日々記 観劇別館

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『レベッカ』帝劇千穐楽感想(2010.5.24マチネ)

キャスト:「わたし」=大塚ちひろ マキシム・ド・ウィンター=山口祐一郎 ダンヴァース夫人=涼風真世 フランク・クロウリー石川禅 ジャック・ファヴェル=吉野圭吾 ベン=tekkan ジュリアン大佐=阿部裕 ジャイルズ=KENTARO ベアトリス=伊東弘美 ヴァン・ホッパー夫人=寿ひずる

レベッカ』がついに帝劇楽を迎えました。今はひたすら虚脱状態です。
今回を含め6回再演『レベッカ』を観ていますが、初の2階席でした。舞台からは少し遠くなりますが、照明や舞台装置の動きがつぶさに確認できて楽しかったです。とりわけ照明は、同じマンダレイの屋敷内の床に落ちているタイル状の照明であっても、場面により色が細かく変化するのをじっくり堪能いたしました。

キャストの感想にまいりますと、感じ方には個人差がありそうですが、キャストの熱気は前楽の方が激しかったように思います。と申しましても、演技の間合いなどに差程違いがあるわけではないので、あくまで肌の感覚的な印象に過ぎませんけれど。
何度か感想を綴ろうとしていて書き忘れていましたので今書きますが、寿ヴァン・ホッパーの声や歌い方が実はかなり好きです。自分的にはウィーン版キャストより好みかも。あの太く通る歌声を聴くと安心するのです。
でも、寿さんごめんなさい。「アメリカン・ウーマン」の特に後半では、ついマキシムとフランクの手踊りを目で追ってしまっていました(^_^;)。マキシムが意外と(失礼)綺麗に踊れていて、しかもフランクとしっかりシンクロできているものですから、耳で寿さんの歌声に聴き入りつつ、気づいたら目は下手側後方にいる2人を追いかけている状態に。まあ、ここでマキシムが明るければ明るい程に、1幕終盤以降の彼との落差が激しくなるわけですが。

それから、先日違和感を覚えた涼風ダンヴァースについて、今回は特に「レベッカを愛する自分が大好き」には見えませんでした。歌を聴いている分には声も変な力みが抜けて良くなったと感じましたし、またこれは友人に言われて合点したのですが、滑舌と発音はやや鼻声のシルビアさんより聴き取りやすい所が多かったりします。
ただそれでも、彼女のダンヴァースはやはり「何かが違う」のです。シルビアさんが「大魔神」だとすれば涼風さんは「等身大の生身の女」。生身の女が弱みを見せ感情が崩壊しても、石像がそうなったのを目にした時の衝撃よりは遙かに小さかったと思います、残念ながら。

ちひろちゃんは1幕のプロポーズ後の「彼を困らせたりはしません!」で「彼を困らせ……困らせたりはしません!」とちょっと噛んでましたが、後はとても泣き虫だけどとても力強い「わたし」を演じていました。
日本版の「わたし」は2幕でダンヴァースに「出て行きなさい!」と言われた後、「いやよ!(レベッカは)死んだのよ!」と絶叫しています。
あの叫びは背後に見えるレベッカの影に向けているのか、それともダンヴァースに叫んでいるのか、あまりそういうことを気にしたことはなかったのですが、少なくとも対・涼風ダンヴァースに対しては明確に喧嘩を売っていたと感じました。ダンヴァースを突き動かしてるのはレベッカの影だと考えると、「わたし」はダンヴァースに目を覚ませと訴えかけているようにも見え、そしてレベッカに呼びかけているようにも見え――。どちらだとしても間違いはないように思うのです。

それで、ええと、マキシムについては……せっかく楽日のマキシムを観られたというのに、あまり語ることがなかったりします。前楽でかなり強烈なパッションとテンションに満ちた姿を観てしまったため、私自身放心状態に陥っていたのが半分、また、楽日のマキシム自体、色々と基本に立ち返った、爆発しあるいは狂乱する場面にすら丁寧さ、端正さが際立っていたのが半分といった所でしょうか。
でもこれだけは語らせてください。楽日、エピローグの老いたマキシムは、何とも言えない泣き笑い顔で遠くを見つめていました。その目は遠く過ぎ去った二度と戻らない日々を見つめ、滅び去ったものを憐れんでいるようにも、また愛憎の全てを懐かしみ愛おしんでいるようにも見えました。

カテコはYouTube東宝公式映像でも紹介されていたので(リンク)、あえてここで書くことはあまりありませんが、それでも少しだけ。
ご挨拶の仕切り担当はやはり山口さん。いつもの一言ずつぼそりぼそりと紡ぎ出すような温かな口調で、涼風さんのことは「凛とした立ち姿。その中に燃えるような情熱を秘めて、レベッカの世界を体現」、ちひろちゃんのことは「いつも爽やかな笑顔で、明るくて元気で、舞台にまっすぐ臨む姿を見ていると本当にいろんな力を受け取ることができて、本当に素敵だな、と思っていました」という言葉でそれぞれ紹介していました。
そして、
「このご声援を私どもしっかり受け止めて、元気に大阪に参ります。本当にありがとうございました!」
という朗々と劇場中に響き渡るお声での山口さんのご挨拶。これを耳にした時、ああ、本当に帝劇のマンダレイは今夜には撤収されて、大阪へ行ってしまうんだ!山口さん達も皆それを追っていくんだ!と、じわりと寂しさが込み上げて仕方ありませんでした。

何だか楽日の感想だというのに、感動をあまりきちんと語ることができなくてごめんなさい。どうやら、この演目への思い入れが深すぎたが故に、終わった途端に心の内が燃焼し尽くしてしまったみたいです。

でも、レベッカ楽の翌日である今日、山口さんは早速『エリザベート』の制作発表会見に駆り出され、さぞお疲れだったことと思いますが、更にトリプルトートでインタビューも受けられたようで。しかも多分明日か明後日辺りには大阪へ旅立たれるわけで。
ご本人に取っては「いつもやってること」なのでしょうけれど、何て尊敬に値するんだ!私も早く次に向けて自分を立て直さねば、と思い直し始めております。
と申しましても、自分には全く余裕がないわけではなく、少なくとも、日テレ24の記事などで、城田くんが半分冗句とは言え「(トートに)見た目は一番私が合っている」と発言したのに対し、心の中で「ほぉ〜?」と100回突っ込むぐらいのことはできています(^_^;)。だから、まだまだ大丈夫だと信じております、きっと。