティボルト=平方元基 ロレンス神父=安崎求 ヴェローナ大公=中山昇 パリス=岡田亮輔 死のダンサー=大貫勇輔

ほぼ3週間ぶりのロミジュリ。城田ロミオを初めて観てきました。今回が東京前楽、しかも城田ロミオは東京楽。自分は大阪でロミジュリを観る予定はないので、今回が最初で最後の城田ロミオでした。
城田ロミオ、どうしても育三郎ロミオとの比較になってしまいますが、城田ロミオの方が少し大人な感じがしました。
育三郎ロミオは、モンタギューの若者チームの精神的支柱として大事に護られ祭り上げられている、主家のお坊ちゃん。自分が彼らの支柱たらねばならぬ、しっかりしなきゃ、と意識してはいるけれど、自分の将来や世情に関するぼんやりした不安の影を心に抱え込んでいる少年といった印象です。
一方城田ロミオは、逆に若者チームを精神的に率いるリーダーであることを意識し、常にクールな大人として振る舞おうとする御曹司。しかし、世の中の理や人間の醜さがだいぶ見えてしまっているが故に、やはり不安の影から逃れられない悩める青年がそこにいる、と思いました。

また、2人それぞれ、浦井ベンヴォとの関係も異なっていると感じました。育三郎ロミオは親友と言ってもどこか幼さが残り、ベンヴォの弟っぽかったのに、これが城田ロミオだと、ベンヴォと精神的に対等であるという印象を受けました。
その分、育三郎ロミオが放っていた無邪気さ、純白さのオーラは、城田ロミオには薄かったように思います。ただ、感受性の強い幼い精神のままで運命に流されていく育三郎ロミオに対し、城田ロミオは、分別ある大人でありながららしからぬ恋に突っ走ったばかりに「こんな筈じゃなかったのに」という感じで運命に翻弄されていくのが面白かったです。

前回の観劇時と比べて何と言っても驚かされたのは、莉奈ジュリです。9月に観た時には所々耳についていた声の素人臭さが、かなり薄れてほとんど気にならなくなっていました。元々声量はかなりありましたが、所々で声量が城田ロミオを凌駕している箇所も(^_^;)。十代の少女の吸収力ってこんなにも凄かったのか!と思い知らされました。
次に注目したのは石井一彰くんのマーキューシオ。そもそも彼を、レミゼの学生フイイ役や、『宝塚BOYS』の宝塚男子部生徒といった、健全系または可愛い系の役でしか観たことがなかった私。しかも最初に観た良知マキュがヤンチャ坊主系だったこともあり、『時計仕掛けのオレンジ』の主人公のような下まつげメイク(しかも片眼のみ!)を施した、クスリでもやっていそうなキレたら何をするか分かったもんじゃない系不良少年(長っ!)の一彰マキュはかなり衝撃でした。好戦的で危険な雰囲気をぷんぷん漂わせた役作りと、聴き取りやすい声量のある歌声。そして死に際にロミオに秘めてきた本音を伝える場面での情の深い演技。一度しか観られないのが残念でなりません。
また、前回と自分の中で全く印象が違ったのは、涼風さん。前はラストの「やめて!2人は本当に愛し合っていたのよ!」の叫びを聴いても「あれだけ娘に散々な仕打ちをしておいて、今更何言ってやんでえ」と思うだけでしたが、今回「この人は娘達の死をもって漸く、邪心も復讐心もない真実の愛を知ったのだ」と初めて感じ取りました。

今回悩んでしまったのは、ティボルトのソロナンバーです。これは演じる役者さんには何の咎があるわけでもなく、むしろ平方ティボルトはイケメンだし、初ミュージカルとはとても信じられない程歌えるしで素敵なのですが、説明的な歌が多くて損しているように思えてなりませんでした。15の頃から女性経験が豊富で入れ食い状態なことも、家訓でいとこ同士の結婚が禁じられていてもそのいとこを好きでたまらないことも、俺はティボルトなことも良く分かったから、もうそんなにくどくど説明しなくて良いから!と何度か茶々入れしたくなったのは自分だけでしょうか。

この他にも、以下のようなことをつらつらと考えながら舞台を見届けました。

  • ロミジュリの音楽の、これぞフレンチポップという感じの切ない転調。なんて堪らない響きなんだ!
  • 浦井ベンヴォーリオは、「一見頼りないがロミオはじめ仲間達をひっそりしっかり支える」という役どころも良いし、「世界の王」のダンスは相変わらず切れが良いし、ソロナンバーもあって美声もしっかり堪能できる。なんて美味しいんだ!
  • 禅さんの2幕のソロ、聴くのは2回目の筈なのに、また泣かされた。なんて琴線に響くんだ!
  • 死のダンサー大貫さんの重心と背筋をしっかり保ちつつ、しなやかで軽やかなダンス。なんて美しいんだ!
  • 安崎さんの神父様、役柄はともかく、なんて頼りがいのある歌声なんだ!あと城田ロミオ、自分の楽だからといって、ロミオが神父様を抱き締めて喜ぶ場面で、渾身の力で神父様を締め上げないように(^_^;;)!*1

終幕後のカーテンコールでは、本日東京楽を迎える5人の方、平方ティボルト、一彰マキュ、死のダンサー大貫さん、莉奈ジュリ、そして城田ロミオからご挨拶がありました。特にはらはらしながら頑張れ、頑張れ、と心の中で応援してしまったのは、莉奈ジュリのご挨拶。Wキャストの昆ジュリと、指折り数えて開幕を待っていたのもつかの間、あっという間に東京楽を迎えようとしている、といった内容のコメントを、全身に緊張を漂わせつつ丁寧に語られていました。
また、ご挨拶の後幕が下り再度上がった後のカテコの続きでは、大貫さんがステージの際すれすれの場所でバック宙、バック転を決められ、舞台上と客席両方から歓声が上がるなどしていました。

と言うわけで、明日はいよいよロミジュリ東京楽です。私にとり3週間ぶりの育三郎ロミオ、そして初見となる昆ジュリ、上原ティボルト、死のダンサー中島さんをしっかりと観てまいりたいと思います。

*1:神父様、ゲホゲホ言ってました(笑)。