日々記 観劇別館

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『パイレート・クィーン』感想(2009.12.5ソワレ)

グレイス・オマリー=保坂知寿 ティアナン=山口祐一郎 エリザベス1世涼風真世 族長ドゥブダラ=今井清隆 ビンガム卿=石川禅 ドーナル=宮川浩

今回で2回目の鑑賞。A列上手という結構前方(オケピがないので前から4列目)に座ったのでスピーカーの音に生声が混じって聞こえて少しお得な感じでした。

今年のレミゼでは若いキャストに何人か休演者が出ていましたが、PQも例外ではないようで、アイリッシュダンサーの中川唯可さんとアンサンブルの植木達也さんが休演されていました。
特に中川さんは二人しかいない女性アイリッシュダンサーのお一人なので、抜けた穴は大きいようで(アンダーはいないらしい)、1幕の酒場の場面でのダンス対決では一部が男性ダンサーだけのエア対決状態になってました。ほかの場面ではダンサー5人だけ(カテコで一部ゆりゆりさんが代理)で踊っていました。
貼り紙には「体調不良のため」としか書いていなかったので、原因が新型インフルなのかそれとも舞台での負傷なのかは定かではありませんが、お二人ともじっくり治されての復帰をお待ちしています。

さて、本日のティアナンですが、初日と比べると動きがちょろちょろしてたり無理矢理高い作り声にしてたりすることもなく、だいぶ落ち着いていました。あのちょろちょろぶりはやはり初日スペシャルだったと思われます。髪型の違和感もほとんどなくなりました。
でもティアナン、「君のそばで」をじんわりと歌いあげた後、舞台後方のオケピ方面に小走りに捌けていくのですが、何故か下に降りる時に片手をぴょいと挙げながらかけ降りていて、その姿が妙に可愛らしく、観ていて危うく萌え死ぬところでした。

今回、帝劇売店で購入し客席で目を通した『月刊ミュージカル』12月号のインタビュー(後日別途書くつもりです)で「練習に1日かかったがわずか18秒間のアクション」について触れられていたので、その場面をじっくりチェックしました。感想は、「宮川さん、上手にリードしてくれてありがとう」です(^o^)。
またティアナンのことばかり書くと長くなるので、もう1つだけ、ティアナン&グレイスのデュエットについて記しておきます。デュエットは1幕に1曲、2幕に2曲ありますが、どれもシチュエーションは全く異なれど、ティアナンが実に幸せそうで素敵で可愛い笑顔を見せてくれます。二人の声のハーモニーも心地よく、決して変な意味でなく、やはり山口さんにとって保坂さんは「別格の存在なのだ」と改めて感じるとともに、次にこの二人の組み合わせを観られるのはいつになるだろう?と思いを馳せ既に寂しくなり始めています*1。せめてCDを出してくれないかなあ、PQ。
カテコではいつもの2ステップのみのアイリッシュダンスもどきのほか、宮川さんと腕を組んで4ステップぐらい踏みながらの登場もありました。

前回と少し印象が変わったのはドーナル(発音はダーナル)。何故なら今回上手で観て気づいたのですが、2幕冒頭でグレイスが男の子を産んだと聞いた瞬間、本当に嬉しそうににっこりと笑うのです。まあ、結局は自分の利益しか考えていない上、オマリー族の船乗り達は全員ティアナンの味方、更にグレイスにも見限られる、その程度の人ではあるのですが。
でも、あれほど「女」と嘲ろうとしていたグレイスに最後に、「お前なんか女じゃない、スカートをはいた男だ!」と捨て台詞するのは、実は彼なりにグレイスを「ただの女ではない」と認めたのだ、という見方もできそうです。ドーナルは始末に負えないツンデレ男なのかも知れません。
ちなみにドーナルの歌「父の立会いを」、美しいメロディですが、その後の行動を踏まえてじっくり歌詞を聴くと、実は自分のことしか考えていない歌だというのが良く分かります。ティアナンの「この命を」の歌詞が1個もティアナン自身のことを語っておらず無私なのと対照的です。

ビンガム卿はどんどんお茶目で表情豊かなキャラになってきています。女王様に誉められ認められるのが心底嬉しそうで、それだけに最後ポイ捨てされるのが気の毒でなりません。どう見てもエリザベスに利用されただけに見えますが、エリザベスはエリザベスで女王として果たすべき(と本人が自認している)任務をその場その場で忠実に果たしただけなので、不思議とエリザベスにも腹が立たなかったりするのです。

女性陣の歌唱ナンバーについて、前回書き忘れてましたが、イヴリーン*2こと荒木里佳さんのアイルランド語の歌「星を目指して(パート2)」が、土臭さ、というか懐かしい故郷の大地の香りを想起させてくれて、しんみりする場面なのにほっとします。
そして、前回は舞い上がっていてきちんと聴けていなかった2幕のグレイスとエリザベスのデュエット。政治の場では女を捨てることに専心してきたエリザベスには、グレイスがあえて「女として」物を申してきたことが心底から新鮮だったのだろう、と思いつつ、美しい高音女声のハモリを堪能しました。

もっともっと何度もキャストの皆さんの変化・進化を見届けたい気がしますが、お財布や家庭や体力の事情から、次にPQを観るのは2週間後、12月20日の予定です。待ち遠しいですが心から楽しみにしています。

*1:ついでにこのお二人を育てた四季の社長さんは何だかんだで凄いのだとも思ったり。

*2:この人の立ち位置が謎なのですが、たぶんオマリー族の巫女さんだと思います。後半でグレイスが囚われている間に息子(オーエン)を育ててるのはこの人。