日々記 観劇別館

観劇(主にミュージカル)の感想ブログです。はてなダイアリーから移行しました。

『エドウィン・ドルードの謎』感想(2016.4.24マチネ)

キャスト:
支配人/トーマス・サップシー市長=山口祐一郎 エドウィン・ドルード=壮一帆 ローザ・バッド=平野綾 ネヴィル・ランドレス=水田航生 ヘレナ・ランドレス=瀬戸カトリーヌ クリスパークル牧師=コング桑田 ジョン・ジャスパー=今拓哉 プリンセス・パファー=保坂知寿

エドウィン・ドルード』、クリエ公演2回目の観劇にしてマイ楽です。
本日の座席は2列目下手ブロックでした。最前列ではないので流石にかぶりつきとはいきませんでしたが*1、半径3m以内で支配人さんが立って演技したり階段に座ったりすると、やはり緊張しますね。
また、この席で初めて、2幕で壮さんが披露する大阪のオバチャン風アニマルプリントコスチュームを至近距離からじっくり眺めましたが……あのコテコテな柄を抜群のスタイルでしっくりと着こなしている壮さんは凄いです。
そして、
「あの虎バッグ、ふかふかしていそうで可愛い、欲しいかも」
とちらりと思った自分がおりました。ただ、実際に手元にあっても使い途に困りそうではあります。

今回、初日に観た時よりもだいぶカンパニーが温まっていました。何よりも開演前に前説を担当するお二人が流暢になっていたのがその証拠です。

まず登場した支配人さんは、進行のテンションなどが初日と全く変わらないのは凄いなあ、でももしかして、このままお遊びは周囲にお任せ?……と思っていたら、とんでもなかったです。
まさか1幕で、にゃんにゃんと鳴きながら猫ポーズでじゃれてきた綾にゃんと、にゃんにゃかにゃんと言いながら激しくじゃれ合う祐にゃんが見られるとは。ありがとう、綾にゃん!

そして、この演目。20日前に観た時よりも……どうでも良い箇所がパワーアップしていました(^_^;)。
例えば1幕の墓地の場面での横山さんの「犬神家の一族」のモノマネ。初日よりも無闇にディテールが充実して、「細かすぎて伝わらないモノマネ」状態になっていました。あまりの細かすぎて笑える熱演に、ついに共演のジャスパー先生が脱いだ帽子に突っ伏して悶絶する羽目に。まさかこの「犬神家」が後々まで引っ張られるとは。また、素から帰ってこられなくなりかけていたジャスパー先生の立て直しに「号泣県議のモノマネ」がまさかこんなに有効になろうとは。元々他のコメディー作品でも今さんの面白真面目センスは光っていましたが、今回のジャスパー先生は疑いなく今さんの更なる新境地を開拓したと思います。
更に1幕で何度か牧師様がスポットを外れて立ち、その都度支配人さんが正しい立ち位置へ押しやるギャグがありますが、2回目に登場した支配人さんの頭には黒衣の頭巾が!本体は普通の衣裳なので、黒頭巾を被っていても当然丸わかりなわけですが。何故ここだけ黒頭巾?(^_^;)

というわけで、自分は北千住公演を含めると既に3回目なこともあり、すんなりとエドウィンの世界を楽しんでいますが、実際の所、観客がこの世界に入り込めるかどうかは、福田さんの笑いの仕掛けにツボれるか否かにかかっていると思います。この演目だけでなく、WOWOWで放映が始まった『トライベッカ』などでもそうなのですが、大抵のお笑いに「つかみはOK」で入り込める私ですら、あの笑いの世界には時々いたたまれなくなることがありますので。
また、今回、幕間に「前方列センターなのに眠ってしまった」という声を聴いて「えええ!?」と心の中で驚いていたのですが、そう言えばプレビュー初日の時に1幕のギャグの応酬がかったるいと感じたような、と思い出したりしていました。

