日々記 観劇別館

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『パイレート・クィーン』千穐楽感想(2009.12.25)

グレイス・オマリー=保坂知寿 ティアナン=山口祐一郎 エリザベス1世涼風真世 族長ドゥブダラ=今井清隆 ビンガム卿=石川禅 ドーナル=宮川浩

遅くなりましたが、千穐楽の観劇レポートを書かせていただきます。
と言っても、千穐楽だからと言って特筆すべきことというのはあまりなかったのですが。お遊びらしき出来事もなく、後述するようにカーテンコールの挨拶もありませんでしたし、また、キャストの皆さんのクオリティの高さも初日から楽日まで一貫して変わりませんでした。
座席は下手ブロックのX列。つまり最後列だったわけですが、視力が悪いのでオペラグラス必須ではあったものの、かなり見やすくて良いお席でした。この演目に関しては1階から舞台装置全体や照明を観るためには床が高くなっている後方席の方が良、かと思います。

まず、ティアナンについて書いておきます。
彼が初登場時に両手を上にあげてゆらゆらさせながらグレイスと追いかけっこして駆けてくるのは、やっぱり何だかんだで笑えます。可愛いけど。
「君のそばで」には前日以上の迫力と、エコーもかけていないのにたっぷりとどこまでも伸びる歌声に、すっかり圧倒されてしまいました。歌い終えた時ショーストップになりかけてましたが、すぐにダーナルの午前様帰宅シーンに転換してしまい、ちょっと惜しかったです。
で、初日から密かに「君のそばで」のティアナンはいつから大岩の後ろにスタンバイしているのか気になっていたのですが、結婚式の最後、全員整列してのダンスがはじまる辺りで入ってくると今回ようやく判明しました。これですっきりしました。
今回すっかり釘付けにされたのは、2幕の「この命を」を歌っている時の静かな伏し目がちの表情。無私無償の愛を捧げるティアナンの表情が本当に神々しくて素敵で、恥ずかしげもなく曲の最初から最後までずっとオペラグラスで見つめてしまいました。

それからエリザベスですが、高音域が今回もやはり微妙に疲れ気味に聴こえました。特に地声から急に高い音に移行するパートでの声の出し方が。音は取れているけれどやや声が出し辛そうで心配です。大阪までに回復されることを願っています。
逆にグレイスの安定度は掛け値なしに高いと思いました。エリザベスの歌より無茶な高音が少ないのでその分コンディションを保ちやすいのかも知れません。でも2幕後半は出ずっぱりなので、大変は大変なのですが。
あと、今までティアナンしか観ていなくて(^_^;)気づかなかったのですが、ティアナンがグレイスに父上危篤、を伝える場面で、そばで聞いていたダーナルがニヤリ、と笑うのですね。この時点でもうオマリーの族長の地位は俺のモノ、と考えているわけで、うわー、これでこそ嫌な奴の神髄、と客席で一人で小躍りしてしまいました。
嫌な奴ネタばかりでもあんまりなので。宮川さんの歌声には実はかなり色気があるのだということに、今回「男は男」のソロを聴いて気づきました。多分普通に歌うと「父の立会いを」のようなマリウス声なんでしょうけれど、男臭い濁声で歌ってもまた美声だったので、聴いていて結構気持ち良かったです。
ビンガム卿については昨日色々書いたので省略しますが、一つだけ。この役は禅さん以外ではもう考えられません。

もう一つだけ。ティアナンの服が替わらない、というのは前も書きましたが、ダンサーズ、特に女性陣のお召し替えがないのも実は結構不満だったりします。流石に2幕の洗礼式の時は白いエプロンを着けていましたが、1幕の結婚式でももうちょっと華やかなエプロンを着けるとか、工夫が欲しかったな、と今更ながら文句を言ってみたりして。

そしてカーテンコール。
帝劇の千穐楽でキャスト挨拶なし、というのは初めて聞きました。何かこの作品のポリシーでもあるのでしょうか?ごく個人的な願望では、帝劇の演目の楽を観るのは初めてだったので聞きたかったんですが、きっとご縁がないんだろうな、と諦めています。
それでもカーテンコールの盛り上がりは楽だけあって凄かったです。追い出しアナウンス〜再お出ましが4回位繰り返されていました。公式ブログにもあるように、全員のアイリッシュダンスを何度も踊ったダンサーの皆さんはかなり足が疲れたのではないかと思われます。
山口さんは今井さん、宮川さん、涼風さんと1回ずつ手を取り合って回転ダンスしていました。最後の最後には、指揮のBillyさん以下、オケピの皆さんも舞台に引っ張り上げてご挨拶していました。退場する前のちぎれんばかりに激しいお手振りも含めて、全て、山口さんの我々観客に向けた精一杯の「気持ち」だったのだと思います。

山口さん&保坂さんのデュエット。さて次は一体いつ聴けることでしょうか。今回は今回で予想外に素敵ではありましたが、誰かもっと大人なカップル(男女の友情でも可)の設定でこの2人のために作品を、と願わずにはいられません。