ただ、このミュージカル、本当に曲が良いのです。しかも意外と難易度が高そうで。例えばローザのソロなどは「作曲家の偏執愛の産物」という設定のフィルタを外すと切ない愛の歌である上に、かなり高い音域を要求していますし、笑いのセンスと高い歌唱力を両方備えた役者さんでないと、この演目を歌い演じきることは難しいと思います。
自分のお気に入りのナンバーは、1幕のパファー姐さんの仇っぽいソロ(含む早口言葉)、ローザとジャスパー先生の緊張感溢れるデュエット、支配人さん(市長さん)とジャスパー先生の違う意味で緊張感をもたらすダンサブルなデュエット、バザードのソロ、そしてエドウィンらにより披露されるラストの曲辺りです。
ところで2幕のローザとジャスパー先生のデュエットがどうしてもワイルドホーンのパロディに聞こえてしまうのですが、私だけでしょうか。

……この辺りで本編の感想に戻りますと、今回は「変態×カレー」に全てを持って行かれたという印象です。
これまでの2回、自分が投票した相手が犯人になった試しがありませんでした。初回観劇のプレビュー初日ではカレーの人に投票しましたが犯人は婚約者さん、2回目のクリエ初日では阿片窟の姐さんに投票しましたが結果はカレーの人の弟で。
今回、「実はやっぱり変態が犯人でした」が見たくて投票しましたが、選ばれたのはカレーの人でした。ちなみに2位は阿片窟の姐さんで、変態さんは3位でした。
カレーの人の犯人ソロ曲は、歌詞の内容は非常にシリアスなのに、過度のカレーアピール(食品サンプルのカレーまで登場!)と怪しいインド舞踊の結果、大爆笑に終わっていました。これ、プレビュー初日に見なくて正解だったかも知れません。

犯人ソロの後は「悲しい物語をハッピーに終わらせるための」ラブカップル選出なのですが、「悲しい物語」の単語に全く説得力なし(^_^;)。しかも女性サイドの投票で「ヘレナが良いと思う人!」とコールされるべき所が、「もう一度コントを見たい人!」とコールされる始末。
投票の結果、圧倒的多数の支持により、変態さんとカレーの人がカップルとして選ばれました。支配人さんが「では、変態カレー!」とコールした時点で既に客席は笑いの渦へ。
ラブカップルの歌詞の内容をあまり覚えていないのですが、とにかく「カレーが好きです!」の一念で、「ファイト!一発!」のCMの如き力強さで2人が意気投合して、最後に「犬神家!」とカップルで足上げ開脚を決めたことだけは確かです。これも愛、あれも愛、たぶん愛、きっと愛、と自分の中で懸命に言い聞かせながら爆笑しておりました。

歌い終えた後の愛のダンスの場面では、何故かカレーの人が支配人さんを誘導し、変態さんと背中合わせに立たせました。何をするのかと思えば、両腕を広げて支配人さんにもたれた状態の変態さんを、カレーの人が前方からおもむろに両手でコチョコチョ。そして背後からは支配人さんがぴんと背筋を伸ばして立ったままで変態さんの腋の下をコチョコチョ(!)。変態さんは悶絶状態に陥っていました。
誰得なんでしょうね、この場面(^_^;)。ちなみに私はあのビジュアルだけでごはん3杯ぐらい行けそうです。

この「変態×カレー」で爆笑エンド、でも悔いは残らなさそうでしたが、きちんと最後に王道のハッピーエンドで締めてくれるのが、『エドウィン』の良いところです。主役も脇役も、ノーマルも変態も、そして民族の違いを問わず、生きていることの素晴らしさをハッピーに歌い上げることで、観客の思いをある一定の救われる場所に導こうとするこの作品の姿勢に好感が持てます。

なお、あまりにカレーのすり込みが強烈であったため、当日夜のわが家の食卓にはレトルトですがカレーが上ることになりました。私も「カレーが好きです」。

……最後に、私事ですが、体調の都合でしばらく休養に入ることになりました。メンタル面ではこうした観劇感想を書けるぐらいにはとても元気なのですが、身体の方がそれなりに寄り始めた年波には勝てず、ちょっとしたガタが来てしまったようです。本業も少しお休みをいただいて治療に専念いたします。
と申しましても、テレビは見られる状態ですのでWOWOWの『トライベッカ』や舞台中継などで興味のあるものはできるだけ追いかけるつもりです。もしかしたらこちらにも視聴感想をしたためるかも知れません。また、8月の『王家の紋章』も観る気満々でいます。待ってろよ帝劇!そして「演劇の巨人」!

*1:最前列の皆様が支配人さんにハイタッチするのを羨ましく眺めておりました。